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救命救急センター:長岡赤十字病院が一時、指定返上の危機 支援で回避 /新潟

 ◇麻酔医の半数退職、新大病院の支援で回避

 国指定の救命救急センターとして、中越地方の最重症の救急患者を受け入れてきた長岡赤十字病院(長岡市)が一時、指定病院の返上を検討していたことが分かった。麻酔医不足が原因で、新潟大などの協力で返上自体は見送られた。だが、県内の救急医療の要となる救命センターも医師不足の深刻な影響を受けていることが浮き彫りになり、早急な対策が求められそうだ。【前谷宏】

 厚生労働省は都道府県の推薦に基づき、救命救急センターとして全国203病院を指定。補助金を出し、「重篤な患者を常に必ず受け入れることができる診療体制」を求めている。県内では長岡赤十字▽新潟市民▽県立新発田▽県立中央--の計4病院が指定されている。

 長岡赤十字病院は79年に指定され、多発外傷や重いやけどなどの重篤患者を引き受けてきた。しかし、06年9月からの半年間で、麻酔医6人のうち、麻酔科部長を含む3人が退職。救命センターに求められる「24時間365日」の緊急手術に備えることが難しくなった。

 このため、市内の立川、長岡中央の両総合病院と協議し、昨年4月から3日に一度ずつの当番日を決め、重篤患者の受け入れを分担。3病院の連携で救急車の「たらい回し」による患者死亡も起こらず、圏外への患者搬送も最小限に抑えたという。

 しかし、「24時間365日」の役割を果たせない状況で補助金を受けていることや、3月末でさらに2人の麻酔医が退職することから、病院が昨年12月、県に返上を打診していた。

 事態を重く見た県や日本赤十字本社は医師の確保などの支援策を検討。協力要請を受けた新潟大学医歯学総合病院が、長岡赤十字病院に麻酔医3人を派遣する方針を決定したことで、救急医療体制が維持できるようになったという。

 同病院の内藤万砂文(まさふみ)センター長は「市内2病院の協力で、何とか救急医療体制は維持できているが、同じような状況は全国どこでも起こりうる。医師不足の対策強化や救急病院の負担軽減などの努力が必要だ」と話した。

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 ■解説

 ◇社会全体で合意作りを

 全国の救急医療体制は、軽症患者を受け入れる1次救急から最重症患者の3次救急までの3段階に分かれている。救命救急センターは、1次、2次で治療できない患者を受け入れる3次救急を担っており、救急医療の「最後の砦(とりで)」といえる。

 県内では上、中、下越と新潟市の4地域にそれぞれ救命センターがあるが、中越の救命センターがなくなれば、県内の救急医療に深刻な影響をもたらす恐れがあった。

 今回の問題の背景として、病院関係者が指摘するのは「患者の病院頼み」だ。軽症患者もかかりつけの開業医ではなく、2次、3次救急の病院に集まる傾向があり、勤務医の負担が増大。疲弊した医師が開業したり、他病院への流出が相次ぎ、残った医師の負担が増すという悪循環が起きているという。大学病院も同じ状態で、医局から基幹病院への医師の派遣に支障が出ている。

 救急医療は社会にとっての「生命線」。行政側が知恵を絞るのは当然だが、緊急時以外は市町村や地元医師会が開設する急患診療センターを使うよう、市民に要請してもいい。社会全体で救急医療体制を維持するための合意が必要だ。【前谷宏】

毎日新聞 2008年3月1日

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