【ガザ地区(パレスチナ自治区)前田英司】「私は(イスラム原理主義組織)ハマスでも何でもない。なぜ、こんな目に遭わなければならないのか」--。先月27日以降、イスラエル軍の攻撃にさらされるパレスチナ自治区ガザ地区。パレスチナ人死者数は2日、100人を超えた。墓地では犠牲者増を見越して新しい墓穴が準備されている。
ナセル・アルボライさん(29)は2日、ガザ市の自宅で、生後6カ月で逝った長男ムハンマドちゃんの写真を見つめていた。先月27日に写真スタジオで撮影したばかり。
撮影から帰宅後間もなく、自宅前のハマス「内務省」が空爆された。がれきが寝室の天井を突き破り、ムハンマドちゃんが下敷きになった。「この写真が遺影になるとは……」。アルボライさんが怒りに肩を震わせる。
ガザ北部ジャバリヤに住むアヘド・ハッサンさん(46)は「今朝、妻が流産した」と明かす。妊娠3カ月。「精神状態が不安定だったに違いない」
1日午後8時半ごろ、イスラエル軍から自宅を空爆すると電話で警告された。ハマス系大学で食堂を経営しているが、狙われる覚えはない。退去を拒否すると「残る人生は数分だ」と告げられた。
脅える妻と8人の子供たち。親類や近所の人が駆けつけ、「人間の鎖」を作って抗議した。結局、攻撃は免れた。「これもガザに生きる運命だ」。ハッサンさんは自分に言い聞かせるように語る。
イスラエル軍が侵攻しているジャバリヤ東部。軍ヘリが機銃掃射を繰り返し、戦車の移動音が響き渡る。地元住民によると、付近はパレスチナ武装勢力がイスラエル領内に撃ち込むロケット弾の発射拠点という。ある男性(47)は「イスラエル軍に報復されてロケット弾攻撃の代償を払うのは武装勢力ではなく、我々だ」と憤りを口にした。
毎日新聞 2008年3月3日 10時09分 (最終更新時間 3月3日 14時22分)