仙台筋弛緩剤点滴混入事件 2000.2.2 発生?


  昨年7月11日の初公判から週2回ペースの集中審理が続けられた検察側立証は、9月20日でほぼ終わった。地裁はその後約2カ月間、証人尋問をせず、事実上の休廷状態になっていた。この間、弁護側が求めた北陵クリニックの検証などがあった。
 
2002.11.22

毎日新聞

事 件
 宮城県仙台市の北陵クリニックで、患者が急変死をした。原因については、男性準看護師の故意による殺人と、病院側の怠慢隠しのための事件でっち上げの両端で争われている

経 緯

・2000.2.2
 入院中の女児が一時重態

・2000.10.31
 入院中の少女が重態

・2000.11.13
 入院中の男児が一時重態

・2000.11.24
 入院中の老女が死亡
 入院中の男性が軽傷を負う

・2001.1.7
 入院患者に対する殺人未遂の容疑で
 当時北陵クリニックで働いていた男性準看護師を逮捕

・2001.1.8
 男性準看護師、容疑を認める

・2001.1.10
 北陵クリニックの家宅捜索で、準看護師から点滴を受け
 容態が急変したとされる患者の血液から筋弛緩剤の成分が
 検出された。

・2001.1.13
 以前に北陵クリニックで変死した患者の届けを出していない
 事が発覚。

・2001.1.23
拘置理由開示
 仙台簡易裁判所(上原昭吾裁判官)
 男性準看護師、容疑を否認。無実を主張。

・2001.1.25
 仙台簡易裁判所(渡部元也裁判官)
 男性準間後師弁護団からの拘置取り消し請求を却下

・2001.1.26
 仙台地裁(山田公一裁判長)
 拘置取り消し請求却下に対する決定を不服とした準抗告を棄却

 老女に対する筋弛緩剤混入での殺害容疑で男性準看護師を再逮捕

・2001.1.28
 老女に対する殺害容疑で男性準看護師を仙台地裁に送検

・2001.1.29
 男性準看護師立会いでの現場検証

・2001.2.2
 点滴後急変し重態となった少女の血液から筋弛緩剤が検出された

・2001.2.4
 男性準看護師と弁護団の接見を盗撮していた可能性があると
 仙台拘置所と仙台地検に調査を要請

・2001.2.5
 仙台拘置所は、盗撮について否定

・2001.2.16
拘置理由開示
 仙台地裁(菱山泰男裁判長)
 男性準看護師、改めて容疑を否認。無実を主張

・2001.2.17
 幼女に対する筋弛緩剤混入での殺人未遂容疑で男性準看護師を再逮捕

・2001.3.4
 点滴後に容態が急変した男性患者に使用した医療廃棄物から
 本来使用されるはずのない薬物を検出

・2001.3.6
拘置理由開示  仙台地裁(菱山泰男裁判長)
 男性準看護師、再度容疑を否認。無実を主張。

・2001.3.9
 中年男性に対する筋弛緩剤混入での殺人未遂容疑で男性準看護師を再逮捕

・2001.2.10
 北陵クリニック閉院

・2001.3.22
 北陵クリニック元入院患者の遺族が病院側に損害賠償調停を申し立て

・2001.3.27
拘置理由開示
 仙台地裁(菱山泰男裁判長)
 男性準看護師、容疑を否認。無実を主張。

・2001.4.18
拘置理由開示
 仙台地裁(鈴木陽一裁判長)
 男性準看護師、容疑を否認。無実を主張。

・2001.7.11
 初公判 仙台地裁(畑中英明裁判長)
 被告側は冤罪を主張

・2001.7.24
 第2回公判 仙台地裁(畑中英明裁判長)
 検察側の証拠書類を朗読

・2001.9.6
 第5回公判 仙台地裁(畑中英明裁判長)
 県警捜査の課長補佐による主尋問

・第6回公判 仙台地裁(畑中英明裁判長)
 初動捜査に関わった捜査員への主尋問

・2001.9.25
 拘置所や刑務所の接見室にあった監視用のマジックミラーが撤去される

・2001.10.12
 第14回公判 仙台地裁(畑中英明裁判長)
 男性準看護師の本人質問

・2001.11.19
 第23回公判 仙台地裁(畑中英明裁判長)
 証拠を鑑定した大阪府県警科学捜査研究所職員の証言

・2001.12.13
 第27回公判 仙台地裁(畑中英明裁判長)
 男性準看護師逮捕のきっかけとなった元北陵クリニックの元副院長が出廷

・2002.3.8
 第44回公判 仙台地裁(畑中英明裁判長)
 一時重態となった幼女の父親が証人出廷

・2002.7.29
 重態となった少女の両親が男性準看護師に対して損害賠償を請求。

・2002.10.1
重態となった少女の両親が求めた損害賠償請求に対する
 第1回口頭弁論 仙台地裁(信濃孝一裁判長)
 被告側は請求棄却を求め、争う姿勢

・2002.11.8
 初検証 仙台地裁(畑中英明裁判長)

・2002.11.22
 公判 仙台地裁(畑中英明裁判長)
 被告弁護側の反証開始

・2003.11.28
 論告求刑 仙台地裁(畑中英明裁判長)
 検察は守大輔に無期懲役を求刑


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 ○ その他の 速報ニュース ○

守被告に無期懲役求刑 死者数など考慮

 仙台市の北陵クリニック(閉院)で00年に起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で、患者への殺人罪1件、殺人未遂罪4件に問われた准看護師、守(もり)大助被告(32)に対する論告求刑公判(3日目)が28日、仙台地裁(畑中英明裁判長)で開かれ、検察側は無期懲役を求刑した。

 検察側は動機について「救急の緊張した雰囲気を楽しむとともに優越感に浸り、日ごろ満たされない自己顕示欲を解消するためだった」と指摘した。そのうえで「医療従事者という仮面をかぶった特異で凶悪な事件だ」と述べた。ただし、起訴された5事件で死者は1人にとどまることなども考慮し、無期懲役を選択したとみられる。

 3日間にわたる論告のうち19、25日の2回で、検察側は各患者の血清や点滴の残りから筋弛緩剤成分を検出した鑑定の妥当性を強調し「患者3人の容体急変は被告の仕業だ」と指摘した。最終日の28日は、唯一死亡した下山雪子さん(当時89歳)と45歳男性の容体急変も被告の行為だと詳述した後、求刑に入った。

 被告側は患者に筋弛緩剤が投与されたこと自体を争い「容体急変は病変などで、事件はねつ造」と無実を主張している。
 
2003.11.28

毎日新聞




「事件はでっちあげ」弁護側反証始まる 仙台地裁

 仙台市の北陵クリニック(閉院)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で殺人罪などに問われている准看護師、守(もり)大助被告(31)の公判が22日、仙台地裁(畑中英明裁判長)であり、「医療過誤を隠すために事件が作り上げられた」と主張する弁護側の反証が始まった。被告の交際相手で元同僚の看護師が出廷し、被告が証拠隠滅したとされる00年12月4日のことや北陵クリニックの状況を証言した。
 弁護側は反証の証人数に最大で15人を予定。元同僚のほか、筋弛緩剤に詳しい麻酔学の専門医ら医療関係者が出廷する。専門医の証人尋問は年明けになる見込み。守被告への尋問もある予定だ。

 昨年7月11日の初公判から週2回ペースの集中審理が続けられた検察側立証は、9月20日でほぼ終わった。地裁はその後約2カ月間、証人尋問をせず、事実上の休廷状態になっていた。この間、弁護側が求めた北陵クリニックの検証などがあった。
 
2002.11.22

毎日新聞




現場となった病院で初検証 仙台地裁

 仙台市で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で殺人罪などに問われている准看護師、守(もり)大助被告(31)の公判で、仙台地裁(畑中英明裁判長)は8日、現場となった同市泉区の北陵クリニック(閉院)を初めて検証した。
 検証は、00年12月4日夜に筋弛緩剤の空アンプルが入った箱を持ち出そうとした守被告を捜査員が発見したとされる職員通用口付近▽ナースステーションから病室への通路▽薬品庫の人の出入り状況――などで行われた。守被告は立会わなかった。

 弁護側が「図面だけでは実際の状況を把握しにくい」と求め、採用された。
 
2002.11.8

毎日新聞




被告のクリニック元職員が争う姿勢 仙台地裁

 仙台市泉区の病院「北陵クリニック」(廃院)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件の被害者とされる同区の少女(13)と両親が、同クリニック元職員の准看護師、守(もり)大助被告(31)=殺人罪などで公判中=に計5000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が1日、仙台地裁(信濃孝一裁判長)であった。守被告側は請求棄却を求め、全面的に争う姿勢をみせた。
 守被告側は答弁書で「少女に筋弛緩剤が投与された事実も、守被告が筋弛緩剤を投与した事実もない」と主張した。少女は00年10月31日、点滴のさなかに容体が急変、脳障害で現在も意識不明の状態。
 
2002.10.1

毎日新聞




被害者の少女 元准看護師に損害賠償請求

 仙台市泉区の北陵クリニック(3月閉鎖)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件の被害者とされる同区の少女(13)と両親が29日、故意の筋弛緩剤投与で重い後遺症が残ったとして、同クリニック元職員の准看護師、守(もり)大助被告(31)=殺人罪などで公判中=を相手取り、計5000万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こした。同事件で、守被告を相手取る民事提訴は初めて。
 訴えによると、腹痛で来院した少女は00年10月31日、同クリニックでの点滴の最中に容体が急変。酸素不足で脳に重い障害が残り、現在も意識不明。少女側は、守被告の殺人未遂を主張し、「点滴チューブに接続された三方活栓(点滴管途中の薬剤投入口)から筋弛緩剤を注入した」と主張している。

 少女側は昨年2月、同クリニックなどを相手取り、約1億8000万円の損害賠償を求めて提訴し係争中。守被告は77回を数える同地裁の公判で無罪を主張しているが、少女側は「刑事事件の推移をみて、被告の関与の疑いが強まった」と損害賠償を起こしたという。

