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一般職より100万円も年収が少ない管理職〜有名百貨店にて

少し説明が必要だ。売り場の一般職が万引きを捕まえた場合、まず警察に通報する。その際、第一発見者である店側は、犯人を捕まえたときの状況について、最寄りの警察署に出向き、説明しなければならない。それも須貝さんら副店長の仕事。捕まえたのが一般職であっても、警察での取り調べは、管理職である彼が対応しなければいけない。その場合、店側の人間が警察の事情聴取を受けるのは、窃盗犯の取り調べの後になる。

「ですから、夜8時以降に万引きを捕まえると、場合によって、ぼくの聴取は夜11時近くから始まります。終わりは、深夜0時を回る場合もあります。嫌ですよぉ。夜中の取調室で、犯人でもないのに、警察からあれこれ聞かれるわけですからね。もちろん、管理職ですから手当てなんてありません。ただ働きですよ」

こうなると、副店長は管理職というより、雑務処理係という要素が強い。まさに「名ばかり」管理職だ。

一方、会社は大手コンサルティング会社などを使って、社員のモチベ—ションアップを図ろうとしている。「コンサルティング会社に大金を払う余裕があるなら、副店長の管理職手当てに少しでも反映させてもらいたいですよ。せめて、一般職より年収が低くならないぐらいの配慮は、あってもいいはずですから」

それでも店舗勤務はまだマシな方、と須貝さんは続ける。なぜなら、店舗勤務の管理職は週2日は休めるが、本社の管理職は月2日程度しか休めないからだ。

「本社勤務の場合、家庭サ—ビスなんて、ほぼ不可能みたいです。奥さんから『給料入れてさえくれればいいから』なんて言われたとか、普段顔を合わせないから、子どもとの関係も妙にヨソヨソしいとか聞きますね。そんな状況のせいか、女性管理職の多くは、結婚していない人が多いですし」

一見華やかな百貨店業界だが、少子高齢化で縮む市場を背景に、「名ばかり」管理職は社内外で苦闘している。

荒川 龍(あらかわ・りゅう)

1963年、大阪府生まれ。国立大学在学中に韓国・延世大学韓国語学堂に1年間語学留学。

大学卒業後、週刊誌記者をへてフリーに。人物ルポを中心に、経済・社会問題を中心に取材している。著書に『「引きこもり」から「社会」へ』(学陽書房)、『レンタルお姉さん』(東洋経済新報社。2007年1月に放映された、水野美紀主演のNHK土曜ドラマ『スロースタート』の原案となる)。

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