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【考論】

日本海横断航路の早期実現へ 及川 英明

2007年4月11日

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中ロとの連携強化期待

 さる三月二十六日から中国の胡錦濤主席がモスクワを訪問し、ロシアの中国年(チャイナイヤー)がスタートした。私たちも、一昨年十一月にロシア沿海州に隣接する吉林省琿春市に企業進出し、現在従業員千名規模の縫製工場を経営する「中国法人」として、五千人近いという中国企業、地方政府交流団の一員として同行した。二十六日から四日間モスクワで開催された中国商務部主催の「中国展」には十万人近い参観者が足を運び、中ロ間の行政部門や企業間の交流が活発に行なわれた。

 ロシアでの中国年は、昨年の中国でのロシア年に続くもので、ここにきて中ロ間の相互交流は、戦略的な意味合いを背景に、国境バーター貿易を卒業して実務的な経済連携が始まっている。琿春辺境経済合作区もロシア工業団地プロジェクトの協議書に調印した。

 二年前に打ち出された中国東北部の振興政策と、近年のロシアの経済発展にともなって、日本海横断航路が現実味を帯びてきた。航路の安定開設に不可欠な中国から日本へ、日本からロシアへの貨物量が見込めてきた。

 日本海航路の開設を長年にわたって研究してきた環日本海経済研究所(ERINA)は、ロシア、中国の輸送会社と韓国の船社と提携した四カ国合弁によるロシア・ザルビノ(トロイツア港)−韓国束草−新潟の航路運営会社に出資する日本側投資会社を発足させた。シベリア鉄道のワゴン輸送の過半数を握るトランスAS集団も中国の輸送会社と提携して、ザルビノから日本へ向けた輸送協議書を締結し、伏木富山港への定期航路開設を準備している。

 日本海を横断する航路が開設すれば中国東北部から大連経由で七−十日間かかっている輸送時間が二、三日に短縮できる。中国東北部がわが日本海経済圏の衛星地域に変わる。

 中国からロシアを経由して日本へ輸入される物資は、九州に等しい広大な土地を有する吉林省延辺朝鮮族自治州を始め、吉林長春や黒龍江省からの加工木材や農水産物、衣料品などで、日本からロシアへは目下盛んな中古自動車や中国東北部の外資企業向けの資材、部品などを想定している。

 こうした潜在貨物を日本海経由で輸送するために、中国、ロシア、日本の港での通関の利便性と、競争力がある輸送コスト、港施設の拡充などを期待したい。

 (小島衣料HR事業部長、小島衣料<琿春>服装有限公司董事)

 

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