救急医療を取り上げた風もそろそろ大詰め。全体を通じて、多くの医療関係者から寄せられた共通する声は、「医師不足」だった。まずは大阪府内の大学病院に勤務する看護師から。
《医師は一日中、外来診察、手術、病棟勤務をした後に当直をし、また翌日には同じ勤務です。夜中に患者対応があると、本当につらそうです》
大阪府南部の救命救急センターの医師は、センターの医師の定数などが約30年前の想定に基づいて決められており、現状にそぐわないとした上で、こう訴える。
《仕事量がここ10年で大幅に増加しており、現在の医師数では正直全く対応できません。労働基準法を順守して医師を完全2交代や3交代制にするなら、現在の2倍程度は必要です》
日本の医師数は平成18年の厚生労働省の調べで約26万3000人。全体の医師数は増加傾向にはあるが、先進国で比較すると圧倒的に少ない。OECD(経済協力開発機構)に加盟している国の人口1000人あたりの医師の数は平均3・1人。日本は2人だ。平均に達するまで、10年かかるとされている。
とはいえ、その数は日本中の警察官(約25万5000人)よりも多いという意外なデータもある。つまり、医師の配置のバランスが悪いのだ。特に特定の診療科の減少が際立っている。
大阪府内の40代の医師は《今の医療界では、若い医師ほど絶望しています。新人はつらい科は避けて楽な仕事を目指します。卒業して産科・小児科・外科・内科を目指す人は激減しています》とし、《業界内では、今のペースでは10年以内には外科を目指す研修医は日本全国でゼロになるといわれています》。
この医師の言うとおり、厚生労働省の調べでも外科の勤務医は平成10年あたりから連続して減少傾向にある。医師はメールをこう続ける。
《現状が続けば本当に医師のなり手はなくなります。僕も仕事への熱意は下がるばかりで、できれば早く引退したいと思っているくらいです》
《将来、日本の医師は眼科医や皮膚科ばかりになり、日本では救急医療が受けられなくなります》(信)
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