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【自動車産業ニュース】

供給トップのトヨタ車体 福祉車両で存在感

2008年3月1日

 トヨタ自動車の主要車体子会社、トヨタ車体が、高齢者や身障者向け「福祉車両」の隠れたトップメーカーとして存在感を高めている。乗り降りを楽にするシステムの開発から生産を手がけ、トヨタ車の福祉需要を支えている。主力の昇降シート(リフトアップシート)はトヨタ以外にも制御ユニットを供給しており、ことしは乗用車メーカー全社への販売が決まっている。(後藤隆行)

 ゆっくりと慎重に位置を確かめ、中堅従業員が昇降シートを助手席部分に組み付けていく。トヨタ車体刈谷工場(愛知県刈谷市)の福祉車両ライン。回転シートなども含め、取り扱い車種はクラウンからヴィッツまで幅広い。

 「シートの位置が微妙に異なり、現場の勘とコツが頼りです」と、特装・福祉製造部の石川勝幸部長は説明する。組み付けから検査を終えるまでに、一台あたり約十八分間もかけている。

 昇降シート車は電動で座席がドア側に回転した後、車外に下方スライドする。その細やかな動きを支えているのが、シートの下に備わる制御ユニットだ。トヨタ以外のメーカーにも提供するのは「購入意向が寄せられてくる」(特装・福祉営業部)ためで、技術への信頼は高い。今回、富士重工業が新型車への採用を決め、トヨタ車体は乗用車メーカー全社からの受注を実現した。

 日本自動車工業会(自工会)によると、バスを除く福祉車両の市場は近年、三万台後半で推移している。このうちトヨタ車体が架装やユニット供給をしているのは約二万台に上る。昇降シート車は車いすごと乗り込む車と並び、販売台数の四割強を占める。

 売上高一兆円を超す企業規模にあって、福祉車両の売り上げは七十億円程度。それでも力を入れるのは、車体メーカーとして社会的責任を果たす意識が強いからだ。トヨタの新車開発で、当初設計よりもドア開口部を広げるよう唱え、主張が通ったケースもある。

 高齢化社会が確実に進行する中、特装・福祉開発部の二宮徳根部長は「制御ユニットの小型化や低音化を進め、乗り降りしやすさを追求したい」と意気込む。将来は体の不自由な人が自ら運転する車両が増える可能性もあり、「運転補助装置の車種拡大を視野に入れたい」と話している。

 【福祉車両】 2006年度の販売台数(バス含む)は自工会調べで約4万台と、10年間で4倍以上伸びた。福祉施設の送迎など業務利用に加え、個人利用も増えている。車両は「介護式」と「自操式」に大きく分かれる。体の不自由な人を乗せる介護式では、回転・昇降シート車をはじめ、リフトやスロープによって車いすごと乗り込む「車いす移動車」などがある。体の不自由な人が自ら運転する自操式には、手だけの動きで運転できる補助装置付き車両などが市販されている。

 

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