利権化する不登校、ひきこもり、ニート、フリーター
テーマ:ブログ不登校、ひきこもり、ニート、フリーター。
彼らを食い物にするビジネスが成り立つ。
それは、御用学者・玄田有志が「東京大学助教授」の看板を利用して宣伝しているとおりだ。
「自立支援」と銘打てば、すばらしい社会貢献をしている団体という体裁をとることはできる。
しかし、それが本当に有意義な社会貢献なのかは、すぐには判断できないのだ。
税金の無駄遣いであることが明白な若者自立塾でも、政府がひきこもりに関心を持ってくれたというだけで、世のひきこもりの親たちは歓迎してしまう。
それが、余計に真の社会貢献なのかウソの社会貢献なのかを見えにくくさせる。
長田百合子、杉浦昌子、戸塚宏のお膝元である愛知県のひきこもり団体に所属していた僕にとっては、本物かニセモノか、そこをどう見極めるかが否応なく切実な問題になるのだ。
犯罪的な団体を真剣に検討する必要はないだろうが、そうではない団体でも、本当にそれが正しい「自立支援」活動なのかと首をかしげるものも多い。
例えば「就業体験」などというプログラムがある。お仕事を体験してみませんか?などという安易な取り組みだ。
本人が望んでやっているならいい。しかし、本当にそうか?
研修の名のもとに、賃金不払いで労働をさせる構図とどこが違うか?
名古屋市内のある団体の喫茶店での就労体験で、一日5時間程度週3日4日働いて、月にもらえる対価は、「5000円」であった事例を知っている。一日ではない。一ヶ月だ。
しかも、その団体の会員費が月額5000円だったのだから、手元に残るのは0円である。
しかし難しいのは、「ここで普通に働けるのだから、普通の喫茶店でバイトしてみようとは思わないの?」と聞いても、本人が「ここでいい」と言ってしまうことだ。
いきなりフルタイムで働かなくてもいい。休み休みでもいいから普通の喫茶店で働けば、それでも賃金は確実に10倍にはなるだろう。それでも普通の職場は敷居が高く、働いていける自信がないのだ。
また別の愛知県三河地方のある団体に見学に行った際は、これまた「作業体験」の名のもとに、その団体の作業を手伝わされた。その作業というのが延々と会報の宛名書きをさせられた挙句、「コピーのボタンを押してみてください。押せますか?」などというのだからあきれるを通り越して、バカにするなと言いたい。
しかも、見学だけで1000円も取られた。
愛知県南知多にある「若者自立塾」は宿泊型のひきこもり収容施設だが、パソコンのワードやエクセルができることが唯一の売り物となっている。
それで月額13万円。しかも3ヶ月で出て行けという。
クソの役にも立たない。
「自立支援」活動などこんなものだ。
正直言って、不登校、ひきこもり、ニート、フリーターなどの「若者」をを利用して金儲けする方法など、僕にはいくらでも思いつくのだ。
まず身柄を確保すること。
施設に拉致して、「さあ、ここでやり直すか、もう一回引きこもるか、どっちか自分で選べ!!」とやれば、相手は「自己決定」で、「自己責任」で、施設にとどまることを選択するだろう。
圧倒的に優位な立場に立ち「自由に選べ!」と迫れば、こちらの意思を貫徹させることができる。
そして、自尊心を徹底的に破壊すること。
これは長田が実際にやっていた手法だが、「さあお前、今すぐにバイト先を探して働かせてもらいに行け!」とやる。
そして、実際に店などに連れて行き、働かせてくださいと頼ませる。いきなりの申し出では断られるのが目に見えているから、「な、やっぱりお前には働くことはできないことがわかっただろう?」とやる。これで相手の自尊心はズタズタ。後はいくらでも言うことを聞かせられる。
この「今すぐ」というところがポイントだ。相手に冷静に考える時間を与えてはならない。
そして、「これはお前のためなんだ!」と言い続けながら、無賃労働をさせ続ければいい。
途中で親がごちゃごちゃ文句を言ってきたら、「子どものためなんだから我慢しろ!」と一喝してやればいい。「そんなことだから今まで子育てを失敗してきたんだろう!」と言ってやれば、ぐうの音も出ないはずだ。
しかも、子どもの身柄をとられていれば、親は逆らえない。
後はいくらでも従属させて、金をしぼり取るだけだ。簡単だ。
「まだお前は自立していない」「まだこいつは自立していない」と言い続ければ、永久に金は自動的に入ってくることになる。
