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2008年3月3日

◎沿線6市会議 「500万人経済圏」の足がかりに

 北陸新幹線でつながる金沢、高岡、富山、上越、長野、高崎市で構成する沿線六市観光 推進会議を「五百万人経済圏」形成の足がかりとしたい。六市はそれぞれ地域を代表する拠点都市であり、沿線の顔となる都市同士が結び付きを強めることで、北陸新幹線は日本縦断型の新たな地域連携軸となろう。その大きな可能性を点から線、面へと広げていきたい。

 新幹線開通による経済効果を最大限に引き出すには、時間短縮による東京とのつながり を重視するだけでなく、沿線地域で回遊が生まれることが大事である。行き来が活発化することで圏域の一体感が生まれ、北陸に上越、長野地域などを合わせた「五百万人経済圏」の形成も現実味を帯びる。そのかぎを握るのはやはり沿線都市の連携であり、今のうちから戦略を練っておく必要がある。

 沿線六市観光推進会議は今秋に開催され、各市長の会談や市民フォーラムが行われる。 金沢開業が実現する二〇一四年度まで各市持ち回りで開かれ、観光資源の発掘や新幹線を活用した観光ルート設定を目指す。

 それぞれ地域資源が豊富な都市であり、都内や各市での共同特産品フェアや、まつり、 イベントの共同誘客など多彩な企画が考えられるだろう。とくに高崎、長野は新幹線開業による影響の大きさを経験してきた都市である。ストロー対策や駅周辺開発も含めて幅広い情報交換ができるはずである。

 北陸新幹線開業へ向け、二都市間の協定締結も相次いでいる。目を見張るのは観光のみ ならず政策連携も生まれてきたことだ。たとえば金沢、高崎市の友好交流都市協定では、まちづくりに関する共同研究が盛り込まれた。両市は城下町であり、明治期には軍都として発展した共通の歴史を持つ。景観行政に力を入れる高崎市にとっては、全国でも先進的な金沢の景観施策は大いに参考になると思われる。共通する行政課題で手を携えることは、より強い信頼関係をはぐくむことになろう。

 金沢、高岡、上越三市は寺院群を生かした街づくりを目指す「寺町サミット」でもつな がりを深めている。そうした既存の都市ネットワークも生かしながら「五百万人経済圏」を支える沿線軸を揺るぎないものにしていきたい。

◎空港施設の外資規制 その必要性は極めて低い

 成田や羽田の空港管理会社への外資規制導入の是非が焦点となっている空港整備法改正 案について、政府は規制の導入は当面困難と判断し、規制を削除した改正案を閣議決定して今国会に提出する方針を固めたとされる。

 空港会社が民営化され、株式上場されても入国管理や航空管制など公益を守る重要な業 務まで民間に委ねるのではないから、結論からいえば外資規制の必要性は極めて低いといえる。むしろ、規制により鎖国的なイメージを与え、海外からの対日投資を増やし、経済を活性化しようとする政府の方針のブレーキになりかねない。

 が、政府は外資規制を断念したわけでなく、成田空港を管理する成田国際空港会社が株 式を上場する予定の二〇〇九年度に向け、今後も国土交通省を中心に政府内で検討を続けるそうだ。

 空港施設への外資導入に関して国内では賛否両論があり、政府内で、と限らずに幅広く 、開かれた議論が望ましい。基本的には国際社会の相互交流を盛んにしていくことを目指したい。

 そうした開かれた日本にしていくことが結局は国益につながるのである。戦後の日本の めざましい経済発展は国境を越えた海外との自由な交流の結果だったことを思い出さねばなるまい。

 あえて教科書的にいえば、規制を多くすると、市場が閉鎖的になり、勢い経済交流もや せ細ってしまうのである。閉鎖主義が批判され、開かれた市場にしていく開放主義が評価されるのはともに繁栄していくことができる唯一の道だからである。

 規制賛成論は外国の例をつまみ食いしながら、空港という重要なインフラが外資に支配 されれば、治安上の問題が生じる恐れがあると主張する。が、そうした懸念には有事対策として国家の命令に従わせる「行為規制」を設ければよいのだ。

 にもかかわらず、大局から国益を考えない、さまつな主張を政府が持て余しているよう にも見えるのはまことに情けない。反対論は、規制を必要とする主張の本当の狙いは国交省の天下り先確保ではないかと反論する。もしそうなら、省益の主張にすぎない。


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