ゲストさんログイン

ウェブ検索

最新ニュース! クリックするほどよく分かる

livedoor ニュース

今週のお役立ち情報

中国の捜査はこれで終結?=毒入りギョウザ事件

トラックバック(7)  トラックバック  ブックマーク  livedoor clip Yahoo! ブックマーク
中国の捜査はこれで終結?=毒入りギョウザ事件
毒入りギョーザ事件についての中国政府の公式発表
【PJ 2008年02月29日】− 中国製の冷凍ギョーザにメタミドホスが混入した事件で28日、中国の公安省と国家品質監督検査検疫総局(以下、検疫総局)が記者会見を開いた

 会見では、1.製造元である天洋食品の従業員ら55人を調査したが、疑わしい従業員はいなかった、2.メタミドホスが、製品のパッケージに使われた包装フィルムを通して内部に染みこむ実験結果が得られた、という捜査結果が公表され、今回の中毒事件が「故意に混入された農薬によるものである」とした上で、「日本の捜査当局が日本国内での混入の可能性が低いと判断したことは時期尚早」などと日本の対応を批判した。

 この会見を見る限り、多数の中毒患者を出し、5歳の児童が意識不明の重体に一時陥った事件の真相は、永遠に明らかにならないと思う。中国政府が、事件の真相究明に対して全く不誠実だからだ。

「責任転嫁」は中国のお家芸?
 中国には、責任を押し付け合うことで責任の所在を曖昧にし、目前の危機を乗り切ろうとする雰囲気があるように思う。

 南米のパナマで2006年9月、咳止めシロップを飲んだ100人以上の児童らが死亡する事件が起きた。原因は、咳止めシロップの原料に使われていた中国製のグリセリンに混入していたジエチレングリコールであった。中国の国家食品薬品監督管理局は2007年5月、問題のグリセリンを製造していた「泰興グリセリン工場」は薬品生産企業ではなく、国家食品薬品監督管理局は監督していない、と驚くべき「調査結果」を発表した(リンク先は英文)。多数の死者を出した原因企業を抱える国であるのに、まるで他人事である。工業用でしかも粗悪なグリセリンが医薬品用途に輸出された原因すら明らかではない。「監督管理局の責任ではない」と主張することで、国全体の責任が回避されると思い込んでいるのではないか。

 アメリカの食品医薬品局は2007年6月、中国産水産物に有害物質が含まれているとして、エビ、ナマズ、ウナギなど5種類の養殖魚の輸入を禁止した。この措置に対して検疫総局は「米国からの輸入品の多くが基準を満たしていないことが分かったが、われわれはトラブルが生じないように協力的な態度を取ってきた」「米国が中国産輸入品に対し同様の立場を取ることを望む」との声明を発表した。責任転嫁と言うより、責任放棄と言う方が適当だ。全量検査を行っているわけではないのに、安全基準を外れた輸入食品が検疫で見つかっても騒がなかったと告白しているのだ。検疫をすり抜けた基準外食品は相当数に上るだろう。その危険を公表せず、あなたたちの輸出した商品については騒がなかったのだから、私たちが輸出した商品についても騒がないでください、と言っているのだ。

 自国の人々の健康に無関心な国に、輸出相手国の消費者の健康を考えろと言っても、無理なのかも知れない。中国とはそんな国なのかと、あきれ果てるばかりだ。

 メタミドホスの純度、流通経路、付着状況などから客観的に考えて、ギョーザへの毒物混入は中国国内で起こったことは間違いない。首相も官房長官も、警察庁も、そう考えている。しかし、中国当局は、中国国内に残っていた製品にメタミドホスが検出されなかったこと、製造工場でメタミドホスを使用した記録がなかったこと、従業員の聞き取り調査で疑わしい人物がいなかったこと、を根拠に、中国国内での混入を否定した。中国ではないのだから日本だろう、と日本に責任転嫁しようとしているのだ。

