中国製ギョーザ中毒事件で、中国公安当局が中国側での殺虫剤混入の可能性を事実上否定したほか、日本の警察の対応を一方的に批判した。早期解決に向けた日中両国の捜査協力関係が悪化しかねず、残念としか言いようがない。
中国公安省の幹部が北京で記者会見した際、「人為的な個別事件」と断定したうえで原材料や生産、輸送過程での問題はなかったとし、検出された殺虫剤メタミドホスが「中国内で混入された可能性は極めて低い」と強調した。さらに日本の警察当局に物証の確認などを申し入れたものの、同意が得られないとして不満を表明した。
密封されたギョーザの袋内部からメタミドホスが検出されたことなどを根拠に、日本側が製造工程で混入したとみている点については、実験を行い「封印されたままでも袋内への混入があり得る結果を得た」と反論した。
これまで日中双方の警察当局は、事件の早期解決を図るため情報交換会議を開いたり、捜査協力の強化で合意するなど連携緊密化を進めてきた。事件が長期化すれば、両国の国民感情が悪化する恐れがあるからだ。
今回、中国が日本側の対応を批判したことに対し、警察庁の吉村博人長官は「看過できない部分がある」と不快感を示し、対立の様相を呈してきた。双方の捜査協力強化で事件の早期解決が期待されたが、逆に遠のきそうな懸念が生じた。
お互い冷静になるべきだが、特に中国側に自制を求めたい。原因究明が進まない中、公の場で被害者が出た国の対応を一方的に批判するのは問題である。少なくとも日本国民の理解は得られまい。
ギョーザ事件の発覚後、中国製の食品汚染は冷凍サバや肉まん、かつなどに広がり、検出される薬剤の種類も増えた。日本の消費者の不信感は強まっている。中国は一刻も早くそれを払しょくすることが国益につながるはずだ。事件の早期解決は日中共通の利益といえる。
捜査当局の対立が拡大すると、事件は政治問題に発展する可能性があり、日中関係に悪影響を及ぼしかねない。四月に予定されている胡錦濤国家主席の訪日や、夏の北京五輪にも水を差すだろう。
事件が双方の捜査協力のもとで解決できれば、両国の国民も結果に納得するはずだ。日中が互いに共通の利益を追求する「戦略的互恵関係」の確立にも寄与しよう。捜査当局の対立は無益である。あらためて意思疎通を図り、真相究明のために連携を強める必要がある。
プロ野球の根来泰周コミッショナー代行が、前巨人のジェレミー・パウエル投手の二重契約問題で断を下した。オリックス、ソフトバンク両球団の支配下選手登録申請を却下した上で、あらためてパウエル投手と契約合意した球団の登録申請を受け付けるとした。
本人はソフトバンクを希望しており、事実上入団が決まったといってよかろう。
巨人を自由契約になったパウエル投手の入団を、まず一月十一日にオリックスが発表した。だが、同月末になってソフトバンクが正式契約を交わしたと発表し、オリックスはパ・リーグに異議を申し立てた。オリックスはメディカルチェックを経た後に正式契約を結ぶ予定だった。ソフトバンクの方が有利な条件を提示したとみられている。
小池唯夫パ・リーグ会長は本人の意向を聞き、両球団とも協議した上で二月上旬、ソフトバンクに優先権があり、選手登録は六月二十三日以降とする勧告を出した。オリックスはコミッショナー代行に提訴する意向を示し、代行の判断が注目されていた。
両方白紙に戻し仕切り直しという判断は、現実的ではある。提出資料もソフトバンクの方に説得力があったようだが、一番得をしたのはパウエル投手本人ではないか。
オリックスは慣例通りの手順を踏んでいたのだが、ソフトバンクはブローカーとも称される人物を介して交渉し、逆転したという。今回の問題を通じ、外国人選手との契約に明確なルールがない不合理さが浮き彫りになった。
結果的に身勝手なくら替えをまかり通らせてしまった。代行はプロ野球実行委員会で契約方法について協議する考えを示している。球界を挙げての対処が急がれる。
(2008年3月1日掲載)