2008年3月3日(月)
社会 : 瀬戸際で崩壊防ぐ 諏訪地方の産科医療
更新:2008-3-3 6:02

 全国各地で医師不足による医療崩壊が表面化している。特に産科医の減少は深刻で、県内でも分娩(ぶんべん)を休廃止する病院や診療所が相次ぐ。諏訪地方では2月、産科医2人が勤務する市立岡谷病院(岡谷市)で1人が体調を崩し、分娩休止を検討していたことが発覚した。長野日報社は、諏訪地方の分娩取り扱い数と産科医療体制の現状を調査し、課題を探った。他地区に比べて”恵まれている”と言われる諏訪地方だが、各医療機関の自力に頼り、産科医療の崩壊を瀬戸際で防いでいる側面も浮かび上がってくる。

◆諏訪湖周辺に施設集中

 諏訪地方で分娩を行う医療機関は7施設。2007年の分娩数は合計2269例で、6市町村の出生数1936人を上回っている。

 八ケ岳山ろく周辺で分娩の休止が続いた影響で、施設、分娩数とも諏訪湖周に集中。分娩数では開業医が担う役割の大きさが見て取れる。

 一方で、件数には表れないが、諏訪赤十字病院と市立岡谷病院を「産科医療の基幹病院」と語る開業医がいる。異常の発生やリスクの高い出産など高度な医療行為が必要な緊急時に、医療スタッフや設備が整っている両病院が、受け皿として機能しているためだ。

 医師1人が体調を崩し、一時は分娩休止を検討した岡谷病院は「今後の医師確保に不安を感じている」と話す。

 妊産婦以外の救急患者も受け入れる諏訪日赤は、岡谷病院が分娩を休止すれば「大変な事態になる」と懸念。「お産の取りやめを考えざるを得ない」と訴える開業医もいる。

◆他地区からの妊産婦も

 医師数は10年前とほとんど変わらない。諏訪中央病院と富士見高原病院の分娩休止の波紋は、地域内の産科医たちが吸収した。さらに上下伊那や松塩、山梨など他地区の妊産婦を受け入れ、産科医療の”防波堤”としても奮起している。

 半面、開業医の高齢化や後継者不足、妊産婦の流入に危機感を募らせ、「開業医、病院、行政の連携による対応と、将来を見通した地域全体の分娩システムづくりが急務」と警鐘を鳴らす関係者もいる。産科に多い女性医師への支援を求める声も強い。

 人材不足は医師だけではないようだ。ある開業医は「能力を持った助産師の養成や医師をサポートする看護師が必要」と語った。ほかの開業医は「外科や内科に助産師が勤務しているケースもある」とし、適材適所に人材を配置する必要性を提唱する。

 諏訪保健所によると、県内の周産期死亡率(妊娠22週以後の死産及び生後1歳未満の死亡)は、06年は出産千件に対し4.4人。1980年の22.5人に比べて飛躍的に改善した。出生場所は70.8%(70年は41.8%)が病院。病院と診療所の比率は全国が1対1だが、県内は5対2。病院への加重傾向が年々強まる。

 より安全なお産を求める妊産婦や家族の意向が反映された数値だが、「安全が当たり前」と過剰に詰め寄れば、産科医は精神的にも追い込まれ、意欲を失っていく。多くの産科医が「お産は命懸けだということを一般の人たちに理解してほしい」と訴えている。

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