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ご近所のお医者さん:/40 映画「シッコ」の衝撃=塚本忠司さん /京都

 ◇塚本医院・塚本忠司さん(西京区)

 ある患者さんが診察室に入ってこられるなり、マイケル・ムーア監督の「シッコ」という映画についての驚きを「ぜひご覧になるべきです! 支払いができないと患者が道に捨てられるんですよ。ただ、捨てるところは慈善団体の前のようですが……」と縷々(るる)話されました。アメリカの医療の現実を映し出したものを見ての衝撃が大きかったようです。

 しかし、それは映画の中のよその国の出来事でなくなろうとしている状況に今のわが国はあります。善しあしは別にして旧習などに依存してなんとか成り立っていた日本の医療は、いろいろの制度改革で崩壊し始め、あちこちで崩落が続いています。救急車が搬送先を探すのに大変な苦労をするのは日常茶飯事になろうとしています。また昨年にはとうとう大阪で患者さんが公園に放置されました。日本では『事件』として騒がれましたが、そのうちこれも日常のことになるのでしょうか。

 アメリカは大統領選挙の予備選挙や党員集会で盛り上がっていますが、そこでも皆保険制度を訴える人や、市場原理を唱える人などいろいろのようです。何でも自己責任の国なので、医療という社会保障も民間中心でということになっていますが、市場原理で競争させれば安くなるのでしょうか? その結果が一人当たりの医療費が世界一高い国アメリカを作っているのではないでしょうか。

 最近、テレビで民間医療保険のCMがはんらんしています。70歳を過ぎても大丈夫などと、あたかも必要なもののごとく言っていますが、本来の皆保険制度がシッカリしていれば無用のものです。民間会社である以上、その目的は「銭もうけ」以外の何ものでもなく、あれほどの広告を出せるほどもうかっているということでしょう。一方で、格差が拡大している現在、国民健康保険の保険料が納められずに無保険状態になっている人がおられます。日本の皆保険制度も崩壊しだしています。民間会社をもうけさせるだけの保険料が払えるなら、皆保険制度維持のためにどうにかしてもらえないものでしょうか。

毎日新聞 2008年3月4日

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