事件・事故・裁判

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷
印刷

沖縄・女子中生暴行:米兵暴行、告訴取り下げ 少女に重圧「そっとしておいて」

 ◇住民にやるせなさ

 「そっとしておいて」。被害を訴えた中学3年の少女は、そう言って告訴を取り下げたという。沖縄県北谷(ちゃたん)町で米海兵隊タイロン・ハドナット2曹(38)が少女を暴行したとされる事件は、少女の告訴取り下げで突然「終結」した。容疑者が否認の場合、立証にかかる被害者側の負担は重い。沖縄では、重圧が掛かった少女を守れなかった悔しさと、繰り返される米兵による事件を罰することができないやるせなさが交錯した。

 ◆那覇地検

 「本日、被害者から告訴取り下げがあり、午後8時42分に海兵隊2曹を釈放した」

 29日午後9時45分、那覇地検の山舗(やましき)弥一郎検事正は報道陣を前に沈痛な面持ちで切り出した。取り下げ理由については「それを言うと被害者の気持ちに反する。コメントできない」と硬い表情のまま。記者からたたみかけられて初めて「そっとしておいてほしいということのようだ」。「告訴がなければ不起訴にするほかない」と語り、親告罪の捜査の難しさをにじませた。

 ◆県民らは

 米兵の釈放に対し、県民や自治体幹部らからは失望と落胆の声が聞かれた。米軍普天間飛行場の県内移設に反対するヘリ基地反対協代表委員、安次富(あしとみ)浩さん(61)は「週刊誌が少女にも非があるような書き方をしたし、警察の事情聴取につらくなったんだろう」と悔しさをにじませた。

 宜野湾市の高校教諭、宮城千恵さん(49)は「勇気を出して訴えた少女を守れなかったのが悔しい」。同市の伊波洋一市長(56)も「犯罪事実があるのに、親告罪という理由だけで裁けないのはやりきれない」と話した。

 ◆苦渋の捜査

 県警は終始ぶれない少女の証言に信ぴょう性があると判断。少女の心をケアするためにカウンセリングもしながら調べを進めた。

 一方、ハドナット2曹は「体は触ったが暴行はしていない」と基本的に強姦(ごうかん)容疑を否認。県警は、供述が少女の説明と食い違う部分もあり、車内の微物鑑定を進めるなど慎重に裏付けを進めた。

 しかし、公判に持ち込まれた場合、女子中学生が被害について法廷で自ら証言しなければならない場面も想定される。ある捜査幹部は公判を通じて少女が受ける「2次被害」について「耐えられるか心配だ」とも話していた。

 また、ネット上に少女を中傷する書き込みが登場するなど、事件は社会的に予想外の波紋を広げた。告訴取り下げにはこうした背景もあったとみられる。

 ◇再発防止に努力--高村外相

 米海兵隊員釈放の一報を受け、高村正彦外相は29日、国会内で記者団に「親告罪であり、日本は裁判権を行使することはない」と述べる一方で、「こういうことがあっていいかどうかということは全く別の話で、あってはいけない事件だ。米軍と共に再発防止策を引き続き努力してやる」と強調した。【上野央絵】

毎日新聞 2008年3月1日 東京朝刊

事件・事故・裁判 アーカイブ一覧

 


おすすめ情報