◎仏との化粧品開発 「メードイン北陸」を世界に
北陸ライフケアクラスター研究会とフランスの化粧品開発グループ「コスメティックバ
レー」の交流協定締結は、地域の自然素材や発酵技術を生かした化粧品開発に取り組む研究会にとっては、海外市場に足がかりを築く願ってもないチャンスと言える。
自然の成分を使った化粧品は、アンチエイジング(抗加齢)の関心の高まりなどを背景
に世界的な有望市場となっており、一流化粧品メーカーが集積するフランスの技術力や開発戦略に学べば、「メードイン北陸」の世界ブランド化も決して夢ではないだろう。
北陸の大学、企業を中心に二〇〇二年に発足した北陸ライフケアクラスター研究会は、
食品、製薬、発酵など、この地の伝統的な技術や天然素材を活用したビジネスの可能性を探っている。福光屋が独自のコメ発酵液を利用して開発した基礎化粧品は全国的なヒットとなったほか、金時草やヨモギ成分を使った化粧品も開発されている。
一方、コスメティックバレーは、クリスチャン・ディオールやゲラン、ロレアルなどの
一流化粧品メーカーや製薬、食品など約百三十社が加盟する商品開発グループで、日本人の肌の美しさに着目して日本製化粧品への関心が高まっているという。フランスの香水やハーブなどの先端技術と研究会の地場技術を組み合わせれば意外なアイデアが生まれる可能性がある。
中小企業の中には化粧品産業への進出意欲があっても、効果を裏付ける科学分析や研究
が大きな負担となる。その点、北陸は金大や富大などに皮膚科学や補完代替医療、和漢薬研究の蓄積があるのが強みで、研究会では安全性や機能性を徹底的に検証し、医薬品により近い化粧品開発に取り組んでいる。化粧品の本場、フランスとの提携により既存製品の概念を打ち破るような開発を重ねていけば北陸が日本版「コスメバレー」となる夢も広がっていくだろう。
化粧品開発はものづくりの中でも産学官連携にふさわしいテーマであり、自然成分の効
き目の違いによって薬やサプリメント、さらには健康食品へと幅広く応用できる利点もある。「予防産業」「健康産業」の将来性からいっても、北陸として重点的に取り組みたい分野である。
◎日銀総裁人事 能力最優先が当然のはず
「通貨の番人」たる日銀総裁は、何より能力最優先で選ばれてよい。「財政・金融の分
離原則」という建前を優先させ、そのポストに最良の人材を選ばないなら、国益を損なうことになりかねない。
武藤敏郎副総裁(元財務次官)の昇格で決まりかけた日銀総裁人事について、民主党の
小沢一郎代表が、予算案の衆院採決を理由に、政府・与党の推す人事案件には同意しないと表明したのは、とても良識ある判断とは言えない。予算案と総裁人事はまったくの別問題であり、そもそも同列に論じるのはおかしい。
財政・金融の分離原則を持ち出すまでもなく、日銀総裁に独立性と透明性が求められる
のは当然であって、かつて政府の財政政策の担い手だったという経歴をもって、分離原則に反すると決めつけてしまうのはいかがなものか。いったんは武藤総裁で自民、民主両党が合意しかけたのは、民主党内にも分離原則うんぬんは、しょせん建前に過ぎぬという思いがあったからだろう。
民主党には武藤氏に代わって、山口泰前副総裁を推す声もあるという。武藤氏より山口
氏の手腕や経験を高く評価して推すのなら話は分かるが、「財政と金融の分離を図ることができる」という理由で、日銀生え抜きの山口氏を推すのだとしたら、優先順位を間違えている。
日銀総裁は、金融政策に深い知識と経験を有し、国際金融市場ににらみが利く人物でな
くてはならない。独立性を保ちながらも、同時に政府とあうんの呼吸で、金融政策のかじ取りをしていくことも求められる。
サブプライム問題で米国景気の息切れが現実のものとなり、日本の景気も足取りが危う
くなってきた。日銀総裁には、金融政策決定会合を通じて、景気を再び上昇基調に戻す重い責務が課せられている。総裁ポストがしばらく空席になっても、実際上の支障はないとはいえ、国際社会の失笑を浴びるだろう。
福田康夫首相の周辺では、民主党の同意を得るために「セカンドベスト」として、山口
氏を推す声も出ているという。だが、最良の人材を日銀トップに送る努力を最後まで続けてほしい。総裁人事を政争の具にしてしまっては、将来に禍根を残す。