MSを取り巻く会社たち(その1)
なんか最近暖かいですけど、みなさまいかがお過ごしでしょうか?
この時期は日本は新入学シーズンだし、そのうえ4月から何の因果か消費税が上がってしまうってワケで各メーカーさんたちもやっきになってPCなんかの売り込みに力を入れてるですねぇ。我らが愛すべきマイクロソフトもその例外じゃあない。
んで、office97の発表と絡めてMSはさっそく新しいキャンペーンを張ってきました。その名も「自分をアップグレードする」んだそうです。
しかしなんでこうも笑わしてくれるのかなぁこの会社。まぁキャンペーンに出ている西田ひかるチャンは結構私の好みだったりするんで、あんまりきついコトは言いたくないんですが、もうちょっと個人の人格を尊重したコピーを考えて欲しいもんです。他の会社が言うのならともかく、MS-KKがこの文句を言ったら、なんかマイクロソフトの秘密基地に無理矢理連れてかれて頭にヘッドギアかなんかつけられてビリビリってやられて強制的にMSの信者にさせられるような感じがしてしまうんですよね。(:-P
そのうちこの会社WindowsCEとかNT5.0のキャンペーンの時なんかに、「自分をリセットする」とか、「あなたを再フォーマットする」とか言い出しかねないですね。あーこわ。(やっぱりきつかったですか?スイマセン)
さて、先週、先々週と単発の時事ネタをお送りしましたが、今週から新シリーズをスタートしたいと思います。で、なんで今さらヒストリカルな話しを持ち出そうと思ったかって言うと、この手の情報ってのが以外と少なく、知らない人が多いってことなんですよね。
例えば本屋に行ってコンピュータ関連の書籍のコーナーを見ても、あるのは
ソフトとかOSのマニュアル本ばっかり。まだMS関係の本なんかはちらほら
ありますが、Appleの歴史とかゴシップとかを解説している本ってなるともうほとんど置いてないです。
まぁそんなわけで既にここらへんの話しはよーくご存知の方々には退屈な話しになってしまうかもしれませんがご勘弁を。なんか時事ネタが出て来たら例によって割り込みで書かせていただきたいと思ってます。
第一話はかつてのCP/Mの開発元デジタル・リサーチ社です。
この会社、今はもうノベルに吸収されてしまってありません。でも、ゲイツ君を億万長者にしたのがMS-DOSなら、タッチの差でここの社長さんであるゲーリー・キルドールは億万長者に成り損ねた人としてよく言われてます。
これ、IBMがPCを出す時に自社ブランドで出すOSを探していた所、当時事実上の標準OSとなりつつあったCP/Mの開発者であるキルドール氏に交渉をしに来たんだけど、たまたま不在だった。代わりに応対したのが彼の奥さんだったんだけれど、全然らちがあかない。それを聞いたゲイツ君が「うちでやりましょう」って言って、MS-DOSが誕生し、キルドール氏は億万長者になれる千載一遇のチャンスを逸してしまったってわけです。まぁ簡単に言うとそんなとこ。
で、面白いのがこの話にいろんな尾ひれがついてることです。
一説にはIBMが交渉しに来たとき、キルドールは自家用飛行機に乗って雲の上にいたとか、おまけに「ヒャッホー!!」なーんて叫びながら宙返りまでやって遊んでたとか面白おかしく語られています。(キルドール氏は当然反論してますが)
また、こんなジョークも語られています。
ゲーリーキルドールのバンパーのステッカーを見たら、自家製プロペラ機の絵が書いてあって、その下にこんなメッセージが書かれてた。
「ちょっと飛んでただけじゃねぇか」
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ただゲイツ君はその昔レイクサイド・スクールの学生で、Cキューブド社にあったDecのコンピュータに夢中になっていたころ、キルドール氏はワシントン大学でコンピュータ科学の論文を仕上げていたんですが、ちょくちょくその研究のためにCキューブド社に来ていたそうなんです。その時、ゲイツ君との間で会話があったかどうかまでさだかではありませんが。
で、その後ゲイツ君がMSを設立した後も、デジタルリサーチ社とはしばらく密月がつづいていたんですね。つまり、MSはBasicなどの開発ツールを提供し、デジタルリサーチはOSを提供するって、ちゃんと住み分けが出来ていたんです。
でもまぁそのうちお互い自分達が主導権を握りたくなってくるのは当然なワケで、上記の様なことになってしまうわけですね。
去年NHKの新電子立国って番組で、ここらへんの話が登場してましたね。で、キルドール氏もNHKの取材に応じて、「あのMS-DOSってのはうちのOSのコピーに決まってる!けしからん!!」って眉間にしわ寄せて怒ってました。
補足:逆アセンブルしたら、確かにキルドールのコードだったそうです
実際、MSが破格値で買い取ったティム・パターソンのOS「Q-DOS」(後のMS-DOS)はCP/Mそっくりでした。
でも、デジタルリサーチ社だってIBM-PC用のOSを後に出すことになるんです。それだけじゃない、その後もなんとかMSに敗けまいと1989年にDr.DOSって商品も出すんですが、結局泣かず飛ばずでノベルに買収されてしまいます。ノベルに移ってからも全然パっとしないまま、キルドールは1994年に酒場での喧嘩で負った怪我が元で亡くなってしまうのです。
キルドールのOSが売れなかったのは、CP/Mが悪かったせいじゃぁないです。
だた、デファクト・スタンダードを形成するという先見性から言えば、ゲイツ君の方が一枚も二枚も上手だったんですね。だって
MS-DOSが当時60ドルだったのに、CP/Mは175ドルもしたんだもの。
これじゃぁいくらコピー商品だったと言っても、安い方をみんな買いますよね。
いくらMSに追い付こうと頑張ってみても、ゲイツ君は遥か彼方でせせら笑っている。
もしキルドールという人物がいなかったら、MS-DOSもWindowsもおそらく無いし、ゲイツ君だって大金持ちにはなっていなかったはず。なのにこうしたゴシップ以外では現在はほとんど語られることも少なくなってしまっています。
PCの事実上の標準化に大きな役割を果たした人物としては、あまりにもあっけない最期でした。
ゲーリー・キルドール:元デジタル・リサーチ社の会長。1994年没。
享年52歳。 合掌。
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