岡田斗司夫の「遺言」
ロフト・プラスワンで10/31に行われた岡田斗司夫さんのトークライブ、「岡田斗司夫の『遺言』」に行ってきました。
これは岡田さんが大学でやってる講義を元に、岡田さんがいままで作ってきた映像作品について、そこに込められたテーマを語るというもの。これはもう、面白くないハズがありません。
概論
映画にはテーマが必要である。映画を「観る」人には必要でない。でも、映画を「作る」人にテーマが必要で、それがなきゃ、何ヶ月もテンションを保てない。夜中のヨタ話で面白いものは、大抵、次の朝にはもう面白くないものだから。この作品をやる価値があるとみんなが思えるテーマが作品をブレのないものにして、スタッフの力を集め、作品に魂を入れる。
ナディアの「島編」にだって、意味がある。アレは、オンエア開始時に13話納入していないといけないのに4話しか出来ておらず、スケジュールと予算を1話と2話で使い切るような作り方で、確信犯としてゆるめてある。
1話、2話、13話、そして32~39話のクライマックスは外せなかった。そこをやりきるように調整してある。
しかしながら、島編にだって「やりたいこと」はあったし自分の作品である以上、そんなに手を抜けるもんじゃない。
いきなりちょっと脱線してナディアの話が入りましたけど、冒頭で話の核心はもう言ってあります。志がないとプロジェクトは動けないってことです。納得。
DAICON3 オープニングアニメ
事の経緯
・・・「SF大会とは何か」から説明しなきゃいけないよね?(笑)
え、そうなんですか?(笑)
DAICONでオープニングアニメを作ってくれと言われた。
なにやら、庵野というトーストを食わせていれば幾らでも絵を描くという奴と、赤井というコーヒーを飲ませておけば幾らでも絵を描くという奴がいるらしいと聞いて、「そいつは使える!」とスカウトに行った。
庵野君はその面接の時、話を聞きながらダイエーで買った安っぽい落書き帳みたいなものにパワードスーツをさらさら描いて、ぺらぺらめくって動かせて見せたらしい。
庵野サイドとしては、これで一発世に出てやれというつもりで、仲間から「パワードスーツぐらいかましたれ」と言われていたと後で聞いた。
DAICON3のテーマは、その時の自分の状況。その時に、この作り方を覚えて、以来、コレしかやり方をしらない。
こういう作り方だけが作り方ではない。例えば、ヤッターマンなんかそうであるはずがなくて、ヤッターマンを作っている人の世界観があんなわけはない(笑)
庵野さんのエピソードが、この後もいろいろ出てきたんですけど、面白いんだ(笑)
解題
その当時の気持ちとしては、SFコミュニティの中で
- 東京モンは偉い
- 小松左京世代(SFファン第一世代)は偉い
という風潮の中で、なにくそぅと思っていた。
少女が水を託されるのはDAICON3という場でチャンスを与えられた自分たちの姿で、「水をこぼさずに持って行く」というのは失敗せずにSF大会をつつがなく終えて、来年の開催地に引き継ぐことを表している。
ところが、そこへ古参SFファンの象徴である古いSF(パワードスーツ)が邪魔をしに来る。
少女は逃げるし反撃する。少女は水(=チャンス)を与えられたことで、自分も知らなかった力を発揮し始める。そして、少女はいろいろあったり、邪魔にキレたりしながらもマジメに水はこぼさないようにする。ちゃんとSF大会を成功させるぞという真面目さの現れ
ところが、SFを撃退しても今度は社会そのものが障害として立ちはだかる。そんな若造に会場は貸せないと言ってくる人、ギャラの上乗せを要求してくる音楽家、豹変する大人たち。そういうのがどんどんやってくる。
ガンダムからイデオンになるのは豹変する大人のイメージらしい(笑)
そんないろいろがあるけど、しなびかけた大根(=当時、「オタク・イズ・デッド」で語られているような衰退期にあったSFファン)に我々が水をやることで、みんな仲良く、SF大会がうまくいく(大根が宇宙船になって宇宙へ飛び立つ)といいねという夢を最後に語ってる
なるほど、そう聞いてみるとすごく分かり易いメッセージです。
DAICON4
事の経緯
DAICON3から2年後。その間に、「大日本」と「ウルトラマン」を作って作劇の腕を磨き、「マクロス」を手伝ってプロのワザも覚えた。
そこで、16mmフィルムの25分のアニメを作ろうとした。
最初、DAICON3のリメイクで始まるのは、「この2年で進歩したでしょ?同じレイアウトで同じカットに見えるけど良くなってるでしょう?」ということ。でも、「だからって、それでどうなのよ・・・」という意味もある。
