月刊 現代農業
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巻頭特集

米粉で米価格下落阻止

中米の米粉利用が米価下落を防ぐ

今野茂樹

クズ米の主食販売が米価を下げている

 昭和40年代の水準にまで急激な下落を続ける米価。その要因として、昨年にくらべて膨らんだ過剰米が問題視されているが、見落とされがちな要因があることも忘れてはならない。米価の下落は単に消費者の米離れ、低価格米志向だけにあるのではなく、つねに新米を下まわる値段で供給され、消費者にとっては価値の判別が困難なクズ米の主食用転売と、政府備蓄米の原価を割った市場入札も影響していると私は考えている。

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 クズ米、すなわち本来は「農産物検査法の品位基準に満たない低品位米」が主食用に転売されることは、低価格米を求める声に応えるものとしてこれまで問題視されなかった。だが、クズ米を原料とした低品位米であることを消費者に知らせずに消費させることは「ごまかし」ではないか。

大きなふるい網から落ちた米が低価格米に化ける

 農家や農業者団体は、産地間競争の中で高品位米の生産に努めようと、ふるい網を大きくしてきた。その結果として発生するクズ米は、主食用にならないものとして格安で売買される。だが、この米の中には従来なら主食用にしていた米も含まれているので、買い取った業者はこれを再選別することで「中米」と呼ばれる安価な米を、主食用米として販売可能になる。

 つまり、生産者の努力が低価格米の供給源を作り出し、「自分の米と価格競争」する事態になっていた。消費者にとっては、クズ米を由来とした低価格米と高品位な一等米を店頭で判別することは困難であり、食味の劣る米を購入してしまう不利益がある。

中米を米粉に、米粉パンに!

 年間20万〜30万t発生するといわれる中米の流通が米価に及ぼす影響は、けっして無視できるものではない。そこで、不透明な主食用転売を見直し、中米を利用した米粉パンを製造することを提案したい。

 米粉パンは小麦パンに比べて栄養価が高く、逆にカロリーは低く、腹もちがよいなどの利点がある。しかし価格が高いことで小麦パンに対して競争力を持たず、本格的な消費拡大に至っていないのが現状だ。ある製パン業者は、小麦粉1kgあたり100円に対し、米粉の価格は四倍と指摘している。

 だが私は、米粉1kg180円以内で供給可能との見通しを持っている。その内訳は、中米の価格が1kg当たり100円、精米費が同20円、製粉費は同60円と見積もる。また、先ごろ、山崎製パンが製品の値上げを発表したように、小麦の価格はバイオエタノールの影響で上昇しており、一方の中米価格は下落して、その差は縮んでいる。現時点でも「110円の小麦粉」vs「180円の米粉」である。

 製粉コストは大量処理でさらに小さくできるだろう。製造ラインを米粉パン専用ラインとすれば、小麦アレルギーをもつ方にも働きかけられるなど、米粉パンの持つ利点を前面に出すことも可能だ。

 もし、これまで米価に悪影響を及ぼしていたクズ米が、食パンに替わって消費が伸びれば、食料自給率の向上にもつながるなど、一石何鳥もの大きなメリットになるのではないだろうか。全農などの中米を大量に集荷・販売する団体が、パールライス等の工場内に製粉工場を作り、それを国策として進めることをぜひご検討いただきたい。

消費者が「低品質米」を判別できる表示が必要だ

 また、クズ米の主食用転売については、「ごまかし」の隠れ蓑になってきたのが「複数原料米(ブレンド米)」の表示制度であり、合わせて見直しを行なうべきだ。

 現行の「玄米及び精米品質表示基準の規定」では、複数原料米に「国内産100%」のように事実を書けばよいことになっていて、詳しい内訳の表示は任意。省略表示でも構わない。したがって、なんという品種で、産地はどこか、何年に収穫したか、そしてクズ米を原料とした低品位米であるかどうかもまったくわからないことになる。

 平成14年の農水省「米の表示等についての検討会」では、「食糧法に基づく品位基準に満たない精米を販売してもなんら指導監督を行ない得ない状況となっていることから、消費者に対してこれらを判別する手段を提供する必要がある」ことを認めている。そして、「これらは、小売段階でのスポット的な価格の低下をもたらすとともに、その低価格広告等を通じて、間接的に需給緩和のもとでの価格下落を増幅する作用をもたらすものであり、単に低品質米を購入した消費者に不利益になるばかりでなく、多くの生産者にとっても全体の玄米価格水準の低下という不利益をもたらしている可能性がある」と述べている。

 ぜひ、実効のある対策を打ち出していただきたい。

(秋田県南秋田郡大潟村西)

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