何ともやり切れぬ気持ちだ。告訴を取り下げた少女に、どんな心境の変化があったのか。事件後に浴びせられた心ない非難の声。あるいは、一部週刊誌による無節操な取材や報道。「なぜ、自分が責められねばならないのだろうか。やはり、自分が悪かったのか」。こんな思いでいるのなら、それは違うと、あらためて強く問い掛けたい。
那覇地検は29日夜、女子中学生暴行容疑で逮捕した在沖海兵隊の二等軍曹を不起訴処分にした。被害者が告訴を取り下げたからだという。その理由について、「(少女が)そっとしてほしい、と思っている」と説明する。恐らく、精神的に追い詰められた本人と家族が、やむにやまれぬ思いで決断したのだろう。
事件後、大きく問題化していく重圧に加え、公判ともなれば証言などで、さらに傷口を広げられるような仕打ちにも耐えなければならない。被害者や家族がそう心配するのも無理はなかろう。あえて言えば、自宅にまで押し掛ける週刊誌や、いわれなき中傷に行き場を失ったともいえる。まさに「被害少女に対する重大な人権侵害(セカンドレイプ)があった」(沖縄人権協会)ことになろう。
本人や家族の判断は、そういう意味からも理解できるし尊重しなければならない。少女の心のケアに十分配慮し、1日も早く立ち直ることのできるよう、関係者の手当てに期待したい。
いま、私たち大人がすべきことは、二度とこうした事件の起きない社会をつくることだろう。行政と民間が一体となっての再発防止策、子供たちへの教育、など。そのことが優先だ。決して、被害者の落ち度を言い募ることが、先ではない。それは、天につばするようなものだ。非難は自らに返ってくる。こうした社会を放置してきた大人としての自分に。
23日の県民大会は、予定通り開かれることが決まった。3日にも呼び掛け団体で話し合う。また、8日には大会に向けた実行委員会の結成総会を開いて、アピール文を発表する予定だ。賛否もあるが、開催は当然だろう。自民党も含めて、実行委は超党派での開催に向けて全力を挙げるべきだ。
告訴が取り下げられた、といって、犯罪の容疑が消えるわけでもない。事実、釈放された米兵は米軍に身柄を拘束されている。米側の厳しい処罰を願うばかりだ。
ボールは日米両政府に投げられた。事件の再発防止に向けて、実効性のある施策がどれだけ実行できるか。「綱紀粛正」や「兵士教育の徹底」など、その場しのぎの対策では何の解決にもならないことは、すでに証明ずみだろう。もちろん、米軍基地の県外移転が根本的な解決策には違いない。
(3/2 10:06)