「子どものためなら出せるだろう!」と迫れば、年間300万円でも親は平気で出すだろう。
以上は、「厳しい派」の自立支援法である。「諸君」「正論」読者の負け組オヤジ層に支持されよう。
「優しい派」の自立支援法もある。「世界」「論座」読者層に受けるかもしれない。
「かわいそうだから、助けてあげよう」という見掛けを取る。一見、味方の振りをする。そして「君にも再チャレンジさせてあげるよ」と優しく呼びかけるのだ。
「作家になれるよ」「マンガ家になれるよ」などと甘言で誘惑すれば、いくらでも集まるだろう。実際には「宝くじを買えば当たるかもしれないよ」と言うのと同程度のリアリティしかないのに。
今まで一度もチャンスが回ってこなかった人間は、目の前にぶら下げられた「再チャレンジ」の淡い期待に全財産を賭け、勝つ見込みのないギャンブルに巻き込まれていくのだ。
新風舎に220万円もつぎ込んで本を自費出版したことのある僕が言うのだから間違いない。
しかし、ハイリスクローリターンのギャンブルは、必ず胴元が儲かるようになっている。
巻き込まれた大多数の敗者たちは「才能がなかった」「努力が足りなかった」の自己責任論で片付けられ、ほんのわずかの成功者たちは、「ひきこもりだった私は、この団体のおかげで夢をかなえられました」と、都合のいい広告塔として自動的に働かせることができる。
そういう「社会貢献」を掲げる「自立支援」団体に「再チャレンジさせてやる」という名目で支払われる莫大な授業料や利用料は、社会的不公正の個人へのしわ寄せであるということは、見事に覆い隠されているのだ。
利用料がもっともっと低く、かつ多様な活動がもっともっといたるところで行われていれば、こんな団体が選ばれるわけはない。
NPO活動自体がしにくい社会では、社会問題への必要な手当てが難しいのだ。
結局、現在活動できているのは、エネルギッシュなカルト教祖タイプ(杉浦、長田、戸塚)の代表を擁するような団体と、行政から金を引っ張る技術に長けた世渡り上手の実業家タイプの代表を擁するような団体になる。
ニート利権を政府が差配し、若者自立塾などで利権をばら撒いて、世渡りのうまい実業家のもとに事業が落ちるという構図。
さらには朝日新聞「ロストジェネレーション特集」に見られるように、「被害者」である若者を利用して安倍政権打倒へ動員しようという社民党や共産党のような落ち目の政治組織の思惑に辟易するのも、パターナリズムの臭いを嗅ぎ取るからだろう。
「若者が希望を持てるようにしないといけない」だと、社民党に希望がないのに何言ってんだか。
その他、たまに学者や物書きが「不登校、ひきこもり、ニート、フリーター」を売文のネタにするだけで、右翼の「厳しい派」と左翼の「優しい派」が、当事者不在で不毛なやり取りを繰り返すだけなのだ。
若くしてNPO法人を立ち上げた青年実業家は、いずれ既得権益者たる現在の経営者どもと同じように振舞うこととなるだろう。
連中には、「自立支援」という言葉がそもそも語義矛盾しているということに気づくほどの思考力もないだろう。
いまや「不登校、ひきこもり、ニート、フリーター」は、各勢力が取り合う利権になっている。
ではどうすればいいのか。
答えは容易ではない。
マクロの問題としては、医療費や教育費はほぼ無料にするとか、税金の何割かは好きなNPOに払えるようにするとか、社会システム全体でそこまで抜本的な改革をやらないとダメだろう。
目標は、誰でもどこでもいつからでも生きていけるような社会の実現だ。
ミクロの問題としては、個人にできることは少ない。
実際に対面して、長い時間をかけて付き合い、信頼関係を作り、相手の立場になり、真剣に話に耳を傾けること。
そのくらいしかない。
しかしミクロでいくら対処したとしても、マクロな手当てがなければ、ものすごい勢いで、新たな問題が産みだされ続けるのだ。
現在の社会では、事実上「再チャレンジ」しようと思えば莫大な資金を「自立支援団体」にとられる。しかも、出口はせいぜいフリーターくらいしかない。どうやって自立しろと言うのか。
結局、「再チャレンジ」など絵に描いたもちだ。
もう少し普通に生きさせてくれないものか。
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