 守被告の弁護団の一人は「訴状を見ていないのでコメントはできないが、(守被告の)事件に事件性はなく『事件は幻』という従前の主張は変わらない」と話している。 
 
2002.7.29

毎日新聞




鑑定の信用性で対立 初公判から1年

 仙台市の北稜クリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で、5件の殺人・殺人未遂の罪に問われた准看護師、守大助被告(31)に対する仙台地裁(畑中英明裁判長)の裁判は、11日で初公判から1年を迎える。最大の争点は、点滴や被害者の血液などから筋弛緩剤が検出されたとされる鑑定データだ。検察側は「事件の動かぬ証拠」と主張し、無罪を訴える弁護側も「疑問だらけで、ねつ造の疑いが強い」と、これを反証の軸に据える。有力物証がほとんどない中、鑑定データの信用性をめぐり、激しく対立している。 

■鑑定手法は正当か

 「あたかも、検察が証拠を改ざんしたような主張がある。検察に対する挑戦だ」。昨年12月の第28回公判。検察官は強い口調で、弁護側を非難した。

 筋弛緩剤を点滴に混ぜて意識のある患者に投与することは、実際の医療行為でも行われない。このため、被害者の容体の変化を、医学的にどう説明付けるかがポイントになるが、肝心の被害者から採取した血液や尿を、鑑定に当たった大阪府警科学捜査研究所は、使い切ってしまった。これが弁護側の不信の根本にある。

 鑑定した技官は、大阪の愛犬家連続殺人事件の鑑定も手掛けている。証人尋問では「筋弛緩剤以外の毒物の可能性を排除するために、試料をできるだけ活用した。目的成分以外の分析は当然で、再鑑定分を残すより今の分析の方が大事」と正当性を主張した。

 しかし、弁護側は「科学者としてあるまじき行為で、再鑑定をさせないために消費したとしか思えない」と批判し、データをでっちあげた可能性にまで踏み込んでいる。

 鑑定結果を検証した日本医大の坂本篤裕助教授(麻酔学)も「証拠提出された鑑定書は、すべての測定値が明らかにされていないうえ、濃度の値がきれいにそろい過ぎているように見えるなど、不可解な点が多い。それなのに、再鑑定できる試料が残されていないのでは、科学的な説得力に欠けると言わざるを得ない」と疑問を投げ掛ける。

■尿データの読み方

 五つの事件で保存されていたのは、血液が3人分、尿が1人分、点滴が3人分。弁護側が「鑑定結果は科学的にあり得ない」と指摘しているのが、当時11歳の被害女児の尿のデータだ。急変直後の血液から検出された筋弛緩剤の濃度は、1ミリリットル中25・9ナノグラム(ナノは10億分の1)。鑑定では1週間後に採取された尿にも、20・8ナノグラムの濃度で含まれていた。

 筋弛緩剤の持続時間は20〜30分で、1日で大半が分解されるといわれる。弁護側は「通常は2日以内に排せつされるはず」と主張し、尿のデータは(1)事件後も投与を続けた(2)採取した尿に筋弛緩剤を加えた(3)データをねつ造した――可能性しかないと指摘する。

 一方、検察側証人の橋本保彦・東北大名誉教授(麻酔学)は「投与から12日後で検出されたラットの実験結果もあり、人間でも1週間後に検出される可能性はある」と証言し、鑑定結果の合理性を認めている。

 筋弛緩剤の持続時間は、患者によって大きな差があるとされ、体質や急変時の症状などの詳細な検討も必要になる。

■「凶器」になるか

 筋弛緩剤は分解が早く、通常は静脈に直接注射するため、ゆっくり注入される点滴溶剤に筋弛緩剤を混ぜた場合、呼吸を停止させるまでの「凶器」になり得るかも、争点になっている。

 橋本名誉教授は、点滴の速度や濃度を考慮する必要はあるとしながら「点滴投与でも同じ効果が出る」と、検察側の主張に沿う証言をした。

 橋本名誉教授によると、体重1キロ当たり0・017ミリグラムの投与で筋肉の50%が動かせなくなり、人工呼吸器がないと危険になる。体重40キロの子供なら、1アンプル(4ミリグラム)を混ぜただけで、点滴の途中で呼吸ができなくなる計算だ。

 一方、弁護側は「点滴では投与するそばから分解され、呼吸不全には至らない」と反論する。

 この点について、検察側は、守被告が使った筋弛緩剤の量を明確に示さず、速度や濃度による効果の違いも説明していない。弁護側も、現段階では主張を裏付けるデータを示しておらず、理論が先行する「科学論争」の色合いが強い。

 昨年7月11日に始まった裁判は週2回の集中審理を進め、3年以内の判決を目指す。検察側は筋弛緩剤の殺傷能力など、5件に共通する「総論」の立証を3月初めで終え、現在は個別事件の詳細な立証を続ける。弁護側は総論部分の反証として、被告人質問のほか、交際相手の同僚看護師や、筋弛緩剤に詳しい医師らを証人に立てる意向だ。

◇個人差大きい

 唐沢秀治・船橋市立医療センター脳神経外科部長の話 アルコールに強い人と弱い人がいるのと同じで、筋弛緩剤の効果は個人差が大きい。腎臓や肝臓に障害があれば分解は遅れ、投与1週間後に排せつされるケースもあると考えていい。集中治療の現場では、静脈注射後に効果を長引かせるため点滴を使う「持続投与」が行われており、「点滴だから効果は出ない」という考えは正しくない。ただし、点滴の速度が極端に遅ければ、呼吸不全には至らない可能性はある。

◇数値に疑問

 武田純三・慶応大医学部教授(麻酔学)の話 鑑定で検出された筋肉弛緩剤の量は非常に微少で、従来の測定機器では、誤差の範囲に入る程度の濃度と言える。それを踏まえたうえで、測定結果が正確だとすると、尿の鑑定結果は常識的には首をかしげたくなる数値だ。筋弛緩剤の腎臓からの排せつは、患者が肝障害を負っていたとしても、せいぜい1〜2日だと思う。もとの点滴溶剤にアンプルを20〜30本入れたり、追加投与を続けたりしないと、この数値には近くならないのではないか。

■起訴された5事件の物証と争点■

被害者   急変時期   状態   物証    検察側の主張  弁護側の主張

1歳女児  2月2日   一時重体 血液    点滴の管に注入 てんかん発作

11歳女児 10月31日 重体   血液、尿  調合の際に混入 自家中毒

4歳男児  11月13日 一時重体 血液、点滴 あらかじめ混入 てんかん発作など

89歳女性 11月24日 死亡   点滴    あらかじめ混入 心筋こうそく

45歳男性 11月24日 軽症   点滴    あらかじめ混入 抗生剤の副作用
※年齢は当時、急変時期はいずれも00年
 
2002.7.7

毎日新聞




混入点滴事件被害者の父証言「被告の不審行為目撃」

 仙台市の北陵クリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で、殺人罪などに問われている准看護士、守(もり)大助被告(30)の第44回公判が8日、仙台地裁(畑中英明裁判長)であり、殺人未遂事件の被害者とされる女児の父親が「守被告が点滴の管の所に、注射器で何か液体を入れているのを見た。その後、娘の容体は急変した」と証言した。被害者の家族の証人出廷は初めて。
 検察側によると、女児(当時1歳)は00年2月2日午後3時すぎ、ぜんそく性気管支炎などの診断を受け同クリニックに入院。看護婦の手による点滴を受けていたが、午後5時20分すぎに突然、呼吸停止した。人工呼吸などの救命措置で、転院先で一命を取りとめ、後に回復した。

 父親は「守被告は点滴のコックのレバーを回し、注射器の液の半分ぐらいを押し込んだ。何の注射をするか説明はなかった。間違ったことをするはずがないと思ったので、おかしいとは思わなかった」と証言した。

 これに対し、弁護側は公判後、「守被告の記憶とは全く違う証言だ。被告は看護婦の指示で注射器を持ってきて、看護婦に渡しただけだ」と反論した。
 
2002.3.8

毎日新聞




被告の関与を疑った元副院長が出廷 仙台

 仙台市の北陵クリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で、殺人罪などに問われている守(もり)大助被告(30)に対する第27回公判が13日、仙台地裁(畑中英明裁判長)で開かれ、守被告の関与を疑い、宮城県警に相談した半田郁子・元副院長(48)が初めて出廷した。
 半田元副院長は、昨年10月に当時11歳の少女の容体が急変して意識不明となったことについて「医学的な説明がつかなかったので、職員がかかわったのではないかと深い不安感を持った」と証言。このため、同11月に死亡した下山雪子さん(当時85歳)の急変時には、病室に駆けつけ「何か毒物が入っているかもしれないと思って、使用された点滴ボトルを保管した」などと証言した。
 
2001.12.13

毎日新聞




「試料から検出」科捜研職員証言 仙台地裁

 仙台市の北陵クリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で殺人罪などに問われている元職員の准看護士、守(もり)大助被告(30)の第23回公判が19日、仙台地裁(畑中英明裁判長)で開かれ、被害者の血液などを鑑定した大阪府警科学捜査研究所職員が「鑑定試料から筋弛緩剤を検出した」と証言した。
 鑑定したのは、被害者5人の血清や尿、点滴ボトルの輸液。職員は、検察側の尋問に対し、微量の成分を鑑定する機械が宮城県警にないため依頼を受けたと述べ、鑑定試料について「研究所の冷凍庫に常に保管し、他の物質を混入した事実はない」と話した。

 弁護側は鑑定について「試料がすべて使われているため再鑑定できない。数値も不自然」と、信ぴょう性がないことを主張している。職員の検察側尋問は20日も続き、12月3、4日に反対尋問がある。
 
