ニュース[WSJ] Vistaシステム要件引き下げはIntelのため――内部メールで明らかにIntelの915チップセットがVistaの一部機能を動かせないと知りながら、MicrosoftはVistaのシステム要件を引き下げて、このチップセットを「Vista Capable」にしていた。2008年02月29日 18時11分 更新
ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル) Windows Vistaの最小システム要件を引き下げたのは誤りだった――Microsoftのある幹部は昨年、このように語った。この決定は、Intelが四半期業績目標を達成できるようにするためのものだったことが、今週公開されたMicrosoft内部関係者の電子メールにより明らかになった。 これらの電子メールからは、Microsoft幹部とハードウェアパートナーがWindows Vistaの発売準備にあたって、どのように技術的な不具合やその他の問題に対処していたのかがかいま見える。これらメールは、MicrosoftのVistaのマーケティングプログラムが消費者を誤解させたとして起こされた集団訴訟で公開された。 その中でMicrosoft幹部らは、実際はできないのに、特定のPCが技術的にWindows Vistaを実行できるとそれとなく示すブランディングプログラムのやり方について、同社のケビン・ターナーCOO(最高執行責任者)にどう説明するかを考えていたようだ。またメールからは、技術的な問題を経験したある取締役からの苦情への対処に苦労していた様子もうかがえる。 幹部らはメールの中で、Intelのあるグラフィックス統合型チップセットを搭載したPCでは、Vistaの一部機能を動かせないことを認めていた。Microsoftは問題のIntel 915チップセットを、2006年に購入したPCでも2007年初めに発売されるVistaを実行できると保証する「Windows Vista Capable」プログラムに含めていた。 2007年2月26日付のメールで、Microsoftのジェネラルマネジャー、ジョン・カークマン氏は、「最初のグラフィックス要件を変更したのはわれわれのミスだった」と述べている。「結局、われわれはIntelの四半期決算のために要件を引き下げた。それで彼らは915のグラフィックス機能を組み込んだマザーボードを販売し続けることができた」とも付け加えている。 MicrosoftがIntelとの間に抱えていた問題は、過去2〜3年の電子メールに現れている。2006年2月1日付のメールでは、Microsoftの上級ディレクター、マイク・イバラ氏が、「われわれはIntelに降参しつつある」と記し、その後でHewlett-Packard(HP)などのPCメーカーはMicrosoftを支持しているが、Microsoftは「Intelがわれわれの消費者体験を動かすのを許している」と不満を訴えている。 Intelは同社の業績に関する発言に異を唱えたが、Microsoftとの非公開のやり取りについてはコメントしないとしている。同社広報担当のチャック・マロイ氏は、カークマン氏は「Intelのチップセット、マザーボードなどの製品に関する内部の財務予測を知る立場にない」と主張した。 Microsoftの広報担当者は、係争中の訴訟であるため、カークマン氏とイバラ氏はコメントしないと語った。この担当者は、Microsoftが915チップセットをVista Capableプログラムに含めたのは、「915チップセットでVistaのβテストが成功したことと、このチップセットが市場に広く出回っていること」が理由だと付け加えた。915チップセットを搭載したコンピュータは、Vista Home Basicに「アップグレードできたし、アップグレード可能だ」という。 さらにMicrosoftは声明文で、公開された電子メールは、同社幹部がパートナーや消費者のために、どうやってマーケティングプログラムを改善しようとしていたかを示すものだと述べている。「このような意見交換を奨励したいと思っている。最終的には、両方の目的を達成できたと確信している」と同社は声明文で述べている。 これら電子メールの内容は、Seattle Post-Intelligencerなどが報じた。 Microsoftは、2007年1月のVistaリリース前、2006年後半のPC売り上げを増やすためにVista Capableプログラムを利用した。同社とPCメーカーは当時、Vistaリリースが迫っているという理由で、消費者が2006年の年末商戦期にPCを買い控えるのではないかと心配していた。このプログラムでは、Vistaを実行するのに必要な技術要件を満たしたPCにラベルを付けていた。同OSは旧バージョンよりも多くのメモリや高速なプロセッサが必要になる。 スティーブ・バルマーCEOあてのメールでは、Microsoft取締役のジョン・シャーリー氏が、手持ちのエプソンのハイエンドプリンタと2台のスキャナを動かすのに必要なドライバがVistaに含まれていなかったため、PCをアップグレードしなかったと述べている。「これだけ開発に長くかかっている製品に、こんなドライバの不足が生じるなど理解できない」とシャーリー氏は記している。 2007年3月に起こされた集団訴訟では、2人の消費者が、Vistaを動かせると称するVista Capableロゴが付いたPCを購入したのに、Vistaを動かすための適切な技術が搭載されていなかったと申し立てている。 Microsoftはこの主張に異議を唱えている。「当社がさまざまな価格帯のコンピュータを購入する顧客のニーズに合わせて、異なるバージョンのWindows Vistaを提供していることが示されると確信している」と同社は声明文で述べている。 [Robert A. Guth,The Wall Street Journal] この記事はダウ・ジョーンズとの契約の下でアイティメディアが翻訳したものです。翻訳責任はアイティメディアにあります。 Copyright (C) 2008 Dow Jones & Co. Inc. All rights reserved. 新着記事
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