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2008年02月05日付・夕刊
(2)疲労で起きられず一年半前、溝渕雅之医師(48)と最初に会った時の話に戻る。 ◇ ◇ 高知医療センターの救急外来は、他の病院が休みの週末が多忙になる。 「僕らはそれを『週末医療』と呼んでるんですけどね。次から次へ患者さんが来るから、もう、そこら中が大変。金曜日の朝からICU(集中治療室)のベッドをどんどん空けておかんと、満床で受け入れできんなってしまうんですから」 彼の一般外来担当は月曜。 「だから、土、日、月は必死ね。日曜日の夜間に救急車で八回呼ばれたりするから」 一睡もせず、そのまま朝から外来診察へ。患者さんを診ながら、ふっと意識が遠のいたこともあるそうだ。 救急車で来る患者のうち、最も多いのは心臓疾患で約30%。次いで脳卒中などの神経系が25%、さらに外傷の整形外科が続く。 心臓系の診療科も大変だが、「心疾患は心臓外科と循環器内科の両方が診るから、医師の数は合計で十五、六人。人数的には大軍団。でも、脳外科は少ないし、交通事故とか、整形の患者でも頭打ってたらすぐ呼ばれるから出番が多いんですよ」。 高知医療センターの医師は全部で百数十人。その中で残業が月百時間以上の医師は十人から二十人。脳外科は四人いるが、全員が軽く百時間を超える。 「脳外科は皆、救急で呼ばれますからね。僕以外の先生も、昼間の予定手術があったり、外来を診たり、血管造影の検査で忙しい。そこへ緊急オペが入る。脳梗塞(こうそく)の血栓を溶かす血管内手術なら、家族への説明時間も入れて四、五時間、開頭して動脈瘤(りゅう)のクリッピングなら六、七時間」 そういう手術は複数の医者が入る。 「だから、どんどん“たれもつれる”わけ。それが終わってからやっと病棟の回診。消灯が九時半やから、その前に行けるかどうか皆、必死ですよ」 しかし、それでも終わらず、帰宅が翌日になることは既に書いた。 「だけど、うちの脳外科のトップの先生は、もっとすごいんです。五十代半ばやのに、僕より長時間病院にいるんやから。今、この時間(午後十時すぎ)も間違いなく仕事しとる」 四十歳前の、血管内手術を受け持つ医師も激務という。 「僕の前に救命救急科でヘリに乗ってたんやけど、三日に一度しか家に帰れんかった。最初のころは時間外が月二百四十時間弱。連日連夜で朝、めまいで起きられんかったことも。僕も動けんなって、昼から出てきたりすることが最近あるから」 残業、一カ月二百四十時間。単純に三十日で割っても一日八時間。殺人的である。 「そう。で、『もうこれ以上やると倒れる』ってところで帰るわけね。僕はすぐ近くの官舎で単身赴任やから朝の五時に帰っても大丈夫やけど、小さい子供のおる先生とかは非常につらいわね。ちなみに、アメリカの医者で一番離婚率が高いのが脳外科なんですよ」 |
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