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2008年3月3日

 石川と大阪を舞台にした「替え玉殺人」は先ごろ三人目の男性殺害容疑で中国人の元妻が再逮捕され、ようやく事件の全容が浮かび上がった

高齢の日本人三人が犠牲になった悲惨な事件だが、健康社会を逆手に取るような手口だった。糖尿病の男性に辛い料理をたらふく食べさせ、飲ませ、寒い中に放置するなどして死に至らせた犯行とみられるからである

容疑者の女は野々市町に一時住んでいた。女の手料理を食べたことのある事件関係者が「えらい、くどかった(塩辛い)」と本社記者に証言していたのが記憶にある。病気の身で暴飲暴食。挙げ句に薬が止められるとどうなるか、結論は容易に察することができる

他人事ではない教訓を含んだ事件とも言える。メタボだ、高血圧だといいながら牛飲馬食し、寒い街を徘徊するわが身を含め、健康第一を叫びながら不摂生を続ける男たちが少なくない。コレステロール、尿酸値、血糖値まで、神の警告である異変シグナルを無視するのは自殺行為かもしれない

特異な事件は特異な社会を写し出す。「替え玉殺人」は健康と飽食の矛盾が渦巻く社会の落とし子のように思えてくる。


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