2001.11.19

毎日新聞




守被告の本人質問 証拠隠滅を否定

 仙台市泉区の北陵クリニック(3月10日閉鎖)での筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で殺人罪1件、殺人未遂罪4件に問われている同クリニック元職員の准看護士、守(もり)大助被告(30)の第14回公判が12日、仙台地裁(畑中英明裁判長)で開かれ、守被告の本人質問が行われた。
 検察側が証拠隠滅と指摘する退職した昨年12月4日夜の行動について守被告は、帰宅後に再度クリニックを訪れた理由を「忘れ物をしたため。昼に行って当時の副院長と顔を合わせたくなかった」と証言。筋弛緩剤空アンプルが入った赤い箱を持ち出そうとしたことについては「廃棄物でいっぱいになっていたので、捨てようとしたまま忘れていたことに気づいたため」と話した。箱を抱えて玄関で捜査員に出会い、走って逃げたとされる点についても「捜査員に『いた所へ戻れ』と言われ戻った」と主張した。

 被告人質問は通常、証拠調べの最終段階で行われ、途中での証言は異例。検察側が証拠隠滅を主張する捜査員証言を重ねたため、弁護側が「論点整理のため」とこの点に限った被告人質問を要求し実現した。
 
2001.10.12

毎日新聞




接見室のマジックミラー撤去 秘密交通権侵害の恐れで

 容疑者や被告が弁護人と会う拘置所や刑務所の接見室にマジックミラーが設置されていた問題で、法務省はこのほど、全国38施設にあったすべてのマジックミラーを撤去した。「被告らと弁護人との秘密交通権を侵害する恐れがある」とする日本弁護士連合会(久保井一匡会長)の申し入れを受けたもので、透明な監視窓に改めた。
 マジックミラーは、接見室内部側は鏡となっているが、その裏側からは室内の様子が監視できる構造になっている。今年2月、逮捕・拘置中だった仙台拘置支所で、筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件の守(もり)大助被告(30)の弁護団が接見の際に見つけ、存在が明らかになった。

 法務省の調べでは、マジックミラーは刑務所、拘置所など全国189施設のうち38施設の接見室に設置されていた。法務省は「内部の動静を把握するために必要。監視する職員が見えて弁護士らの気が散らないよう配慮し、各施設の判断で設けた」と説明していた。

 これに対し、日弁連は7月に「マジックミラーでは、単なる監視か接見内容を探知しているのか区別がつかず、憲法や刑事訴訟法が保障している秘密交通権を侵害する恐れがある」と撤去を申し入れた。

 このため法務省は「誤解を招くのは不本意。『施設職員の様子を弁護人らも見られた方がいい』という意見を考慮した」として先月、全部を透明の監視窓に変えた。

 日弁連は「申し入れから撤去まで、異例の早さだった。マジックミラーの問題点は当初からはっきりしていたのではないか」としている。
 
2001.9.25

毎日新聞




初動捜査にかかわった捜査員へ主尋問 仙台地裁

 仙台市泉区の北陵クリニック(3月10日閉鎖)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で殺人罪1件、殺人未遂罪4件に問われた元職員の准看護士、守(もり)大助被告(30)の第6回公判が11日、仙台地裁(畑中英明裁判長)で開かれ、初動捜査にかかわった県警捜査1課の捜査員への主尋問が行われた。捜査員は、守被告が退職した昨年12月4日、守被告の行動を確認した捜査過程を細かく説明した。
 捜査員によると退職後の同夜、病院出入り口に現れた守被告に職務質問したところ、突然バタバタと院内に走って行ったため「逃げた」と感じ、足音を頼りに追いかけた。手術室の隣室でしゃがんで医療廃棄物を入れる赤い箱を持っている守被告を発見。聞いてもいないのに「手術で使ったゴミを片づけるために取りに来た」と話したという。

 しかしその部屋に普段は赤い箱を置いていないことや、医療廃棄物を個人で捨てることは出来ないことが判明し、不審に感じたという。また箱の中から筋弛緩剤の空アンプルを発見したため保管したと述べた。

 鑑定された患者の保存血液の「出所が不明」と弁護側が主張していることについて、捜査員は、その一つを自ら東北大病院に取りに行ったため、入手先に不明な点はないと述べた。

 次回は14日、他の捜査員の証人尋問を行う。
 
2001.9.11

毎日新聞




守被告第5回公判 宮城県警の課長補佐に主尋問

 仙台市泉区の北陵クリニック(3月10日閉鎖)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で殺人罪1件、殺人未遂罪4件に問われた元職員の准看護士、守(もり)大助被告(30)の第5回公判が6日、仙台地裁(畑中英明裁判長)で開かれ、前回に続き、県警捜査1課の課長補佐に対する主尋問が行われた。
 課長補佐は、5件それぞれの捜査の端緒、立件した根拠を説明。昨年11月24日に死亡した下山雪子さん(当時89歳)の点滴に使われた生理食塩水ボトルについて、同じ数字が並ぶはずの製造番号が1本だけ同日使われた他のボトルと異なっていたことを明らかにした。さらに、医療廃棄物の中から41枚中1枚だけ針穴の開いたシールを発見し、このシールの接着剤をはがした跡が下山さんのボトルと合致したと証言。その結果、「ボトル口のシールの上から注射器で筋弛緩剤を混入する犯行があったと確信した」と述べた。

 また5件以外の急変患者について、「まだ捜査中」と説明した。
 
2001.9.6

毎日新聞




「在庫不足で犯行確信」調書を朗読 第2回公判

 仙台市泉区の北陵クリニック(3月10日閉鎖)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で、殺人罪1件、殺人未遂罪4件に問われた同クリニック元職員の准看護士、守(もり)大助被告(30)の第2回公判が24日午前、仙台地裁(畑中英明裁判長)で始まった。検察側はクリニック関係者の供述調書など弁護側が同意した証拠書類を朗読。副院長(当時)の夫の半田康延・東北大教授が「在庫を調べて筋弛緩剤の本数不足が判明し、経過から守被告がやったと確信した」との検事調書を読み上げた。
 検察側は午後も証拠書類を朗読し、今後、患者の容体急変についてクリニックから相談を受けた警察官3人を証人申請する方針。

 一方、事件性そのものを否定し、えん罪を主張する弁護側は、被害者の血液サンプルなどから筋弛緩剤成分が検出されたとする鑑定結果の審理を先行するよう求める方針。また、検察側に対し、筋弛緩剤が混入されたという点滴ボトルの特定などの釈明を求める。

 11日の初公判で、守被告は起訴事実を全面的に否認。弁護側も患者の容体急変の原因をいずれも病気や医療ミスと主張した。一方、検察側は冒頭陳述で動機に直接触れなかったものの、守被告が給与や待遇に不満を持ち、当時の副院長を困らせるために筋弛緩剤を混入したと指摘。冒頭から激しく対立している。

 仙台地裁は9月から週2回の異例の集中審理で3年以内の判決を目指している。
 
2001.7.24

毎日新聞




えん罪疑惑報道 メディア通じ”廷外攻勢”

 准看護士の守(もり)大助被告(30)がえん罪を訴えている「筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件」の公判が仙台地裁で始まった。11日の初公判では早くも、殺人罪1件殺人未遂罪4件で起訴した検察側と、えん罪を主張する弁護側が真っ向からぶつかり合った。今後も「事件そのものの有無」をめぐる激しい攻防が予想されるが、この事件は早い段階から、弁護側のえん罪論が雑誌を中心に繰り返し報じられ、被告自身も初公判前に無実を訴える本を出版した。被告弁護側がメディアを使った異例なまでの“廷外攻勢”を展開した背景と影響を探った。
 仙台市泉区の北陵クリニック(3月10日閉鎖)の職員だった守被告は、今年1月の逮捕直後は容疑を認める供述をしたとされる。だが、4日目に否認に転じ、以後一貫している。

 きっかけは、接見した弁護士が受けた心証だという。たまたま逮捕翌日の当番弁護士だった丸山水穂弁護士(29)=現在は弁護団=は、罪悪感のない様子からその日のうちに守被告の両親に「無罪だと思う」と連絡し、えん罪の弁護で知られる阿部泰雄弁護士に依頼した。阿部弁護士は、1957年10月に1審仙台地裁古川支部で死刑を言い渡された後、再審無罪を84年7月に確定させる(松山事件)など無罪判決を7回勝ち取っている。

 その阿部弁護士も「守被告に『やったときのことを具体的に話して』と求めても、あやふやな説明しかできない。それで守被告は『本当は身に覚えのないことだ』と自覚した」と説明する。

 守被告が完全否認に転じたことは当初、警察外部に漏れなかった。報道は「クリニックでの待遇への不満」「容体急変時の対処が未熟な副院長(当時)へのいらだち」など、検察側の冒頭陳述に盛り込まれることになる内容が相次ぐ。1月19日、全国紙が朝刊で「否認に転じる」と初めて報じ、弁護団は21日、無罪を主張する記者会見を初めて開いた。

 この日以来、弁護団は取材に対して積極的に「えん罪」を主張する。弁護団は守被告に「否認に転じたときの様子と過酷な取り調べの実態を記録するため」に勾留(こうりゅう)日記を書かせた。「殺人者と1910回言われた」「死刑執行の様子を教えてやると言われた」などと記されている。公開することで世論の反響を呼ぶと考えた弁護団はある新聞に掲載を打診したが「一方的で扱えない」と断られたというが、3月には「週刊現代」が日記の一部を掲載するなど、えん罪疑惑報道が週刊誌を中心にあふれ出す。

 今月3日、守被告と阿部弁護士の共著「僕はやってない!」の出版会見が、東京地裁そばの弁護士会館で開かれた。本は勾留日記を全面公開し、守被告の母(55)とクリニックの同僚だった恋人の特別寄稿を盛り込んだ。

 阿部弁護士は“廷外攻勢”を仕掛けたことについて「当初の報道は守君を犯人と決めつけるようなものばかりで、このままでは初公判前に社会的に死刑が確定してしまいかねないと思った。否認に転じたことを記者会見で1月21日に訴えても、どこの社も大きく取り上げなかった。結局、警察が言うことはすべて頭から信じるのに、弁護側が言うことは信頼しない。有罪報道に対抗して無罪主張をするには、やはり報道を通すしかない。だから、弁護側の主張、真実に耳を傾けてくれるメディアには答えたし、本も出版した」と言う。

