現在位置:asahi.com>社説

社説天声人語

社説

2008年03月05日(水曜日)付

アサヒ・コム プレミアムなら社説が最大3か月分
アサヒ・コム プレミアムなら朝日新聞社説が最大3か月分ご覧になれます。(詳しく)

迷惑メール―「海外発」への対策も急げ

 けさも、パソコンや携帯電話に押し寄せる迷惑メールの削除に追われ、朝から不愉快な思いをしている人が多いのではないだろうか。

 この迷惑メールへの法規制を強化する改正案が国会へ提出された。

 迷惑メールの大半は広告である。現在は、タイトルに「未承諾広告※」と書くなど、一定の要件を満たした広告メールなら、受け手の事前承諾なしに送っても合法だ。受け手が断ってもさらに送りつけたとき、初めて違法になる。

 だが、相手が悪質業者の場合、拒否のメールを送り返すと、かえって迷惑メールが増えるという悪循環が人々を悩ませている。また、承諾や拒否の記録を業者が残さなくてもいいことが、取り締まるときの障害になっている。

 改正案では、事前承諾なしに広告メールを送ること自体を違法にして、承諾の記録を保存するよう業者へ義務づける。違反業者への罰金も、いまの100万円から3000万円へ引き上げる。

 業者側がどのような方法でメールアドレスを集めて事前承諾をとることが適切なのか、これから基準をつくる。アンケートや懸賞など、地道な努力で収集するよう促す基準にすべきだ。

 欧州や豪州などがすでにこうした方法をとっており、オランダでは規制と摘発の強化によって、迷惑メールが7分の1に減ったという。

 今後の課題は「国際化」への対応だ。本当の発信者は日本にいながら、海外のパソコンを遠隔操作して国内へ送りつける手口も広がっている。国境を越えた監視と摘発の体制が欠かせない。

 法改正されると、なにが違法な迷惑メールかがはっきりして摘発しやすくなる。日本での違法性が明確になるので、海外発メールに関する発信源の情報などを相手国へ提供して、送信を規制してもらうことも容易になる。

 まずは、海外発の迷惑メールの主な発信元である中国、米国、韓国の規制当局と連携を強め、国際的な封じ込め体制づくりを急ぐべきだ。

 海外からは、詐欺的な手法でクレジットカード番号などを盗み取るフィッシングメールや、他人のパソコンにウイルスを仕込んでメールを配信させるボットネット型などが増えている。これらへの対策は宿題として残っている。

 迷惑メールの規制には難しい問題もある。メールのやり取りは自由が基本だし、メールでの営業活動はさまざまな新商売を生み出す活力源でもある。むやみに禁じるのは望ましくない。

 だが業界の調べでは、流通する全メールの7割以上、広告メールに限れば大半が迷惑メールだ。ほとんどが出会い系やアダルト系。真っ当な広告メールを使うビジネスなど成り立たないほどだ。

 メールという通信手段を使いやすいものにするためには、迷惑メールの排除が避けられなくなったといえよう。

地裁所長襲撃―検察は潔く冤罪と認めよ

 4年前、帰宅途中だった大阪地裁の所長が若者らに襲われて大けがをし、現金約6万円を奪われた。逮捕された当時16歳の少年は家裁の審判で非行事実を認め、少年院送致の決定を受けた。

 だが、少年院に収容される日、面会にきた母に初めて「本当はやってへん」と打ち明けた。審判で無実を訴えることができなかったのは、取り調べで暴力を振るった警察官が怖かったからだ。

 少年院の生活は1年7カ月に及んだ。その少年院送致とした保護処分を取り消すよう求めた申し立てに対し、先週、大阪家裁がそれを認めて前回の家裁決定を取り消した。共犯として補導された友人にアリバイがあったことなどが理由だ。刑事裁判の「再審無罪」にあたる。

 この事件で無罪になったのは、少年が初めてではない。犯人グループとして大阪府警に捕まった4人全員が、次々と事件とはかかわりがないと裁判所で判断されているのだ。もはや少年らが冤罪であることに疑う余地はあるまい。

 今度の決定は、警察で不当な取り調べがあったと認め、「捜査段階の自白は信用性に疑問がある」と述べた。

 胸ぐらをつかまれて壁に押しつけられた。机を床にたたきつけて脅された。少年鑑別所にまでやって来た捜査員から、自白を翻さないよう迫られた。少年は、「再審無罪」となったあとの会見で、このように指摘した。

 大阪府警は強引な取り調べで自白を迫るだけで、アリバイなどの客観的な証拠をほとんど調べていなかった。府警には捜査方法を深く反省してもらいたい。

 それにしても理解しがたいのは、検察が冤罪であることを認めず、いつまでも審判や裁判で争おうとしていることだ。

 逮捕された4人のうち、少年の弟は捜査段階で犯行を自白したが、審判では無実を訴えた。家裁で少年院送致の決定を受けたが、大阪高裁で決定が取り消され、昨年暮れ、差し戻しの審判で無罪にあたる不処分決定を受けた。

 だが、大阪地検は控訴にあたる抗告受理申し立てをした。

 成人の2人は一貫して犯行を否認し、大阪地裁で無罪判決を受けた。ところが、検察側が控訴した。

 あくまでも4人を犯人とみなす姿勢の検察に対し、「無罪」の決定を下した今回の大阪家裁の裁判長は「4年にわたり事件の手続きで拘束しており、少年を早く解放してあげたい。抗告権があるが、この意向をふまえ検討してもらいたい」と述べた。

 検察に抗告受理申し立てをしないよう求めた異例の発言である。

 いま検察のなすべきことは、メンツにこだわらず、4人の審判や裁判を打ち切ることだ。そのうえで、なぜ冤罪を引き起こしたのか、その検証をする必要がある。大阪府警を指揮して、真犯人を捜すことも忘れてはならない。それが少年たちの名誉回復にもつながる。

PR情報

このページのトップに戻る