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現在位置:asahi.com>天声人語 天声人語2008年03月03日(月曜日)付
中国の砂漠地帯で起きる「黒い嵐」について先ごろ小欄に書いたら、読んだ人から、「砂進人退」という言葉が現地にあると教えられた。砂が広がって人を退ける意味だという。中国内陸の砂漠化は深刻らしい▼その一帯から舞い上がった砂が、昨夜あたりから日本に飛来している。招かれざる春先の使者、黄砂の今季第一陣である。きょうは西日本を覆って広がるそうだ。雨の降らない地方では、空がぼんやり霞(かす)むかもしれない▼厄介者ながら、かつては春の風物詩でもあった。「霾(つちふる)」と言って、春の季題にもなっている。〈霾や太古の如く人ゆきゝ〉杜門。近ごろは「風情」とはいかない。洗濯物を汚し、体にまとわり、ときに飛行機の発着を妨げる。生活そのものを、砂がざらりと不快にする▼本場の北京あたりも、前は今ほどひどくなかったらしい。30年ほど前に訪れた文芸評論家の山本健吉は「ものみな黄色い薄膜を張ったようで、柔らかみを帯びている」と、のどかに記している。いまや北東アジア一帯で、風物詩は気象災害へと姿を変えている▼健康被害への心配もある。日本の環境省は先週から、日韓とモンゴルで観測した飛来情報をネットで提供し始めた。ところが肝心の中国が気象情報を「国家機密」として封印している。そのぶん予報の精度は霞むそうだ▼「砂進人退」とは逆の、「人進砂退」という言葉も中国にある。砂漠緑化のスローガンだという。黄砂を退ける知恵を出し合うためにも、関係国への情報提供を渋っている時ではないだろう。 PR情報 |
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