 新聞各紙は1月24日、守被告が初の拘置理由開示法廷で「まったく身に覚えがない」と述べたことを大きく扱い、以後計5回の起訴・追起訴の度に「全面否認」を伝えた。
 
2001.7.17

毎日新聞




初公判を聞いて 殺意の立証焦点に

 守大助被告(30)は逮捕4日目から容疑を否認、無罪を主張してきた。目撃者も、本人の自供もないため、検察側は状況証拠の積み重ねから立証する方針だ。それに対し弁護側は、初公判で異例ともいえる弁護側冒頭陳述。両者は激しい対決姿勢を見せた。
 事件では、医療行為の中で起きた患者の急変が罪に問われた。急変は「事件」か「病変」かの判別が難しいため、事件の存在そのものが争われることになった。

 検察側は、まず被害者の血液などから筋弛緩剤が検出された鑑定を根拠に、事件が存在したと主張。5件の犯行時間帯の1分刻みのち密な捜査から「守被告以外に筋弛緩剤を入れる機会があった人はいない」と立証していく。冒頭陳述ではその概要が示された。

 しかし、逮捕直後に自供した「病院や院長の呼吸確保技術への不満」などを冒陳に盛り込んだものの、検察は殺人の直接の動機として盛り込む形をとらなかった。検察側は「動機は、犯行の立証において必要条件ではない」とする。動機を漠然ととらえたため、5件の容体急変に至る状況がち密に記述された中で、点滴に筋弛緩剤を混入する場面で突然「殺意を持って」と説明されるため違和感がある。

 また目撃者がなく、守被告が混入行為を行った時間は特定されていないまま。さらに犯行の詳細な状況を明らかにしなければならない。

 一方弁護側は、検察側の状況証拠を崩しながら推定無罪を狙うだけではなく、全く別のストーリーを立てて真っ向から対立した。

 まずクリニック側の通報で事件が着手されたことに注目し、「医療ミスなどを隠すため、事件は作られた」と事件性自体を否定した。しかし弁護側の仮説には物証も目撃者もなく、証拠については先送りとなった。

 今後、立証段階で注目されるのは殺意の立証。検察側冒頭陳述には、殺意を立証できる決定的な要素は示されなかった。今後の立証段階では、筋弛緩剤を混入した動機、そこに殺意があったのかどうかが問われる。
 
2001.7.12

毎日新聞




守被告、起訴事実を全面否認 仙台地裁・初公判

 仙台市泉区の北陵クリニック(3月10日閉鎖)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で、殺人罪1件、殺人未遂罪4件に問われた同クリニック元職員の准看護士、守(もり)大助被告(30)の初公判が11日午前、仙台地裁(畑中英明裁判長)で始まった。守被告は起訴事実を全面的に否認。弁護側は「5件とも筋弛緩剤が投与された事実がない」と事件性そのものを否定し、えん罪を訴えた。検察側は冒頭陳述で「適法な医療行為を利用した極めて特異な事件」と述べた。
 
 弁護側は、守被告が患者の殺害目的で筋弛緩剤を点滴に混入したとの5件の起訴事実それぞれについて、混入の時刻と場所、量、方法や筋弛緩剤の致死量――などを明らかにするよう求めたが、検察側は「釈明の必要はない」と述べた。

 起訴事実の認否で、守被告は調合、混入などはしていないと1件ずつ全面否認し、「あらゆる患者さんに、起訴状記載のような筋弛緩剤を混入したことはありません」と陳述。その上で100日を超えた警察、検察の取り調べを批判した。

 弁護側は意見陳述を行い、「5件とも患者の容体急変は病気や手術の影響」と主張。さらに、捜査の端緒が不自然で、点滴に混入した場合の筋弛緩剤の作用や、患者の保存血液などから筋弛緩剤成分を検出したとの鑑定結果への疑問などを指摘した。

 一方、検察側は冒頭陳述で「准看護士である被告自ら、または情を知らない看護婦らを介して混入した。外観上、適法な医療行為の中で行われたのが特徴」と事件の特異性を強調。引き続き、患者5人の容体急変時のクリニック内の状況や鑑定結果などから、筋弛緩剤を混入したのは守被告以外にありえないと主張していく。

 守被告は1月6日の逮捕直後、「待遇などでクリニックに不満があった」などと犯行を認める供述を行ったとされるが、同9日から全面的に否認。取り調べに対しほぼ黙秘を続けていた。
 
2001.7.11

毎日新聞




守被告、えん罪主張へ 11日に初公判

 仙台市泉区の北陵クリニック(3月10日閉鎖)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件の初公判が11日、仙台地裁で開かれる。殺人罪1件、殺人未遂罪4件に問われた同クリニック元職員の准看護士、守(もり)大助被告(30)は全面的に無罪を主張。弁護側も検察側に対抗して冒頭陳述を行い、「患者の容体急変は別の病気や医療ミスが原因」と事件性そのものを否定するえん罪論を展開する構え。同地裁は「3年以内の判決」を目指して、9月からは週2回の集中審理を決めており、異例ずくめの裁判になる。
 守被告は今年1月6日の逮捕直後、点滴に筋弛緩剤を混入したことを認め、動機について「クリニックの待遇などに不満があった」と供述したとされるが、4日目から全面的に否認、黙秘を続けた。直接の証拠が乏しい中で、検察側と弁護側が真っ向から対立する。

 検察側は、患者の保存血液などから筋弛緩剤の成分が検出された鑑定結果を物証に、筋弛緩剤混入以外に容体急変の原因が考えられないことを主張。事件当時の職員らの動きなど状況証拠を細かく積み重ね、「守被告以外に混入はできない」と立証していく。ただ、動機については「本人の供述がない」として冒頭陳述に明記しない方針だ。

 これに対して弁護側は、患者の容体急変について「筋弛緩剤なしで説明がつく」と別の病気や医療ミスを原因にあげる。さらに、鑑定に使われた同じ患者の血液と尿で濃度が科学的に矛盾する点、血液などの入手経路が明らかにされていない点などから、鑑定についても「信ぴょう性に欠ける」と主張する。

 弁護側の冒頭陳述は、検察側の立証に対する反証に移る段階で行われるケースが多く、初公判で検察側に続いて朗読されるのは異例。弁護側は「裁判官の視野に公平に入るように」と狙いを説明する。

 裁判は冒頭から検察側、弁護側の激しい対決になるが、仙台地裁は裁判の長期化を避けるため、集中審理の態勢をとった。裁判官を1人増員し、この事件を担当する畑中英明裁判長ら3人の裁判官については可能な限り判決まで異動を避けるという。

     ◆守被告が起訴された事件◆

罪  名 事件発生    患   者     弁護側主張

殺人未遂 10月31日  女児(11)重体  重い脱水症状

殺  人 11月24日  女性(89)死亡  心筋こうそく

殺人未遂 2月2日    女児(1)回復   点滴への拒否反応

殺人未遂 11月24日  男性(45)回復  点滴薬の副作用

殺人未遂 11月13日  男児(4)回復   手術の影響

※起訴の順、事件発生はいずれも昨年、年齢は当時
 
2001.7.7

毎日新聞




守被告の初公判、7月11日に

 仙台市の北陵クリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で、仙台地裁と仙台地検、弁護団の3者が9日協議し、准看護士、守(もり)大助被告(30)の初公判を7月11日に開くことで合意した。検察側は5月21日から証拠を開示する見通し。仙台地裁は最初の起訴から判決まで3年を超えないよう、週2回のスピード公判を予定している。
 検察側は殺人1件と殺人未遂4件で、守被告の逮捕・起訴を繰り返したが、4月20日の5回目の起訴以降、再逮捕は見送っている。弁護団はえん罪を主張し「検察側の理論構成を打ち崩すだけだ」と言っており、法廷では検察との激しい応酬が予想される。

 ◆「医療ミス隠し」

 守被告は1月6日の最初の逮捕後、いったん容疑を認める調書に署名したが、間もなく否認に転じた。弁護団は(1)ポリグラフ(うそ発見器)を使った誘導尋問で、うその供述をさせた
(2)具体的な筋弛緩剤混入の量や日時、場所、方法が特定されていない
(3)筋弛緩剤は呼吸困難になっても心筋に影響せず、致死量の概念はない――と指摘。「守被告が犯人であることを前提にした見込み捜査。医療事故など病院のミスを隠す意図を感じる」と批判する。
 弁護団は9日、守被告が5月初旬に仙台弁護士会に送った「何もしていないのです。私を信じて下さい。助けて下さい」とする直筆の手紙を公開した。
 ◆捜査どこまで

 一方、検察側はカルテや看護記録、職員の証言などを積み上げ「守被告しか混入できない。公判ですべてを合理的に説明する」と自信を見せる。しかし、6件目の逮捕見送りについて、宮城県警のある幹部は「証拠が足りなかった」と漏らす。

 仙台地検の北村道夫次席検事は「残る急変患者をすべて見極めるまで捜査を継続する」と話すが、「薬物検出などの物証がなければ立件は難しい」と言う捜査幹部は多い。守被告が関与したとされる点滴での容体急変患者は二十数人に上るが、その物証があるのは6人だけだ。

 ◆「うちは被害者?」

 「立件できないなら、関係なかったと言ってほしい」。物証のある中で唯一残された利尿剤検出の男児(当時5歳)の祖母はうつむく。重体に陥った時の悪夢は消えないが、男児は元気に小学生になった。祖母は「中途半端なまま。事件を忘れたい」と話した。

 物証のない家族も重苦しい気持ちが続く。昨夏、点滴後に急死した男性(当時71歳)の長女は「誰も何も教えてくれず、被害者かどうかも分からない」と言う。中には立件を待たずクリニックと民事調停に踏み切ったり、示談を進めようとしている人もいる。 
 ◆守被告が起訴された事件◆
起訴日     罪  名
1月26日 昨年10月31日の女児(11)に       対する殺人未遂=現在も重体
2月16日 昨年11月24日の女性(89)に       対する殺人=死亡
3月9日  昨年2月2日の女児(1)に 対する殺人未遂=回復
3月30日 昨年11月24日の男性(45)に       対する殺人未遂=回復
4月20日 昨年11月13日の男児(4)に       対する殺人未遂=回復
※年齢は当時
 
