康生に“救いの手”が差し伸べられた。柔道日本男子の斉藤仁監督(47)は26日、北京五輪出場が絶望的となっている男子100キロ超級の井上康生(29=綜合警備保障)にわずかに代表入りの可能性があると明かした。欧州遠征から帰国した同監督は、棟田康幸(27=警視庁)、石井慧(21=国士舘大)、高井洋平(25=旭化成)の3人がリードしていると明言したが、国内選考2大会の内容次第で井上も再浮上する可能性が出てきた。
【柔道男子100キロ超級代表選考特集】
ドイツ国際までの欧州視察を終えて帰国した斉藤監督の第一声は「康生は最後まで戦うんだよな?」だった。フランス国際で惨敗した井上。その一方で高井がグルジア国際、石井がオーストリア国際、棟田がドイツ国際で優勝し、井上の代表入りは絶望的になっていた。しかし、斉藤監督は「勝負に100%はない」とわずかに可能性があることを口にした。
ただ、その道は非常に厳しいものだ。斉藤監督は北京出場の条件に(1)全日本選抜体重別(4月5、6日、福岡)、全日本選手権(同29日、東京)の国内選考2大会を圧倒的な強さで制すること(2)欧州各大会で優勝した3選手が国内大会で評価に値しない戦いぶりを見せた場合の2つを挙げた。
斉藤監督は、06年6月に右大胸筋腱断裂から復帰した井上を100キロ超級の柱としてきた。昨年2月のフランス国際優勝までその方針は変わらなかったが、同9月の世界選手権で5位に終わり、12月の嘉納杯では石井に完敗。さらに、今月のフランス国際でも惨敗したことで、代表争い4番手に落ちた。斉藤監督は「過去1年の実績で誰が外国人選手に通用するか、という選考の基本は変わりない」と井上以外の3選手が有力であることは認めたが、井上を完全に見捨ててはいなかった。
井上自身はフランス国際後も「可能性がある限り、戦うことが自分の柔道スタイル」と話し、すでに稽古を再開。3月2日には、全日本選手権予選の関東選手権(神奈川・相模原市)に出場する予定だ。かすかな希望をつなぎとめた井上の大逆転はあるのか。日本中の注目はその1点に集まっている。
≪石井 五輪に強い自信≫オーストリア国際で優勝したものの、右脇腹を痛めた石井が首脳陣とともに帰国した。チェコ国際を欠場したが、カザフスタン国際(3月15、16日、アルマトイ)には出場すると明言。「五輪に行く人生プランしか考えていない」と強い自信を見せ、過去に対戦がない棟田対策として、05年4月の選抜体重別で棟田を下している高橋宏明(旭化成)に教えを請うプランも明かした。
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