茨城県つくば市で17日、薬害肝炎患者のための訴訟相談会が開かれ、90人以上が出席した。昨年6月の準備会での地元参加者が数人だったことを考えると、確かに時代は動いたのだ。会場で出た主な相談テーマは、カルテを入手できない悩み。弁護士たちからは、幾つかの問題点が指摘されたが、制度改善の必要も感じた。
被害者からの質問に答える弁護士
2月17日、茨城県つくば市の「つくばインフォメーションセンター」で、薬害肝炎訴訟を支援する会・茨城の主催で、被害者を対象とした訴訟相談会が開催されました。会場には90人以上の人々が集まりました。昨年6月に開催された準備会に参加した地元の方が、ほんの数人であったことを考えると、まさに時代は動いたのだ、との感を強くしました。
原告の方などからの簡単なあいさつの後、早速、弁護士から、現状報告が行われました。特に強調されたのは、基本合意はできたものの、具体的にどうやって救済するのかが何も決まっていない、という点でした。あいさつに立った千葉肝臓友の会の村田さんも、このままでは被害者の9割が救済されないかもしれない、と早期の制度確立のための署名運動を呼びかけていました。
現状報告では、電話相談の様子にも触れられました。連日、朝から夕方まで電話は鳴りっぱなしという状況、ということでした。そのため、急遽、ファックスでの受付も始められたそうです。別の弁護士の方や支援者の方々から伺ったのですが、とにかく、少しでも関係のありそうなところであれば、電話がどんどんかかってくるということでした。
たとえば、匿名で今回の会場をとった原告の方の自宅にも、これは個人情報保護の観点からも問題があるとは思いますが、電話がかかってきているそうです。また、先日、市川市でチャリティコンサートが開催されましたが、そこに出演した音楽家の自宅にも電話が入る、ということでした。これほど逼迫した状況なのですが、その一方で、「金が目当てか」といった嫌がらせ電話も少なくない、ということでした。
訴訟手続きの基本的な説明の後、質疑応答となりましたが、相談のほとんどはカルテが手に入らない、という訴えでした。カルテがない場合、分娩台帳や手術記録などが証拠となる可能性がありますが、多くの人にとって、カルテの開示請求自体、全く未経験だと思います。弁護士から、一定の説明はありますが、心から納得したという感じの人は多くないようでした。
また、医師が別の病院に行ってしまい、その医師を追いかけたいが、個人情報保護が壁となり、追跡できないという話もいくつかありました。医師の登録などは保健所が行っていますが、ここが答えてくれなければ、基本的には追いかけようがありません。また、他の自治体に行ってしまえば、全く分からないということも起こりうるかと思います。カルテの保存義務は医師にあるわけですから、このあたりも何か制度的な改善が必要な部分であろうと思います。
1時間半ほど質疑の時間はありましたが、すべての人が質問し、納得できたという訳にはいきませんでした。これは、たとえば税務相談会のように、聞きたいことだけ聞くというのであれば十分な時間ですが、長い間、つらい病気と闘ってきた人たちですから、その気持ちを抑えることは困難です。このことは、この日の相談会の進行の拙さを責めるのではなく、これから頻繁にこうした相談会を開催していくことで解決するしかないのだ、と思います。
しかし、支援者や弁護団のみがこの任を負うべきというのも、これもまた違う話だと思います。政府や自治体などが、この役割を引き受けていくことも、重要な救済策の一つであろうと思います。