2001.5.9

毎日新聞




守容疑者は容疑を否認 開示法廷で 仙台地裁

 仙台市泉区の北陵クリニック(3月10日閉鎖)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で、入院していた男児(5)に対する殺人未遂の容疑で再逮捕された守(もり)大助容疑者(29)=殺人罪1件、殺人未遂罪3件で起訴=の拘置理由開示法廷(鈴木陽一裁判官)が18日、仙台地裁で開かれた。
 守容疑者は「そんなことはしていないし、男児の容体が急変した時は彼女とアパートにいた」と容疑を否認。弁護団は「間接的な証拠の積み重ねにすぎない」と捜査を批判した。「鈴木裁判官は拘置理由として証拠いん滅の恐れなどを挙げた。
 弁護団は逮捕の度に開示請求をしており、開示法廷は今回で5回目。
 
2001.4.18

毎日新聞




守容疑者が改めて無実を主張 仙台地裁

 仙台市泉区の北陵クリニック(今月10日閉鎖)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で、45歳の男性に対する殺人未遂の容疑で再逮捕された守(もり)大助容疑者(29)=殺人罪1件、殺人未遂罪2件で起訴=の拘置理由開示法廷(菱山泰男裁判官)が27日、仙台地裁で開かれた。
 守容疑者は「点滴に筋弛緩剤を混入したことは一切ありません。逮捕が続いても、やっていないので否認を続けます」と、改めて無実を主張した。菱山裁判官は拘置理由として証拠隠滅の恐れなどを挙げた。弁護団は逮捕の度に開示請求をしており、開示法廷は今回で4回目。  

2001.3.27

毎日新聞




点滴後急死の男性の遺族が損賠調停を申し立て

 筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件のあった仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)に入院中、点滴後に急死した男性の遺族が22日、「事件の被害者の可能性が強い。病院の管理不十分から事件が起きた」として、同クリニックを経営していた医療法人・陵泉会と半田郁子院長、および夫の半田康延東北大医学部教授に対し、慰謝料など相当額の損害賠償を求める調停を仙台簡裁に申し立てた。
 申立書や代理人によると、男性は、同クリニックに入院中の昨年、殺人未遂容疑で今月、再逮捕された守(もり)大助容疑者(29)=殺人未遂罪2件、殺人罪1件で起訴=から点滴を受け容体が急変、死亡した。死因は心不全とされたが、点滴前は快方に向かっていたという。男性の年齢などは明らかにされていない。

 遺族側は(1)容体急変を医学的に説明できない(2)10アンプル以上の筋弛緩剤が使途不明になっている(3)外部者による混入は考えがたい――などと主張。一連の事件の被害者である可能性が高いとしている。また、「筋弛緩剤混入が証明できなくとも、病院の薬剤管理、職員管理が極めてずさんなのは明らか」と主張している。
 男性の血液は保存されておらず、警察の立件対象とはなっていない。
 
2001.3.22

毎日新聞




守容疑者、4回目の逮捕 45歳男性殺人未遂で

 仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で、宮城県警捜査本部は9日、元職員の准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=殺人未遂、殺人の罪で起訴=が、昨年11月にも筋弛緩剤の入った点滴で、同区内に住む団体職員の45歳の男性の容体を悪化させたとして、殺人未遂容疑で再逮捕した。逮捕は4回目。また、仙台地検は同日、守容疑者を1歳の女児に対する殺人未遂の罪で仙台地裁へ起訴した。起訴は3回目。

 調べでは、守容疑者は昨年11月24日、同クリニックに気管支炎治療に訪れた男性の点滴に筋弛緩剤を混入し、殺害しようとした疑い。男性は徐々に容体が悪化し呼吸困難に陥ったが、呼吸停止には至らず、同クリニックでの応急処置で回復した。守容疑者は否認している。

 捜査本部が点滴パックやチューブなどの医療廃棄物を調べたところ、男性に使用されたものから筋弛緩剤が検出された。昨年11月24日は、守容疑者が殺人の罪で起訴された下山雪子さん(当時89歳)の死亡した日でもあり、守容疑者は日勤だったという。

 同クリニックの患者のうち、他に昨年11月に点滴を受け容体が急変した男児(4)の保存血液から筋弛緩剤が、12月に点滴を受けて容体が急変した男児(5)の保存血液から利尿剤がそれぞれ検出されており、捜査本部は立件に向けて捜査を進めている。
 
2001.3.9

毎日新聞




守容疑者の弁護団「拘置は不当」、3回目の開示法廷

 仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)での筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で、当時1歳の女児に対する殺人未遂容疑で再逮捕された守(もり)大助容疑者(29)=殺人未遂、殺人の罪で起訴=に対する拘置理由開示の法廷が6日、仙台地裁(菱山泰男裁判官)であった。出廷した守容疑者は「マスキュラックス(筋弛緩剤)を女児に投与したことはない。女児の救命措置を一生懸命やったつもりだ」と、容疑を否認した。開示法廷は3回目で、守容疑者は過去2回でも無罪を主張している。

 菱山裁判官は今回の容疑に関し、証拠隠滅の可能性などの拘置理由を説明。守容疑者の弁護団が拘置は不当だとする立場から意見を述べた。
 
2001.3.6

毎日新聞




宮城・仙台の筋弛緩剤点滴 医療廃棄物から不審な薬物を検出−−北陵クリニック

 仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入点滴事件で、宮城県警捜査本部は3日までに、同クリニックで点滴後に容体が悪化した40歳代の男性入院患者に使用された医療廃棄物から、本来使用されるはずのない薬物を検出した。患者の保存血液や点滴パックなどから薬物が検出されたのは6件目で、殺人未遂容疑で再逮捕した守大助容疑者(29)=殺人と同未遂の罪で起訴済み=との関連を慎重に調べている。

 調べでは、男性は昨年11月末、点滴後に容体が悪化。呼吸停止などには至らなかったため、転院はせずに同クリニックでの処置で回復した。守容疑者は当日、勤務日だったという。捜査本部は同クリニックから回収した使用済みの点滴パックや針、チューブなどの鑑定を進め、薬物を検出した。
 
2001.3.4

毎日新聞




宮城・仙台の筋弛緩剤点滴「でっちあげ」と上着かぶらず

 仙台市泉区の北陵クリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤による殺人・殺人未遂事件で、宮城県警捜査本部は18日、当時1歳の女児に対する殺人未遂の疑いで再逮捕した准看護士、守大助容疑者(29)=殺人未遂と殺人の罪で起訴=を仙台地検に送検した。泉署裏口に姿を見せた守容疑者は、上着を頭からかぶっておらず、接見した弁護団によると「事件はでっちあげで、顔を隠すつもりはない。これまでは、警察に上着をかぶせられていた」と、話していたという。
 
2001.2.19

毎日新聞




女児殺人未遂容疑で、守容疑者を再逮捕

 仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入の点滴事件で、宮城県警捜査本部は16日、89歳の女性に対する殺人の疑いで再逮捕した元職員の准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=殺人未遂の罪で既に起訴=が、昨年2月にも筋弛緩剤入りの点滴で当時1歳の女児の容体を急変させたとして、殺人未遂容疑で再逮捕した。逮捕は3回目。また、仙台地検は同日、守容疑者を殺人の罪で仙台地裁へ追起訴した。

 調べでは、守容疑者は昨年2月2日午後5時ごろ、当時勤めていた同クリニックで、風邪で入院した女児に筋弛緩剤を混入した点滴を行い、呼吸停止に陥らせ窒息死させようとした疑い。守容疑者は否認している。

 女児は同クリニックの医師の蘇生措置を受けた後、同市内の総合病院に搬送され、回復。保存されていた女児の血液から筋弛緩剤が検出された。関係者によると、守容疑者は医師の蘇生措置を手伝っていたという。

 同クリニックで昨年11月、機能的電気刺激(FES)治療の手術を受けた後、容体が急変した男児(4)の保存血液からも筋弛緩剤が検出されており、捜査本部は立件に向けて捜査を進めている。
 
2001.2.17

毎日新聞




守容疑者、容疑を否認 拘置理由開示法廷で

 仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)で起きた筋弛緩(しかん)剤点滴事件で、89歳の女性に対する殺人容疑で再逮捕された元職員で准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=殺人未遂の罪で既に起訴=に対する拘置理由開示の法廷が16日午前、仙台地裁で開かれた。出廷した守容疑者は「マスキュラックス(筋弛緩剤)を混入したことは一切ありません」と容疑を否認した。弁護団が同地裁に開示を請求していた。

 菱山泰男裁判官が「病院関係者の証言が重要な証拠となる。守容疑者が関係者に働きかけ証拠隠滅の行動をとる疑いが認められる」と拘置理由を説明。弁護団は「女性の死因は心筋こうそくで事件性がない」などと意見を述べた。守容疑者は「女性にもその他の患者にも一切、混入していない」と無実を主張した。

 弁護団は守容疑者が殺人未遂容疑で拘置されていた先月にも同様の請求を仙台簡裁に行い、同23日の法廷でも守容疑者は容疑を全面否認した。
 仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)で起きた筋弛緩(しかん)剤混入の点滴事件で、宮城県警捜査本部は15日、殺人の疑いで再逮捕した同クリニックの元職員で准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=殺人未遂の罪で既に起訴=が昨年11月にも筋弛緩剤入りの点滴で男児(4)を一時重体に陥らせた疑いを強め、16日にも殺人未遂容疑で3回目の逮捕をする。

 調べでは、守容疑者は昨年11月13日午後、同クリニックで、まひした手足に電気刺激を与えて運動機能を再建するFES(機能的電気刺激)治療を受けた男児の点滴に筋弛緩剤を混入し、殺害しようとした疑い。

