ファシリテーションの道具箱 森時彦

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2008年03月06日 森時彦(チェンジ・マネジメント・コンサルティング代表取締役/リバーサイド・パートナーズ代表取締役)

職務分掌をスッキリさせる「日の丸分析」

 この連載もいよいよ最終回となった。今回は、組織開発の現場でよく出くわす問題、すなわち責任と権限が不明確という問題を考えてみよう。言い換えると仕事のなすりつけあいが日常茶飯事となっている状態である。

 こういう時に必ずといって出てくるのが、「職務分掌を明確にしましょう」という解決策である。残念ながら、私は職務分掌が現場で生産的に使われたことを知らない。「それは私の仕事ではない」という言い訳のために使われることが圧倒的だ。こんな時、イン(含まれる)とアウト(含まれない)でスッキリと図解して、当事者たちに納得するまで話し合わせることが必要だ。

【事例】
 役割分担の論争が絶えないあるチェーン店

 服飾品のチェーン店展開をしている会社での会議。この日も、「それは、マーケティングの仕事だろう」「いや、商品企画がやるべきことだ」といつもの議論が繰り返されていた。「おい、ちょっと待て。そもそもマーケティングというのはだなぁ……」と、長年この業界でマーケティングをやってきたW課長が、顔をしかめながら説教を始めた。

 「しかし課長、そんなこと言われてもできないですから。それはやはり商品企画にやってもらわないと」とマーケティングの担当者が口を尖らせた。

 3か月前から、この会議に出はじめた営業のY課長は、この議論を尻目に、ゆっくりと立ち上がると用意しておいた模造紙を2枚壁に張ると、1枚には「マーケティング部の仕事」、もう1枚には「商品企画部の仕事」と題書した。そのうえで、それぞれの紙の中央に大きく丸を描き足した。

 「前から、この議論は続いていますよね。多分、何か現場の問題があって『あるべき論』とおりにはいかないのだと思います。どうでしょう。当事者たちがこの模造紙の前に立って、何をマーケティング部が担当し、何を商品企画部がやるのか、ポストイットに書き出してこの日の丸の内と外に貼りつけてもらえませんか。そのうえで議論しましょう」と言いながら、大きめのポストイットとサインペンを配った。

 「できるだけ具体的に書いてください。例えば『競合分析』ではなく、『競合店5社のABC分析』という具合に具体的に書いてください」とY課長は議論の進行を見ながら付け加えた。

 1時間ほど、「それは丸の中だろう」「いや、これは無理だ」と当事者間で議論が続いたが、やがて治まった。「どうなりました?」とY課長が訊くと、「この件は、ウチで引き受けることにしました」と商品企画の担当者。「その代わりマーケティング部には、別のことをやってもらうことで、とりあえずOKです」と返事が返ってきた。

マーケティングの仕事

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最終回 職務分掌をスッキリさせる「日の丸分析」 (2008年03月06日)
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第8回 「プロコン」で賛成・反対の理由を全員で共有する (2008年01月30日)
第7回 「要素技術マッピング」で、 見えないボトルネックを見つける (2008年01月17日)
第6回 ステークホルダー分析で「障害」を取り除く (2007年12月27日)
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第4回 思考の悪癖を「見える化」し、矯正する (2007年11月29日)
第3回 タンクモデルで全体像を把握しよう (2007年11月15日)
第2回 困ったときには、プロセスマッピング (2007年11月01日)
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執筆者プロフィル

森時彦(チェンジ・マネジメント・コンサルティング代表取締役/リバーサイド・パートナーズ代表取締役)
写真:森時彦1952年大阪生まれ。大阪大学、マサチューセッツ工科大学卒。工学博士、経営学修士。日本GE役員、テラダイン日本法人代表取締役等を経て、チェンジ・マネジメント・コンサルティング代表取締役。2007年、中小企業の成長促進・事業承継に重点を置いた投資会社リバーサイド・パートナーズの代表取締役に就任。著書に『ザ・ファシリテーター』『ザ・ファシリテーター2』『ファシリテーター養成講座』(いずれもダイヤモンド社刊)などがある。

この連載について

ファシリテーションには、人の心に配慮するEQ的側面と議論の合理性を追求するIQ的側面がある。EQ的側面に配慮しながら、切れ味鋭い議論を促すためのツールを紹介する。

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