「整理」という言葉を広辞苑で引くと?乱れた状態にあるものをととのえ、秩序正しくすること?不必要なものを取り除くこと?織物の最終加工工程…といった説明がなされている。新聞社では編集局に集まる膨大な記事、写真・画像を取捨選択し、見出しを付け、読者の手元に届く紙面に組み上げる部署を指す。
その長年慣れ親しんだ「整理部」の名が、きょうから「ニュース編集部」とリニューアルされた。着慣れない服のような違和感はあるものの、一般の人には整理という言葉より仕事内容が理解しやすいかもしれない。
ところで、ニュース編集の仕事で最も重要なのは価値判断だといわれる。では、判断の基準となるものは何か?
先日、部内の異動に伴う歓送迎会があり、定年を迎えた大先輩記者があいさつに立った。映画通のその人は巨匠・黒沢明監督が「人々の幸せを阻むものは何か」を、常に自らに問いかけながら映画を作っていたというエピソードとともに、新聞記者のあるべき姿勢を示してくれた。
ここ数年、価値観の多様化やネット情報の普及などで新聞を取り巻く環境は大きく変化。本紙も十七日から文字が大きくなるなど、より読みやすい紙面作りが求められている。しかし社会や情報技術がどれだけ変わっても、新聞報道の根底にあるのは小さな幸せを守り、それを侵すものを許さない姿勢であり、いつの時代も変わらないと信じる。先輩が残した言葉をかみしめながら、読者の視点に立った紙面作りに努めたい。
(ニュース編集部・高坂博士)