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【コラム】

中日春秋

2008年2月22日

 QWERTYという言葉をご存じだろうか。手元にパソコンがあれば、キーボードの左上に並ぶアルファベットを見ていただきたい

▼左から右へQ、W、E、R…となっていよう。このキー配列をそう呼ぶようだが、これが誕生したのはタイプライター時代の一八七三年。最も効率的に打てる並び方だから今なお生き残っているのか、と言えばそうではない

▼当時はタイプライターが壊れやすかったから、わざわざタイピストの手を遅くするために考えられたのだという。ところが、それが大量生産され使う人が増える。他メーカーも続き、また使う人が増え…というふうに、定着してしまったものらしい

▼『複雑系』(M・ワールドロップ著、田中三彦、遠山峻征訳)で、「収穫逓増」なる経済理論を説明する中で例示される話。性能が優れていなくても、市場での初期のわずかな優位が急拡大することがある、といった理論のようで、ほかにビデオのVHS対ベータの例もあげている

▼ひと昔も前の本を思い出したのは、この戦いになぞらえられることもあった次世代DVD規格の争いに事実上、決着がついたからである。HD−DVD陣営の東芝が白旗を掲げた。今度はどんな理論が働いたものか知らぬが、ともかく、ブルーレイ陣営を主導するソニーにすればベータ敗北の雪辱ではあろう

▼それにしても、メーカーが思い描くほど次世代機は急激に普及するものだろうか。高画質とはいえ、少なくともビデオやDVD登場時のインパクトはない。現行DVDにも特に不満はないのだが。

 

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