◎日航機誤侵入 ヒヤリとしたら対策が必要
民間航空機が管制官の指示と異なる形で滑走路に進入、あるいは横切ったりするトラブ
ルがあちこちの空港で続いている中、小松空港でも羽田行きの日本航空1280便(ボーイング777型、乗客乗員計百八十九人)が誤って停止線を越え、滑走路に進入、管制指示で自衛隊のF15戦闘機三機が着陸を緊急回避した。
日航によると、トラブルを起こしたのは副操縦士で機長昇格訓練中だった。「暗くて停
止線がよく見えなかった。気がついたら、滑走路に入っていた」と話しているという。
小松空港では一本の滑走路を自衛隊機と民間機が共用しており、トラブル当時は日航機
が民間機専用誘導路を通り、滑走路の手前で停止し、自衛隊機の着陸を優先させる管制指示だったが、停止線を越えてしまったとみられる。こうした空港では、停止線を見落とさないように地下に埋めて照らす明かり方式にするなどの改良が必要との指摘がある。
他方が動きの機敏な戦闘機であったために惨事につながる恐れのある、いわゆる重大イ
ンシデントとはみなされていないそうだが、日航は先月十六日にも日航機が北海道の新千歳空港で同様のトラブルを起こしていることを重く受け取り、当面、路線訓練を中止することにした。
同空港では〇五年四月にも仙台行きの全日空361便(ボーイング737型)が離陸許
可を得ず、滑走を始め、管制官の指示で緊急停止したことがある。
事故には人為的なミスによるものと、そうでないものとがあるが、どちらにせよ、例の
ハインリッヒの法則は一つの重大事故の前に二百を超える「ヒヤリ」や「ハット」があるという。これは「ヒヤリ」としたとき、「ハット」としたときに、対応すべきであるという教訓だ。
人為的ミスの可能性が動かないトラブルのようだが、この際、停止線のところが暗くて
ミスが生じやすいようになっていはしないか確認し、そうであればミス防止のために対策を講じてもらいたい。
それにしても、営業路線で訓練飛行をしているとは知らなかった。たくさんのお客さん
を乗せて、万が一のことがあれば、大惨事になると思うが、どうだろう。安心して乗れるようにしてもらいたい。
◎北朝鮮船漂着 監視の目ますます重要に
石川県の海岸線などに、北朝鮮船とみられる小型木造船の漂着が相次いでいるのは、薄
気味悪い現象だ。日本海に面した青森県の漁港に昨年六月、脱北した北朝鮮の家族四人が漂着したが、志賀町に流れ着いた木造船とよく似た船に乗っていた。
この脱北者を発見したのが、地元の釣り人だったように、レーダーに映りにくい不審船
の監視は、県民の目が頼りである。北朝鮮の拉致事件が国際問題化したことで、拉致の脅威は遠のいたかもしれないが、北朝鮮船の漂着事例が頻発している事実を忘れないようにしたい。
今年一月、志賀町で見つかった男性の白骨遺体は、北朝鮮の軍服とみられるズボンを履
いていた。昨年十二月に新潟県内の海岸に流れ着いた白骨遺体も似たような軍服の上着を着て、北朝鮮の軍服に使われる赤い星の入ったボタンを付けていた。
北朝鮮では軍服が市場で売り買いされているため、軍人なのか民間人なのかは分からな
い。食料不足を補うため、漁をしているうちに遭難したのかもしれないが、脱北を試みた可能性も否定できない。粗末な木造船といっても、北朝鮮の庶民には貴重品だろうから、この先、船を使った脱北が頻発するとは思えないが、油断は禁物である。
北朝鮮船と見られる小型木造船は昨年、石川県や新潟県などで二十隻見つかっている。
日本に漂着前に沈んだ船はもっと多いはずであり、だれにも見つからずに密入国に成功した脱北者がいるかもしれない。青森県に漂着した脱北者は北朝鮮製の覚せい剤を所持していたが、日本への新たな脱北ルートが本国に伝われば、第二、第三の「脱北船」が現われる可能性がある。
やっかいなのは、日本海側に漂着している全長五―十メートルの小型木造船が、海上保
安庁の巡視艇のレーダーに映りにくいことである。青森県で、脱北者の漂着を発見できなかった海上保安庁は、密航に使われたものと同じ船を使って、レーダーにどのように映るか実験したところ、捕捉が極めて難しいことが判明した。
石川の海岸線は長く、人目につかずに小型船の乗り入れができる場所は無数にある。海
岸近くでは常に、警戒を怠らぬようにしていきたい。