私は、現役、一浪、二浪、と、受験に負け続けた。そして、三浪目にやっと勝利した。
しかしその勝利さえ、実際は完全勝利ではない。受かったのは第二志望の学部である。
そういう意味では、私は受験における成功と失敗を経験しているわけだが、どちらかというと「負け」の要素が強いと思う。
もちろん、これは世間一般的に見ての「負け」、という意味であり、私の意識の中では、「勝ち負け」という概念はない。何はともあれ得た結果に対し、満足している。
だが、ここで重要なのは、いわゆる「勝ち」と「負け」を、私が知っている、という事実である。
受験関係の本の中には、「勝ち」を得た人の書籍は多数、発売されている。だが、実は受験生は、なにも「勝ち」の経験談だけを読みたいわけではない。「勝ち」を得た人の意見は参考にはなるが、物事の一側面だけしか浮き彫りにしていないように思う。
それよりも、「負け」た人は、なぜ負けたのか。これが重要なのである。
私は、確かに「勝ち」は知っている。だが、「負け」も知っている。だからこそ、私がここで述べる意見は、市販の書籍とは違った意味での参考になるはずである。私自身、浪人していた頃は、そのような人の意見を聞きたいと何度も思った。だが、そのような機会は得られなかった。
だから、かつて受験していた頃の私に向けて、出来得ればタイムマシンでこの一筆を届けてみたい願望が、私にはある。それが叶わないならせめて、今、かつての私と同じ境遇にいる受験生の方々に、この一筆を届けたいのである。
どうかこの先も、「勝ち」と「負け」を知っている者の意見として、読み進め、参考にしてもらいたいと思う。