【サイパン宮川裕章】81年のロス銃撃事件を巡りサイパンで身柄拘束中の元輸入雑貨販売会社社長、三浦和義容疑者(60)の移送手続きが、長期化する様相を見せている。同じ行為の刑事責任を繰り返し追及することを禁じる「一事不再理」を根拠に、三浦元社長側が移送の不当性を訴える公聴会が開かれる可能性が高いからだ。2月22日の逮捕から1週間。裁判所は移送の可否を判断する手続きを3日に始める。
三浦元社長がロサンゼルスへの移送に同意しなかった場合は、元社長側と検察側の主張を聴く公聴会が開かれる。(1)犯罪があったか(2)容疑者が本人か(3)事件当時カリフォルニアにいたか(4)逃亡状態にあるか−−の4点が満たされれば、裁判所は移送を命じる。
しかし、元カリフォルニア州検察官でサイパン島の弁護士、ロバート・オッコーナー氏は「『一事不再理』を武器にすることも可能だ」と指摘する。
もともと、カリフォルニア州の刑法には「自州や他州、他国で判決が出ている場合は、同じ罪で起訴できない」との規定があった。その後、アーノルド・シュワルツェネッガー知事が「他国の判決」には一事不再理が適用されないとする改正法に署名、05年1月に施行されたという。
日本で三浦元社長の無罪が確定したのは03年。この時点では元社長をカリフォルニアで起訴することは出来なかった。オッコナー氏は「05年改正法が過去にさかのぼって適用されるかは議論の余地がある」と解説する。
仮に、裁判所から移送命令が出ても、元社長は上級裁判所に上告し、再び移送の不当性を訴えることが可能だ。身柄拘束期間は45日間だが、裁判が続いている限り無期限に延長されるという。
これに対し、ロス市警のリック・ジャクソン捜査官は「弁護士を含めた地検、州政府との協議の結果、一事不再理については問題なしと判断した」と、改正法は過去にさかのぼって適用されると説明。サイパンの検察官も「私たちに与えられた課題は非常に単純だ」と述べ、移送の実現に自信をみせている。
◇一事不再理
有罪や無罪が確定した行為について、再び刑事責任を追及しないという刑事裁判の原則。外国の判決は適用対象外としている国もある。日本も国内判決だけを対象としているが、外国で既に服役した被告を有罪にする場合は、刑の執行を減軽したり免除したりする。
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