「ヱヴァ」観たんだけど、これと同じことをやってるように見える。庵野君、DAICON4で同じことやったのに、またなんでやってるんだろう?「でも、今の自分にはこうやるしかないです」という敗北宣言に見えてちょっとキツイなあ
16mm版のプロット
DAICON3で宇宙に飛び立った宇宙船の中から始まる。
とてつもなくデカい宇宙船は各区画に区切られていて、そこは、ガンダムの世界だったり、特撮の世界だったり海外ハードSFの世界だったりする。そして、人々はその区画が自分の本当の世界だと思って暮らしている。そして、区画間で諍いが起こっている
これは、分科会方式で大規模になりジャンル間の交流がなくなっていて、SFファンとしての帰属意識が薄らぎ始めていたSF大会の問題をそのままモチーフとしている。
DAICON3の少女は冷凍睡眠から目覚める。成長した彼女は船の状態を憂い、争いを止めようと奔走し、ブリッジへ向かう
そして、戦争が激化し、宇宙船が崩壊寸前になったときに宇宙船は新しい星に到着する。実は、宇宙船は移民船だったのだ。かくして、人々は新しい星で平和に暮らしました・・・んだったらいいなあ
なるほど・・・これを聞くと、DAICON4はかなり違って見えてきます。
顛末
しかし、ちょっと16mmは無理だった。DAICON4開幕3ヶ月前に16mm版の製作は断念する。
そこで、8mmで音楽(ELOのトワイライト)に乗せて、エッセンスの部分をつなぎ合わせて作っちゃうことにした。
いきなり戦闘シーンから始まるのはそういうわけで、前作の水にあたるのが、今回は剣。これは、「そうは言っても、お前らはSF大会やらせてもらっていいよな」と言われるようになり、SF大会の運営のイメージが権力を帯びたため。剣に乗った女の子に随伴して飛ぶ飛行機は早くも現れ始めた「岡田さんや庵野さんが目標です」というフォロワーのイメージ。
そして、女の子は剣から降りる。実はSF大会からちょっと退いた目になった無責任さを意図してる。でも、剣(=権力)は分裂し、暴走する。でも、この暴走の様が、また美しいんだけど
休憩前のまとめ
こうやった作り方、つまり、「その時の感情や状況をそのまま出すやり方」は、作品のパワーに繋がる。その作品をみて、観客に自分たちの状況やそのままの感情が伝わるわけではなく、「なんかすげー」と言った伝わり方をするんだけど、それはそれでよい。
観客と制作者は、そうやって作品を中間に挟んで繋がっていればいいと思う。これは、ともすれば「観客はどうせ、作品の表層しかわかってないんだぜ」というエリート意識になりかねないが、そのダークサイドをちゃんと認識していれば、非常に効率のいいやり方だと言える。
休憩
会社に残ってたという王立科学館の第2弾のコンプセットのプレゼント大会。
どうやってわけようかー。えーっと、今日、この中で一番遠くから来たと思う奴、手を挙げて!
会場から「名古屋」「神戸」「札幌」と声が上がる。札幌って(笑)
こんな感じで「この会場で一番若い奴」「この中で一番昔にオレと会ったことがあると思う奴」などにプレゼントしてました。
ちなみに、これを書いている私は「名古屋」で最初にもらいました。新幹線乗って来た甲斐があった(笑)。でも、こんなかさばるものをまず遠くから来た奴に渡そうと考える岡田さんって
えとー、ありがとうございます!(笑)
おしてる
ものすごくおしてるんだけど・・・
今回の話の落としどころは、トップ2の設定を考えてくれと鶴巻監督に頼まれて作ったボツ設定
作ったはいいんだけど、結局、生き様の投影で作ってて、鶴巻監督と自分の生き様・・・というか、今のアニメ界の現状やアニメファンの状況に対する認識が違うので、使えないねということになった。
・・・でも、この調子でいくと無理だな・・・
「大日本」と「ウルトラマン」は飛ばそうか
会場から「えーっ」の声が
「えー」なんかい。じゃあ、まあオープニングは観ようか・・・。これは、終わらんな。第2部をやるしかないか
会場は「おーっ」。ついでに、会場から「(怪傑)のうてんきは?」の声
そんなんまでやってらない。それは、岡田斗司夫の「寝言」でやろうか
会場から拍手
言っちゃったよ・・・
というわけで、今日は第一部と言うことになりました。休憩後のお話は、また次のエントリで。
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