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吉越浩一郎氏に聞く〜労働管理の不在を残業が隠蔽している

「残業が問題解決を遅らせる」という視点

── 吉越さんは、その長時間残業をやめて、定時で終わるよう、効率よく仕事をしようと主張していらっしゃいます。昨年末出版された『「残業ゼロ」の仕事力』(日本能率協会マネジメントセンター)の中で、「残業は、会社や社員の抱えるいろいろな問題を隠蔽してしまう」と書かれています。この部分についてご説明いただけますか。

吉越 例えば、業務時間内に仕事が終わらない場合、いくつかの原因が考えられます。仕事の絶対量が多すぎるのか、作業の仕方に問題があるのか。それとも社員のモチベ―ションが下がっているのか。本来なら、その原因を調べて解決することで、社員や組織の生産性を向上させられるはずです。

ところが、仕事が終わらなければ残業すればいいとなると、なぜ業務時間内に仕事が終わらないのかという理由が分からず、抜本的な解決が図れません。つまり、問題を顕在化させ改善する絶好の機会が、残業によって奪われてしまっているのです。

── 著書では、トヨタ生産方式を例に挙げて、工場の製造現場では、そういった問題解決を徹底して行っているのに、ホワイトカラーの現場ではそれができていない、と指摘していらっしゃいますね。

吉越 品質の悪い部品が流れてきたら、すぐに組み立てラインを止めて、原因を徹底的に追究して再発を防止する。それがトヨタ生産方式の特徴です。生産ラインを止めるのですから、当然その間にコストが発生する。しかし、コストがかかっても、そこで原因を特定して改善すれば、二度と同じ問題は起こりません。そういうスタイルで、生産性を高めている工場は、トヨタ以外にもたくさんあります。

ところが、なぜかホワイトカラーの職場では、こうした原因追究をきちんと行っていない。製造現場のように、ホワイトカラーの職務がきちんと分かれていないのが、理由の一つでしょう。しかし、それよりも、日本企業の恒常的な残業体質が、問題そのものを見えにくくしていることの方が大きい。問題を発見し、その原因を追究し改善するのが、マネジメント側の仕事であるにもかかわらずです。

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