 中国当局の捜査のどこが客観的で科学的なのか。バカにするのもいい加減にしろ、と叫びたくなる。

メタミドホスが通り抜ける包装フィルム?
 問題のメタミドホスが、製品パッケージの外側から内部に染み込んだ混入した可能性を調べるために、中国政府は実験を行ったらしい。濃度の異なる4種類のメタミドホス水溶液を「完全密封」したパッケージの外側に付着させ-18℃に保ち、パッケージの内側でメタミドホスが検出されるかどうかを調べたという。その結果、62個のサンプルのうち、87%(54個)で、内部からもメタミドホスが検出されたという。

 JTのホームページなどで見る限り、包装に使われていたのは、多層の高分子シートかアルミ蒸着高分子シートだろう。冷凍庫では臭いが移りやすいため、冷凍食品のパッケージには、臭いを通さない素材が使われている。人間の嗅覚は、臭い物質の種類によっても異なるが、数〜100ppmの臭い物質にも反応すると言われている。このような鋭敏な嗅覚を持ってしても感知できない程度にしか、ガスを透過しない。

 このような気体を通さないフィルムが、メタミドホス水溶液を通すことがあるのか。-18℃なら、メタミドホス水溶液は、凍って固体になっている。気体をほとんど通さないフィルムを、液体や固体が通過するのだろうか。日本の調査結果は「通さない」である。中国が「通す」と主張するのなら、日本の研究機関と共同で公開実験をしたらどうか。極めて客観的に、実験の真偽を確かめることができるだろう。

 もう一点、サンプル数が「62個」というのが腑に落ちない。4種類の濃度のメタミドホス水溶液の透過実験を行ったのなら、サンプル数は4の倍数になるのが普通だ。15個ずつなら60個、16個ずつなら64個だ。実験をするのに、二つの濃度では16個、残りは15個というような差をつけることはあるのだろうか。

 わたしは、中国のフィルム実験を怪しいと思っている。善意に解釈すれば、評価の手順が間違っていて、微量のメタミドホスがフィルムの内側に付いてしまった可能性がある。うがった見方をすれば、実験結果を捏造した可能性がある。実験をやり直せば済む話だ。「科学」的に見える実験結果を出して日本に責任転嫁しようとしているのなら、科学的に反証すればいいだけのことだ。

輸入禁止を
 EUは、2002年から中国産のエビ、養殖魚、ハチミツ、ロイヤルゼリーなどの動物性食品の輸入を禁止し、2004年7月に全面再開した。これは、中国政府が、食品と動物試料の安全性確保について、大幅な改善措置を講じたからだ。2007年には、アメリカが、中国産ウナギやエビなどの輸入を一時禁止し、輸入業者がこれらの水産物に含まれる化学物質含有量がアメリカの基準に適合したと証明できるまで、輸入を再開しないとした。

 なぜ日本は、中国製品の輸入を禁止できないのか。思い出せるだけでも、冷凍ほうれん草、ピーマン、キクラゲ、ショウガ、にんじん、冷凍カツ、全滅と言っていいほど、いろいろな食品から有害薬物が検出されている。今回のギョーザ事件でも、政府関係者のことごとくが、ギョーザに毒物が混入したのは中国だと考えていて、中国はそれをのらりくらりとはぐらかして、その上、日本で混入したのではないかと逆ギレしている。なぜ、弱腰であり続けているのか。中国産品がEUやアメリカで問題になったとき、輸入禁止をすることで初めて、中国は生産管理の改善を開始した。そういう強硬な態度を示すことで、ようやく中国に問題の深刻さを伝えることができるのだ。ケンカではない。主張すべきことを主張しなければ、属国に成り下がってしまう。【了】

■関連記事
毒入りギョウザはテロじゃないの?
使われたのは農薬の原液?=毒入りギョウザ事件
「ジクロルボス」混入でマスコミは大混乱=毒入りギョウザ事件
中国での捜査を迷宮入りさせるな=毒入りギョウザ事件

■関連情報
書くってむずかしい(記者ブログ)
PJニュース.net
PJ募集中!

※この記事は、PJ個人の文責によるもので、法人としてのライブドアの見解・意向を示すものではありません。また、PJはライブドアのニュース部門、ライブドア・ニュースとは無関係です。

パブリック・ジャーナリスト 小林亮一【 宮城県 】
この記事に関するお問い合わせ / PJ募集
PJ / 提供元一覧

前後の記事

PJオピニオンアクセスランキング

注目の情報