現場無視なら「医師がサイレントベビーに」

 「小児科の財源確保のための(診療報酬)改定で、小児科が減収になるのはおかしい」−。今年4月の診療報酬改定で、「外来管理加算」の要件に5分ルール≠ェ導入されたことに対し、小児科の医療現場が反発している。今回の改定は、医師不足が特に目立つ小児科医・産科医、病院勤務医対策が柱だったものの、5分ルールが導入されると、小児科を標榜する医療機関が大幅な減収になると予想されるからだ。現場からの5分ルール撤廃の声が無視されるなら、「小児科医がサイレントベビー=i泣いても母親らが適切な反応を示さないため泣かなくなってしまう赤ちゃん)になってしまう」という指摘も出ている。

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5分ルール≠ナ「医療崩壊」加速!?

 外来管理加算については、「入院中の患者以外の患者(外来患者)に対し、厚生労働大臣が定める検査ならびにリハビリテーション、処置、手術等を行わず、計画的な医学管理を行った場合、外来管理加算を算定できる」などと定められている。しかし、今年4月の改定で、「診察結果を踏まえ、病状や療養上の注意点を説明し、その要点を診療録に記載するなどの診察・説明には5分の時間を要する」などと、新たに5分ルールが設定された。

 改定で厚生労働省は外来管理加算を算定できなくなるのは1割にすぎず、影響も1医療機関当たり年間50万円と試算しているものの、実際に5分ルールを当てはめてみると、算定割合は厚労省試算の10分の1になったため、青森県保険医協会が緊急アンケートを実施し、3月5日に結果を発表。アンケートには、小児科の49診療所と小児科を標榜している5病院の計54医療機関のうち19医療機関が回答した。
 5分ルールについては、「わからない」とする1医療機関を除く18医療機関が「反対」と表明。医療崩壊に関しては、「加速する」が15医療機関に上った(ほかに「わからない」3・「加速しない」1)。また、5分ルール導入後も外来管理加算を算定できる割合では、50%以下が14医療機関、20%以下が7医療機関だった。
 減収予想としては、減収割合が10%を超える医療機関が15に達し、年間減収額が700万円を超える医療機関もあった。

 自由意見では、「小児科の財源確保のための改定で、小児科が減収になるのはおかしい」をはじめ、「種々多様な疾病を診療していく中で、機械的に時間設定を決めることは、患者の待ち時間の増加につながる。円滑な診療ができなくなり、院内感染の原因を招いたり、医療従事者の労働時間増加にもつながりかねない。外来管理加算は、医師の常識的な裁量で算定すべきもの」、「『診療の質が時間で評価できる』という確信があるなら、同じ効果なら短時間で行えた方が評価は高くなるはず」など、5分ルールに反発する内容が目立った。

 こうしたことを踏まえ、同協会は「次期改定(今年4月)は小児科医・産科医そして勤務医不足対策として1,500億円が向けられたとしているが、小児科の医療機関が大幅な減収になることが明らかになった」と指摘。小児科医療については「ここ10年間、毎回の改定で優遇されることになっているが、絶望的な状況は変わっていない。今回も5分ルール撤廃の声が無視されるなら、小児科医がサイレントベビーなってしまうかもしれない」と警告しつつ、「地域の医療崩壊が一気に加速する。小手先のパッチワークでは対応できず、現場の生の声に耳を傾け、もう一度、骨組みから作り直す必要がある」と訴えている。

 5分ルールに関し、同協会は、県内の200床以下の公的病院にも調査。回答した11病院のすべてが「反対」と回答。5病院が時間要件の導入後も外来管理加算を算定できる割合は10%未満にすぎないと答えた。医療崩壊に関しては、「加速する」が7病院に上り、「加速しない」はゼロだった(残りの4病院は「分からない」と回答)。


更新:2008/03/05 18:06     キャリアブレイン

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08/01/25配信

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医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。