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吉越浩一郎氏に聞く〜労働管理の不在を残業が隠蔽している

社員が持つ「残業」に対する固定観念

── 著書の中で、トリンプ社長時代に、「ノー残業デイ」を約12年間かけて完全実施した過程をお書きになっています。

吉越 当時、営業職にははみなし残業制を適用し、毎月20時間分の手当てを支払っていました。ただ、現実の残業は20時間をはるかに超えていたので、20時間に減らすように指示を出したんです。最初は、ノー残業デイを金曜日1日だけ導入しました。そのときにも、営業だけは残って働いていました。それを、「金曜日だけは帰れ!」と徹底させました。

── その過程で、社員側にも残業を肯定する空気があった、という部分が興味深いです。

吉越 そう、残業しなければいけないという固定観念が、多くの社員にもありました。「会社のために自分は頑張っているのに、どうして社長は早く帰れって言うんだ!」というわけです。当時はそれが多数派でした。「残業代は既得権で、残業がなくなると収入が減るから困る」というのは少数派でしたね。

── 会社側と社員側の双方の意向で、残業慣習が今日まで温存されてきたと言うわけですね。だとすれば、その慣習は容易には変えられない。ノー残業デイを段階的に増やしていく中で、吉越さんは具体的にそれをどう変えていかれたのですか。

吉越 とにかくトップダウンで、徹底させる以外にはありませんでした。それに毎日早く帰るようになると、個々の社員が、今までの自分の生活がいかに仕事偏重だったかに気づいていきました。

また、自ら仕事のデッドライン(締め切り期限)を決めさせることで、仕事が定時で終わるようになっていきました。本人は一生懸命働いているつもりでも、実際にはダラダラやっているんです。そもそも仕事って、どこかの時点で決断しないと終わらない。その決断をせずに、まだ周りが働いているからとか、上司が帰らないからと、ダラダラと続けてしまっている。

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