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2008年03月04日(火曜日)付

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支持率低迷―道路改革なしに展望なし

 発足して半年もたたないのに、半数の人たちが内閣を支持しない。朝日新聞の世論調査で、こんな結果が出た。

 内閣支持率は30%台に踏みとどまったが、不支持と答えた人が50%に達したのだ。内閣が発足した昨年9月の支持53%、不支持27%という好調な滑り出しに比べれば、大きな変わりようである。

 確かにこのところ、政府の信頼性を失わせるような事態が相次いでいる。

 道路建設をめぐる国土交通省のずさんな予算の使い方や計画づくり。イージス艦と漁船との衝突事故と、その後の防衛省の迷走ぶり。国民はあきれたり怒ったりしているのに、どこか「他人任せ」に見える首相の言動に、物足りなさを感じる人が多いのではないか。

 郵政民営化のような派手な政策で党内に「抵抗勢力」をつくりだし、改革を演出する。そんな小泉元首相のような芸当のできる福田氏ではない。むしろ、小泉内閣の官房長官として発揮した調整力や官僚を使いこなす能力が、福田氏の持ち味である。

 だが、官房長官としてはその持ち味を生かせたとしても、首相となればそれだけでは足りない。大きな方針を示し、それを実行する力こそが求められる。

 そんなことを言われても、「衆参ねじれ」という安倍前内閣の負の遺産を背負っている。あれこれやろうと思っても、野党に抵抗されてうまくいかない。福田首相はそうぼやくかもしれない。

 しかし、支持率低迷の大きな原因は何か。そのひとつが道路特定財源の問題であることはまちがいない。

 世論調査を見ると、ガソリン税などの高い暫定税率を延長することへの反対が59%、道路特定財源の一般財源化への賛成が59%にのぼる。「10年間で59兆円」の道路計画を減らすべきだと答えた人は71%と圧倒的だ。

 一般財源にもしないまま高い税率を維持して、いままで通り道路をつくり続けようという政府・与党の方針は、多くの国民の考えからずれているのだ。

 道路財源について小泉氏が「そろそろ総理が『譲るべきは譲っていい案をまとめよう』と言えば、修正案の形が出てくる」と語ったのは10日ほど前だ。首相はこの発言を「重く受け止める」と言ったが、いまだ目に見えた動きはない。

 予算案と関連法案の衆院での採決強行で、国会は空転している。19日に任期切れの日銀総裁人事の行方も不透明だ。

 ここは事態打開のためにも、首相が道路特定財源の一般財源化を軸に、思い切った妥協案を示してはどうだろうか。

 首相はこれまで野党との話し合いには柔軟な発言をしてきたのに、具体策には踏み込もうとしない。既得権益を手放したくない与党の道路族や官僚に遠慮していると疑われても仕方ない状況だ。

 国民か、与党や官僚か。どちらを向いているのか。いまこそ首相の姿勢が厳しく問われている。

ロシア大統領―「二重権力」への不安

 ロシアの新大統領は選挙ではなく、前任者の指名によって決まる。そう思いたくなるほど、メドベージェフ氏の圧勝は現職のプーチン大統領が思い描いたシナリオ通りだった。

 この選挙の勝敗自体は、投票前から分かっていたも同然である。焦点は5月の新大統領就任後、プーチン氏の権力がどのようにして続いていくかにある。

 プーチン氏は昨年12月の議会選挙で与党が圧勝したあと、第1副首相のメドベージェフ氏を後継者に指名し、大統領に当選したら自らは首相として新政権を支えると表明した。

 大統領は連続2期までと定めている憲法を改正し、3期目を狙うのではとの見方もあった。結局、権力という自転車のペダルを2人で踏む「タンデム(2人こぎ自転車)」体制で、引き続きロシアを率いる作戦に落ち着いたようだ。

 そのシナリオの第1関門は無事、通過したということだろう。今回の大統領選の最大の意味はそこにある。

 選挙はお世辞にも民主的なものとはいいがたいものだった。反政権派の強力な候補は、立候補を認められなかった。テレビはメドベージェフ氏らの動静を報じることに集中した。行政や経済界、文化人らがこぞって政権の周りに集まり、翼賛選挙の趣さえあった。

 ただ、そうした面だけを見て、独裁とか権力への妄執とかと決めつけるのは、プーチン氏に酷かもしれない。

 ソ連崩壊とその後のエリツィン時代の社会混乱は無残で、すさまじいものだった。そのころの記憶はまだ人々の脳裏に生々しく残っている。

 あの時代への逆戻りだけはご免だ。そんな安定への有権者の切実な思いがあったればこそ、7割もの票がメドベージェフ氏に投じられ、タンデム体制への圧倒的な支持となったと見るべきだ。

 プーチン氏は最近、2020年までの国家戦略を発表し、さらなる発展への道筋を描いてみせた。このまま社会の安定を保ち、強いロシアを築こう。そうした内容だが、含意は別のところにある。「それには権力の継続が必要だ」。このメッセージが人々の心に届いたのは間違いあるまい。

 シナリオの第2関門は、5月の大統領交代だ。プーチン氏が強大な権限を手放した時、本当に「タンデム」は倒れずに走れるのか。その疑問がぬぐいきれないからだ。

 42歳のメドベージェフ氏には、限られた行政経験しかない。プーチン路線の継続を明言しているものの、それだけなら「院政」「傀儡(かいらい)」の批判を免れない。独自路線に踏み出せばタンデムは壊れる。

 権力基盤にしても、現政権の下で均衡していた治安機関出身者ら諸勢力のバランスが、そのまま保たれる保証はない。

 最終権力者はどちらなのか。そこが明らかにならない限り、国民の期待に反してロシアは不安定にならざるを得ない。

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