 男児は点滴中に容体が急変し、一時は呼吸が極めて困難になったが、医師の応急処置で回復した。保存されていた男児の血液から筋弛緩剤の成分が検出されていた。

 筋弛緩剤はFESの手術で全身麻酔をかけた際にも使われたが、量は少なく手術中に効果がなくなる。血液は容体急変から回復した後に採られているため、捜査本部は手術以外で筋弛緩剤が投与されたことを立証できると判断した。
 
2001.2.16

毎日新聞




守被告の弁護団、拘置理由の開示請求/宮城

 仙台市泉区の北陵クリニックでの筋弛緩(しかん)剤点滴事件で、殺人容疑で再逮捕され仙台拘置支所に拘置中の守(もり)大助被告(29)=殺人未遂罪で既に起訴=の弁護団は13日、仙台地裁に拘置理由の開示を請求した。同地裁は開示の手続きを16日午前10時半、同地裁で開くことを決めた。
 弁護団は守被告の無実を主張しており、同地裁には拘置を認めた理由を説明するよう求めている。16日は守被告が出廷し、意見陳述する予定。

 弁護団は、守被告が殺人未遂容疑で拘置されていた先月、同様の請求を仙台簡裁に行っている
 
2001.2.14

毎日新聞




北陵クリニック閉鎖へ 院長「世間騒がせた」

 筋弛緩(しかん)剤点滴事件のあった仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)が来月10日をめどに閉鎖することになり、10日午前、玄関にその旨の張り紙を出した。

 関係者によると、同クリニックが9日に開いた職員全員による全体会議で決めた。その際、閉鎖の理由について半田院長から(1)事件で診療所の信頼が落ち、患者数が減った(2)社会的反響が大きく、世間を騒がせた責任をとる――との説明があった。

 同クリニックは事件発覚後、県警の捜査に協力するため先月9〜14日に全面休診。いったん再開したが、半田院長らが体調を崩したとして今月5日から再び休診していた。再来患者に限り14日に内科を再開し、28日まで診療を行う。現在、入院患者はいない。

 同クリニックでは、マヒした手足の機能を電気の刺激で再建する「機能的電気刺激(FES)」治療の臨床研究が国や宮城県から補助を受けて行われてきた。宮城県などは研究を東北大付属病院に移す方向で調整を進めている。
 
2001.2.10

毎日新聞




接見ビデオ撮影、事実調査申し入れ、守容疑者弁護団/宮城

 患者の点滴に筋弛緩(しかん)剤を混入したとして殺人容疑で再逮捕された准看護士、守(もり)大助容疑者(29)の弁護団が「3日の接見の様子を仙台拘置支所職員がビデオ撮影した可能性がある」と指摘した問題で、弁護団は5日、支所と仙台地検に事実調査を文書で申し入れた。
 (1)支所内で自傷者が出て、ビデオによる採証活動を行った事実があるか
(2)接見内容をビデオ撮りした事実があるか。組織的盗撮か否か
(3)取り調べ主任検察官ないしは仙台地検としての関与が認められるか否か――について調査を求めた。

 支所は「接見状況の撮影は一切していない。弁護人が時間を過ぎても接見をやめなかったため、容疑者が取り調べのための連行に応じなかったり、粗暴な行動に出るなどの不測の事態に備えてビデオを持った職員を待機させた。たまたま非常ベルが鳴り、所内で自傷行為をした者が階段から下りてくることが予想され、その方向にカメラを向けていた」と説明している。
 
2001.2.6

毎日新聞




守容疑者の接見ビデオ撮影を否定 仙台拘置支所

 仙台市泉区の北陵クリニックで、患者の点滴に筋弛緩(しかん)剤が混入された事件で、殺人容疑で再逮捕された守大助容疑者(29)=殺人未遂罪で起訴=の弁護団は3日、仙台拘置支所(同市若林区)での守容疑者との接見の様子がビデオ撮影された可能性があると指摘した。これに対し、同支所は4日、三浦高義支所長名で「容疑者が粗暴な行為に出るなどの不測の事態に備えてビデオを持った職員を待機させていたが、接見状況の撮影は一切していない」とのコメントを発表した。

 弁護団によると、3日午前、同支所接見室で守容疑者と接見した際、支所職員が終了を告げに部屋のドアを開けたところ、背後の廊下に赤いランプのついた家庭用ビデオカメラを構えた男性職員が立っていた。「撮影されていた場合、刑事訴訟法上の容疑者と弁護人の秘密交通権の侵害になる」と主張している。

 これに対し、同支所は「指定された接見時間を超過した後も弁護人は接見をやめなかった。このため、容疑者が取り調べのための連行に応じず、粗暴な行動に出るなどの不測の事態に備えて、ビデオを持った職員を待機させていた」と説明。さらに、「たまたま非常ベルが鳴り、所内で自傷行為した者が階段から下りてくる直前だったため、ビデオを持った職員がその方向にカメラを構えていた」と接見時の撮影を否定している。
 
2001.2.5

毎日新聞




守容疑者との接見をビデオ撮影と指摘 弁護団

 仙台市泉区の北陵クリニックで、患者の点滴に筋弛緩(しかん)剤が混入された事件で、殺人容疑で再逮捕された守大助容疑者(29)=殺人未遂罪で起訴=の弁護団は3日、仙台拘置支所(同市若林区)での守容疑者との接見の様子がビデオ撮影された可能性があると指摘。同支所と仙台地検に対し調査を要請する。

 弁護団によると、同日午前、同支所接見室で守容疑者と接見した際、支所職員が終了を告げに部屋のドアを開けたところ、背後の廊下に赤いランプのついた家庭用ビデオカメラを構えた職員とみられる男性が立っていたという。

 弁護団の問い合わせに、同支所は「所内で自傷行為者が出たので、採証活動をしていた」などとビデオカメラを持った職員がいたことは認めたが、接見を撮影したことは否定したという。弁護団は「撮影されていた場合、刑事訴訟法上の容疑者と弁護人の秘密交通権の侵害になる」と話している。
 
2001.2.4

毎日新聞




入院女児の保存血液から筋弛緩剤を検出

 仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)で点滴に筋弛緩(しかん)剤が混入された事件で、入院していた女児(1)の保存血液から筋弛緩剤が検出されたことが1日、分かった。これまで検出されていたものと同種で、筋弛緩剤が検出されたのは4人となった。宮城県警の捜査本部は殺人容疑で再逮捕した守(もり)大助容疑者(29)=殺人未遂でも起訴=との関連を慎重に調べている。

 女児は同クリニック入院中の昨年初めごろ、点滴を受けた後に容体が急変し、治療を受け回復した。捜査本部は女児の血液を保存していた他の病院から提出を受け鑑定を進めていた。

 事件発覚の発端となった昨年10月に容体が急変した小学6年生の女児(11)以前の患者から筋弛緩剤が検出されたのは初めて。このほか、昨年12月に容体が急変し回復した男児(5)からは利尿剤が検出されている。
 
2001.2.2

毎日新聞




北陵クリニックの副院長から事情を聴く 仙台市

 患者の点滴に筋弛緩(しかん)剤が混入された事件のあった仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)に対し、同市は31日、薬品管理などについて文書による改善指導を行うとともに、森和夫副院長から事情を聴いた。

 同クリニックでは(1)筋弛緩剤の保管庫に鍵をかけていなかった(2)管理者である院長が常勤していなかった(3)薬剤師が長期間不在だったにもかかわらず、市への報告を怠っていた――などの問題点が判明。17日に同市と県、厚生労働省の3者が共同で実施した立ち入り検査では、常勤の院長に交代するなど一定の改善が認められた。しかし、まだ不十分だとして今回の指導となった。

 文書では、管理者としての責務を中心に、職員管理のほか、薬品の在庫・数量管理の徹底――などを指導した。市は今後も、引き続き立ち入り検査と文書による指導を行う。
 
2001.1.31

毎日新聞




守容疑者立ち会いで初の現場検証

 仙台市泉区の北陵クリニックで昨年11月、同区の無職、下山雪子さん(当時89歳)が筋弛緩(しかん)剤の混入した点滴を受け、殺害された事件で、宮城県警泉署捜査本部は28日、殺人容疑で再逮捕した准看護士、守大助容疑者(29)=殺人未遂罪で起訴=を立ち会わせた初の現場検証を行った。

 現場検証は北陵クリニック内で午前8時ごろから約3時間行われ、下山さんが点滴を受けた当時の様子を再現したとみられる。検証後、接見した弁護士によると、守容疑者は下山さんを殺害した容疑も否認を続けているという。
 
2001.1.29

毎日新聞




守容疑者を殺人容疑で再逮捕、送検へ

 仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)で昨年10月、小学6年の女児(11)が筋弛緩(しかん)剤入りの点滴を受けて意識不明になったとされる事件で、宮城県警捜査本部は26日夜、殺人未遂の罪で起訴された元職員の准看護士、守(もり)大助被告(29)が昨年11月、当時89歳の女性患者にも筋弛緩剤を混入した点滴を打ち、殺害したとして、殺人容疑で再逮捕した。捜査本部は28日、守容疑者を同容疑で仙台地検へ送検する。

 死亡したのは、同区根白石の特別養護老人ホーム「泉和荘」に入所していた下山雪子さん。

 調べでは、守容疑者は昨年11月24日午前9時15分ごろ、同クリニック内で殺意を持って、入院していた下山さん用の点滴に筋弛緩剤を混入して打ち、同10時半、呼吸不全により殺害した疑い。

 再逮捕直後と27日午前に守容疑者と接見した弁護団によると、守容疑者は再逮捕の容疑事実について「やっていない」「あきれている」と話したという。また、下山さんには下剤を飲ませたことしかなく、点滴を打ったことも、筋弛緩剤を混入させたこともない、と説明したという。下山さんについては「何度か入退院して顔なじみになり、非常に可愛がってもらっていた。敵意、悪意は全く感じない。(死亡したことが)なぜ自分のせいになるのか全く分からない」と話したという。
 
