北海道滝川市が生活保護受給者に支給される通院時のタクシー代補助をだまし取られた事件などを受け、厚生労働省は3日、通院交通費の支給基準を明確化する方針を決めた。
支給を認める要件を具体的に明記して対象を限定するもので、今月中に各自治体に通知を出し、4月から実施する予定だ。
生活保護受給者は、医療機関を受診するためにタクシーを利用するなど高額な交通費がかかった場合、自治体が認めれば、通院交通費を全額支給される。しかし、明確な対象要件は決められておらず、厚労省の通知で「必要最小限度の額」とされているだけだった。
このため、同省では生活保護受給者に対する医療関連補助のルールを示す「医療扶助運営要領」を改定し、支給対象となる範囲や例外的に支給できるケースを明記することにした。
支給範囲は原則、「災害現場からの緊急搬送」「離島からの搬送」「移動困難な患者の医師の指示による転院」「移植手術をする医師の派遣や臓器の搬送」といった緊急の場合に限定。
例外として、〈1〉身体障害により電車・バスの利用が困難で最寄りの医療機関に通院〈2〉へき地のため最寄りの医療機関でも交通費が高額〈3〉行政の指導で検診受診〈4〉医師による往診−−といったケースで、原則として福祉事務所管内の医療機関であれば、審査の上、交通費支給を認める。
滝川市では昨年11月、生活保護受給者の元暴力団組員らが通院交通費の補助制度を悪用、約2億円をだまし取る事件が発覚。大阪府岸和田市では、無職男性が飛行機代を含む通院交通費として10か月間に約438万円を受給していたことが判明している。
一方、生活保護を巡っては、昨年、受給の辞退届を出した北九州市の男性が孤独死するなど、保護が必要なのに支給が打ち切られるケースも問題となっている。このため厚労省は、4月から「生活保護実施要領」を改定し、「辞退届の提出を強要してはならない」「本人の真意によらない辞退届は無効」などと明記する方針だ。
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