◎議員の請負制限条項 改革意欲のリトマス試験紙
石川県発注工事をめぐる談合事件を受け、県議会で持ち上がった県との請負制限条項の
見直しは、現職議長が辞任を余儀なくされた事件の影響の大きさを考えれば何も変えないというわけにはいかないだろう。
議員本人や身内が経営する企業が自治体の仕事を請け負う際の規制の在り方は、関係議
員にとっては「自縄自縛」のルールといえ、議会の合意形成が困難を極めるのは過去の経緯からも明らかである。見方を変えれば、議員の改革意欲が真正面から問われるリトマス試験紙と言えるかもしれない。
県議の請負制限は政治倫理要綱の運用規程で定められ、配偶者や親、子らが代表取締役
に就く企業や、県議が実質的に経営していると認められる企業は、県との請負契約額を全受注額の50%以下に制限している。
和田内幸三県議の妻が経営する会社の役員が談合罪で起訴され、同氏が議長を辞任した
のをきっかけに見直し論が急浮上した。だが、要綱制定時に論議を重ねたとして消極論が出る一方、他県と比較して妥当性を見極めるとの声もあり、会派に持ち帰って検討することになった。
現行の運用規程を決めた際には「議員と三親等以内の親族は請負契約の25%を超える
企業の役員に就かない」との厳しい案も出たが、会派間の調整などで後退した経緯がある。議員定数や政務調査費の対応をみても分かる通り、議員本人が直接かかわる問題ではどうしても腰が重くなりがちだ。襟を正さざるを得ない重大な不祥事でもない限り、請負制限の強化に踏み出さないのは全国的な傾向と言える。
各議会でも対応が分かれ、要綱や条例化、内容も義務付けや努力目標などさまざまであ
る。そうした中で、隣の福井県議会では農林水産省発注工事の談合事件を受け、都道府県では最も厳しい政治倫理条例が昨年七月に可決された。本人や二親等以内の親族が役員を務める企業だけでなく、議員が資本金の三分の一を出資したり、顧問料などの報酬を受け取る企業でも契約辞退を求めている。
議員が自らの地位を利用して自己の利益を図ることに対する住民側の視線はますます厳
しくなっている。石川県議会はそのことを忘れずに見直し作業を進めてほしい。
◎国の出先機関改革 分権と表裏一体の認識で
政府の経済財政諮問会議が、国の出先機関を含めた政府機能の見直し計画を新年度に策
定することを決めた。出先機関の改革は地方分権と表裏一体の問題であり、地方側が望む第二期分権改革の試金石と言える。
国と地方の役割分担と出先機関の在り方について現在、政府の地方分権改革推進委員会
が見直し作業を進めているが、権限の地方移譲に消極的な中央省庁と鋭く対立している。経財諮問会議と分権推進委は福田内閣の二つの改革エンジンであり、分権と出先機関改革の方向性について呼吸を合わせ、そろって福田康夫首相の背中を押してもらいたい。
都道府県や広域ブロックごとに置かれる国の出先機関は、省庁再編から取り残された形
になっており、たとえば国土交通省では地方整備局と地方運輸局が旧省庁体制のまま存在している。出先機関の業務には自治体業務と重なるものが少なくなく、行政改革と地方分権の両面から出先機関の見直しは必至である。
全国知事会は先ごろ、業務の地方移譲などによって、見直し対象の三千四百余の出先機
関のうち二千七百七十機関を統廃合するよう提言している。全国的な規模・視点から業務を行う必要があるものを除いて統廃合を行うべきという主張で、業務の移譲に併せて地方に移籍する国家公務員の人数を約五万五千人とする試算も提示している。分権推進委は、この知事会提言を大いに参考にしてもらいたい。
福田首相は地方分権の推進を強調しているが、熱意はさほど強く伝わってこない。「地
方再生」を内閣の最重要課題に位置づけるのであれば、分権改革にもっと積極的に取り組む必要があるのではないか。
福田首相の意向を受けて、政府の地域活性化統合本部は、出先機関を拠点にして地方再
生戦略の取りまとめや相談業務を行う「地方連絡室」の設置を決めている。地域の活性化に力を入れる福田首相の意欲の表われといえるが、地方連絡室の設置が出先機関の温存・強化につながるのではないかという心配もささやかれている。地方再生という大義名分の下で、分権改革の流れが滞るようなことがないよう、あえて指摘しておきたい。