2001.1.28

毎日新聞




守容疑者を殺人容疑で再逮捕 宮城県警

 仙台市泉区の北陵クリニック(半田郁子院長)で昨年10月、小学6年の女児(11)が筋弛緩(しかん)剤入りの点滴を受けて意識不明になったとされる事件で、宮城県警捜査本部は26日、元職員の准看護士、守(もり)大助容疑者(29)が昨年11月、女性患者(当時89歳)にやはり筋弛緩剤の混入した点滴を打ち、殺害したとして、殺人容疑で再逮捕した。また、仙台地検は女児に対する殺人未遂の罪で同日、守容疑者を仙台地裁に起訴した。
   亡くなったのは、同区根白石の特別養護老人ホーム「泉和荘」入所者、下山雪子さん。調べでは、守容疑者は昨年11月24日、当時勤めていた同クリニックに入院していた下山さんに筋弛緩剤の混入した点滴を打ち、殺害した疑い。下山さんは点滴後に容体が急変し死亡、死因は心筋こうそくとされていた。女児と同様、保存されていた下山さんの血液から筋弛緩剤の成分が検出された。

 泉和荘によると、下山さんは昨年11月15日早朝から熱が出たため、同荘職員が同クリニックに運び、肺炎と分かってそのまま入院した。同クリニックは同荘から嘱託医を依頼されており、毎週1回、医師が出かけていた。守容疑者は「注射がうまい」と同荘の老人らに人気があったという。

 同クリニックで点滴後に容体が急変した患者は約20人おり、このうち9人の死亡が判明している。

 下山さんと女児の他、昨年11月13日、点滴中に容体が急変し、呼吸が極めて困難になり一時重体となった男児(4)の血液からも筋弛緩剤が検出されており、捜査本部は殺人未遂の疑いがあるとして慎重に捜査を進めている。

 守容疑者は9日以降、それまで署名した供述調書を撤回して全面否認に転じ、黙秘を続けている。 

 ◆起訴事実の要旨◆

 守被告は昨年10月31日午後6時半ごろ、仙台市泉区の北陵クリニック内で、殺意をもって点滴溶液に呼吸停止を引き起こす筋弛緩剤「マスキュラックス」を混入。同50分ごろから午後7時にかけて同区の小学6年の女児(11)に点滴溶液を注入し、窒息死させようとしたが、医師らの救急措置によって全治不明の低酸素脳症を負わせたものの、殺意の目的を遂げなかった。
 宮城県警捜査本部は26日午後9時40分ごろ、泉署で蔵本英雄刑事部長らが再逮捕の会見に臨んだ。
 蔵本刑事部長は「捜査上の具体的なものについては答えられない」との回答に終始。余罪の立件については「慎重に捜査を進めていきたい」と述べるにとどまり、動機についても「まだ特定していない」と話した。会見は約15分で終わった。
 26日夜、接見した弁護団によると、守容疑者は再逮捕の容疑事実について「やっていない」「あきれている」と話し、下山さんには下剤を飲ませたことしかなく、点滴液は作っても打ってもいないと説明したという。さらに、「(何度か入退院した下山さんとは)顔なじみになり、非常に可愛がってもらった。敵意、悪意は全く感じない。(死亡したことが)なぜ自分のせいになるのか分からない」と話したという。

◇  ◇  ◇
 弁護団は仙台弁護士会所属の5人。うち、花島伸行、丸山水穂の両弁護士が当初の当番弁護士だった。刑事訴訟法では容疑者に対し3人まで認めており、後で加わった阿部泰雄弁護士のほか、事案の重大性や特殊性を考慮して、仙台簡裁が2人の増員申請を認めた。

 中心となる阿部弁護士は、1審の仙台地裁で有罪とされたひき逃げ死亡事故の控訴審で1997年、逆転無罪の判決を勝ち取るなど「えん罪事件」に力を入れている。

 同弁護団はこれまでにも、最長7時間に及ぶ接見をするなど、捜査員らからは「法的には問題ないのだろうが、いささか強引では」の声が出ている。
 
2001.1.26

毎日新聞




守容疑者側の準抗告を棄却 仙台地裁

 仙台市泉区の北陵クリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤混入の点滴による殺人未遂事件で、仙台地裁(山田公一裁判長)は25日夜、元職員の准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=仙台拘置支所に拘置中=の弁護団が、仙台簡裁の拘置取り消し請求の却下決定を不服として行った準抗告を棄却した。
 
2001.1.26

毎日新聞




守容疑者の拘置取り消し請求却下 仙台簡裁

 仙台市泉区の北陵クリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤混入の点滴による殺人未遂事件で、仙台簡裁(渡部元也裁判官)は25日、元職員の准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=仙台拘置支所に拘置中=の弁護団から24日に出された拘置取り消しの請求を却下した。
 
2001.1.25

毎日新聞




「全く身に覚えない」 守容疑者が無実主張 拘置理由開示法廷

 仙台市泉区の北陵クリニックで昨年10月、患者の小学6年の女児(11)に筋弛緩(しかん)剤を混入した点滴を打って意識不明にさせたとして、宮城県警に殺人未遂容疑で逮捕された元職員の准看護士、守(もり)大助容疑者(29)に対する拘置理由開示の手続きが23日、仙台簡裁(上原昭吾裁判官)であった。逮捕後、初めて公の場に立った守容疑者は意見陳述で「全く身に覚えがない」などと無実を主張する「意見書」を読み上げた。弁護側は24日にも拘置の取り消しを請求する方針を明らかにした。

 守容疑者は逮捕された6日から8日までは、容疑をおおむね認める供述をしていたとされる。意見書はA4判3枚。「うそ発見器にかけられ、何度も責められて頭が混乱し、いったん認めてしまったが、すべて撤回しますと伝えた。全く身に覚えがないことですから、一日も早くこの身が解放されるよう、無実と潔白を訴えて闘い続ける決意です」という内容で、ゆっくり5分ほどで読み終えた。

 また、上原裁判官が「関係者が多いことや事案の重大性を考えると、証拠隠滅・逃亡の恐れがある」と拘置理由を述べたのに対し、弁護側は(1)守容疑者が筋弛緩剤を混入したという証拠がない(2)筋弛緩剤は心筋に影響せず、呼吸手当てさえ行えば死に至らない(3)具体的な動機と方法が示されていない――として、拘置は不当だと主張した。

 この日の守容疑者は濃い緑のタートルネックのセーターと紺のジーンズ姿。裁判官に一礼して法廷内に入ると、しっかりとした足取りで自分の席に向かった。裁判官をまっすぐ見つめ、名前や生年月日などの質問にはしっかりとした声で答えた。簡裁前には傍聴を求め、約70人が並んだ。
 
2001.1.23

毎日新聞




北陵クリニック 届け出翌日も守容疑者を宿直に

 仙台市泉区の北陵クリニックで小学6年の女児(11)が筋弛緩(しかん)剤の点滴を受けたとされる殺人未遂事件で、守(もり)大助容疑者(29)の関与を疑ったクリニック側が、事件を警察に届け出た翌日も守容疑者を宿直勤務に就かせ、入院中の幼稚園男児(5)の容体が急変していたことが21日、関係者の話で分かった。疑わしいとみた人物を引き続き医療行為に従事させた管理体制の甘さが問われそうだ。
 関係者によると、同クリニックは昨年12月1日、「守(容疑者)の宿直の時に点滴で容体が急変する患者が続出し、筋弛緩剤が投与された疑いが強い」と県警に届け出たが、翌2日、守容疑者を宿直に就けた。守容疑者は3日午前9時ごろ、宿直明けで帰宅したが、約1時間後に高熱などで前月末から入院し、点滴治療を受けていた仙台市内の園児の容体が急変し、こん睡状態に近い意識障害に陥った。

 クリニック側は新たに点滴を打つなど応急処置を施し、院外の医師を呼んで手当てを依頼。医師は「命に別条はないが、意識障害の原因が不明」として昼過ぎ、同市立病院に緊急搬送させた。守容疑者はクリニックから呼び出されている。この園児は後に回復し、数日後には退院したという。

 同クリニックの宿直は正准看護婦・士と看護助手の2人体制で、2日夜〜3日朝の点滴も守容疑者が行った可能性が極めて高い。
 
2001.1.22

毎日新聞




守容疑者、医療廃棄物持ち出し図る 証拠隠滅を狙う?

 仙台市泉区の北陵クリニックで小学6年の女児(11)が筋弛緩(しかん)剤入りの点滴を受け意識不明になった事件で、殺人未遂容疑で逮捕された元職員の准看護士、守(もり)大助容疑者(29)が昨年12月の退職時に、手術室から医療廃棄物の保管箱を無断で持ち出そうとしていたことが、20日までの関係者の話で分かった。箱は守容疑者がほとんど専用に使っていたもので、クリニック側が持ち出しを制した際には、筋弛緩剤の空きアンプルなどが入っていた。宮城県警捜査本部は証拠隠滅を図ったものと見て、入っていた薬物瓶の種類などを調べている。
 関係者によると、守容疑者の宿直の時に容体が急変する患者が集中することに疑いを持った半田郁子院長(当時は副院長)の意向を事務職員から伝えられ、守容疑者は昨年12月4日、勧奨退職の形で辞めた。退職当日、守容疑者は薬品の使用済み容器などが入った赤い保管箱を持ち出そうとしたが、目撃した職員が不審に思って問いただしたため、持ち出せなかった。

 守容疑者は一昨年2月から同クリニックに勤務。同年夏ごろから、点滴後に容体が急変するケースが続出し、これまでに9人の死亡が判明した。回復した患者を含む3人の血液から筋弛緩剤が検出されている。

 守容疑者の弁護人によると、持ち出そうとした保管箱は、主に守容疑者が医療廃棄物などを捨てるのに使用。弁護人には「退職にあたって片付けようと、院内の別の廃棄場に持っていこうとしただけ。やましいことは何もない」と話しているという。
 
