赤字解消に向けて、県立の中央と北2病院の抜本的な経営改善策を話し合う「県立病院経営形態検討委員会」が、3月中に最終報告をまとめる。2病院とも、地方公営企業法の「一部適用」と呼ばれる公務員型から移行されることは間違いなく、非公務員型を含めた4形態を検討中。県は、同委員会の最終報告に基づいた県の条例改正案を新年度中にまとめる。【吉見裕都】
同委員会は医師や弁護士、経営コンサルタントら8人で構成。知事が管理者を務める現行では経営責任が不明確で赤字解消に向けた運営は難しいなどとして、昨年9月から協議してきた。
会合では、(1)全部適用(全適)(2)特定地方独立行政法人(特定独法)(3)一般地方独立行政法人(一般独法)(4)指定管理者制度--の4形態を議論。現行同様、職員の立場は県職員のままの公務員型が(1)(2)、民間になるのが非公務員型(3)(4)だ。
県立病院の職員らが所属する県職員労働組合は現状維持を求めているが、見直す場合は「全適」か「特定独法」を求めた。県立中央病院が職員を対象に昨年実施したアンケートでは、約8割が「非公務員化で身分保障が不安定になるのでは」などと不安を感じていると答える一方、見直しにより約7割が「職員増で勤務時間が減る」と期待した。
「全適」は知事ではなく事業管理者が運営するため、「一部適用」より経営自由度は増すが、職員減を定めた県定員計画によるため、職員増は見込めない。最も自由度が高い指定管理者は「救急医療など不採算な部分を市場原理に任せるべきではない」などの意見が出ている。「一般独法」と「特定独法」は身分の違いが大きな差だが、認可する総務省は「『特定』である特殊な要因が必要」としており、実現は困難だ。
これに対し、委員会の今井信吾座長は「県民が望む医療体制がはっきりしていれば、国(の方針)と多少違って(県に)独自なものがあってもいいだろう」との考えを示し、「特定独法」に含みを持たせた。ただ、04年に「特定独法」に移行した国立病院機構甲府病院は、内科医師の減少を理由に07年度から、一般救急体制を縮小したこともあり、「不採算部門の縮小が懸念される」との声もある。
県外をみると、都道府県立では昨年6月1日現在で、一部適用は16。他は「全適」や「指定管理者」、それらの併用などで運営されている。「一般独法」は宮城県で一部移行され、静岡県や山形県、秋田県、佐賀県で移行予定。「特定独法」は、大阪府と岡山県が採用した。
今井座長は「不採算部門を責任を持ってきちっとやるのが県立病院の存在意義だ」と強調。委員会は「職員が誇りを持って働くことができる」との視点も重要として議論を急いでいる。
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■ことば
◇地方公営企業法
病院や上下水道局など、地方公共団体が経営する企業の組織・財務・運営の基準を定めた法律。同法の関与する度合いによって「全部適用(全適)」と「一部適用」に分かれるが、全適の方が給与体系などで自由度がある。
毎日新聞 2008年3月5日