2001.1.20

毎日新聞




守容疑者、黙秘続ける 逮捕4日目から

 仙台市泉区の北陵クリニックで昨年10月、小学6年の女児(11)が筋弛緩(しかん)剤入りの点滴を受けた事件で、殺人未遂容疑で逮捕された元職員の准看護士、守(もり)大助容疑者(29)が、接見した弁護士に「自分はしていない」などと容疑を否認していることが19日、分かった。弁護団によると、少なくとも逮捕4日目の9日以降、守容疑者は取り調べに完全黙秘を続けており、調書も作成されていないという。
 守容疑者は逮捕直後は容疑を認め、他の患者への筋弛緩剤の点滴もほのめかしていた。また、給与面や院内での処遇への不満を挙げ、「副院長(現院長)や副院長の夫を困らせたかった」などと供述していた。
 
2001.1.19

毎日新聞




筋弛緩剤納品、多量のまま 北陵クリニック

 仙台市泉区の北陵クリニックで小学6年の女児(11)が筋弛緩(しかん)剤の点滴を受けたとされる殺人未遂事件で、筋弛緩剤を使う手術の回数が減ったのに従来と同様のペースで同クリニックに筋弛緩剤が納品され、急変患者の集中した時期と納品時期がほぼ一致していたことが17日、関係者の証言で分かった。宮城県警捜査本部は、准看護士の元職員、守(もり)大助容疑者(29)が患者に筋弛緩剤を投与したために消費量が増え、納品が多量のまま続いた可能性が強いとみて調べている。
 関係者によると、同クリニックは3種類の筋弛緩剤を置いていたが、納入量は効き目が30分〜1時間と比較的長時間続く「マスキュラックス」が圧倒的だった。マスキュラックスは1アンプル(4ミリグラム)10個入りのケースで取引され、1999年10月〜2000年3月期、同4〜9月期はそれぞれ半年間で2ケースずつ納品された。この間の最後の納品は昨年8月の1ケースだが、その後、昨年11月にさらに1ケースが納品された。

 昨年8〜11月の4カ月には、これまでに判明した点滴後の急変患者15人のうち8人が集中、中でも11月はうち4人が集中している。
 一方、同クリニックは筋弛緩剤を機能的電気刺激(FES)治療法といわれる手術の際にだけ使用していた。この手術は昨年度は15回(11人)行われたが、今年度=12月現在=は7回(5人)と激減している。FESの1回の手術ではマスキュラックスを1〜3アンプル使うとされるため、今年度は少なくとも1ケース近い9アンプル(3〜9人分)が、納品分と使用分の差になる計算。

 これまでにマスキュラックスが検出された患者は3人(うち1人が死亡)いるが、他の急変した患者にも投与されていた可能性があり、捜査本部は慎重に調べている。
 北陵クリニックの半田郁子院長(48)が17日、国、宮城県、仙台市による事情聴取に対し、筋弛緩剤などの毒薬は薬事法48条によって、他の薬品と区別したうえ、鍵を掛けて保管しなければならないと規定されていることを「認識していなかった」と答えた。事情聴取は、国など3者が薬事法と医療法に基づいて同日実施した合同の立ち入り検査の中で行われた。
 市などは、検査結果について「外来・入院患者に被害が及ぶ状況ではないが、管理者の責任や認識に不十分な点がある」として、文書で近く指導する方針。

 この日の検査は15人で約4時間実施。事情聴取のほか、毒薬、劇薬などの管理状況や職員の体制などをチェックした。

 その結果、(1)毒薬の保管庫に鍵をかけていなかった(2)管理者である前院長が毎日勤務していなかった――など、指摘を受けていた点は改善されたが、薬剤師を置いていない点については、押収された資料もあり、常勤医師が2人以下であるという条件が確認できなかったという。
 
2001.1.18

毎日新聞




3人に同じ筋弛緩剤を点滴 守容疑者

 仙台市泉区の北陵クリニックで小学校6年の女児(11)が、元職員で准看護士の守(もり)大助容疑者(29)から筋弛緩(しかん)剤の点滴を受けたとされる殺人未遂事件で、患者の血液から筋弛緩剤が検出された3件はいずれも、同クリニックが保管していた3種類の筋弛緩剤のうち、効果が最も持続する「マスキュラックス」(商品名)だったことが、16日までの宮城県警捜査本部の調べで分かった。守容疑者は筋弛緩剤の混入に関して「医師を困らせたかった」などと供述していることから、捜査本部は救命処置を長引かせる狙いがあったのではないかとみて調べている。

 同クリニックで点滴を受けた後、容体が急変した約20人の患者のうち、筋弛緩剤が検出されたのは、女児のほか、昨年11月に点滴を受けた男児(4)=回復=と、老人ホームの女性(89)=死亡。3人とも、保存されていた血液から、「マスキュラックス」の主成分の臭化ベクロニウムが検出された。

 専門家によると、「マスキュラックス」は投与から2分ぐらいで効果が表れ、30〜60分持続する。投与された場合、呼吸のための筋肉が動かなくなり、呼吸不全を引き起こし、酸欠による低酸素脳症などに至る。

 同クリニックで保管していた筋弛緩剤はほかに、10分ほど効果が持続する毒薬の「サクシン」(商品名、主成分・塩化スキサメトニウム)と、毒薬指定されていない「ダントリウム」(商品名)があった。
 筋弛緩(しかん)剤の点滴による殺人未遂事件が起きた仙台市泉区の北陵クリニックで、昨年5月に入院した同区の男児(5)が、元職員の准看護士、守(もり)大助容疑者(29)から点滴を受けた直後に容体が急変し、その後2時間近く守容疑者が一人で救命処置を続けていたことが15日、男児の家族の証言で分かった。保健婦助産婦看護婦法で医師にすぐ連絡して指示を受けなければならないケースで、宮城県警捜査本部は、守容疑者がなぜ自力で救命しようとしたのか調べている。
 家族によると、男児は昨年5月18日に風邪のような症状で入院。午後7時ごろ、当直勤務に就いた守容疑者から点滴を受けた直後、呼吸困難に陥り、顔色が真っ白になった。

 守容疑者は医師に連絡せず、一人で男児の心臓を両手でマッサージしたり、マウストゥーマウスの人工呼吸などを実施。付き添う家族に「『頑張れ』と声をかけてやってください」などと促したという。しかし容体は悪化する一方で、守容疑者は午後9時ごろになってようやく、半田郁子副院長(現院長)と婦長の携帯電話に連絡した。

 2人はすぐ病院に駆けつけて救命処置をしたが容体は回復せず、心臓が2回、肺機能が1回停止。半田副院長は「このままでは死ぬ」と家族に伝え、男児は同10時ごろ、救急車で同市立病院に転送された。男児は、同病院で治療を受けた後は後遺症もなく、2週間後に退院した。

 同クリニックでは昨年10月31日、小学6年の女児(11)が点滴後に容体が急変して呼吸が止まったのに、救急隊が駆けつけるまで初歩的な「気道確保」の救命処置がなされていなかったことも判明。緊急時の対応に、救急関係者から疑問の声が上がっている。
 
2001.1.16

毎日新聞




4歳男児からも検出 昨年11月に投与

 仙台市泉区の北陵クリニックで小学校6年の女児(11)が、元職員で准看護士の守(もり)大助容疑者(29)から筋弛緩(しかん)剤の点滴を受け、重体となった殺人未遂事件で、昨年11月に同クリニックで点滴を受けた後、容体が急変した4歳の男児から筋弛緩剤が検出されていたことが、14日までの宮城県警捜査本部の調べで分かった。男児は回復している。

 筋弛緩剤が検出されたのはこれで、女児と男児、同年11月に死亡した女性(89)の3人。このほか、同月、軽症で済んだ男児(5)からは利尿剤が検出されているが、いずれも昨年10月の女児のケース以降、ほぼ1カ月の間に集中している。

 同クリニック関係者によると、筋弛緩剤は従来、クリニックの薬局に保管されており、薬局の扉の鍵はナースステーションにあって看護婦らが薬剤を持ち出しやすい状態だった。しかし、女児のケースが点滴を始めた直後に容体が悪化し、呼吸が止まるという特異なものだったため、薬剤が使われた可能性を疑い、11月中旬ごろ、鍵や在庫のチェックを徹底するなど管理を厳重にしたという。

 捜査本部は管理の実態を調べるとともに、守容疑者が、薬品の管理が厳重になる前に取り出し、隠し持っていた筋弛緩剤を使用した可能性もあるとみて詳しく調べている。

 ◇点滴後に容体が急変した患者(判明分)◇

点滴の時期   患  者        状  況 
1999年7月 老人ホーム女性(85) 死亡
    11月 老人ホーム女性(88) 退院の朝、点滴後に急変、死亡
2000年2月 老人ホーム女性(89) 死亡
      同 老人ホーム女性(94) 死亡
      同 子供          点滴後に急変、その後回復
     5月 子供          点滴後に急変、その後回復
     7月 会社社長男性(71)  点滴後に急変、死亡
     8月 子供          点滴後に急変、その後回復
     9月 老人ホーム女性(85) 入院当日、点滴後に死亡
      同 幼稚園男児(5)   ぜんそくで入院当日、点滴後に急                    変、死亡
    10月 小学6年女児(11) 腹痛で入院当日、点滴後に急変、                    意識不明
                   =逮捕容疑★筋弛緩剤検出
    11月 男児(4)      点滴後に急変、その後回復★筋                    弛緩剤検出
      同 老人ホーム女性(89) 死亡★筋弛緩剤検出
      同 男児(5)      点滴後に急変、軽症★利尿剤検                    出
      同 老人ホーム男性(76) 意識不明で搬入され、点滴後に                    死亡
 
2001.1.15

毎日新聞




変死3件届け出ず、いずれも点滴後に容体急変

 筋弛緩(しかん)剤の点滴による殺人未遂事件が起きた仙台市泉区の北陵クリニック(二階堂昇院長)で、点滴後に容体が急変して死亡した患者のうち、院内で死亡した患者が少なくとも3人いたのに、同クリニックは一件も「変死」の届けを宮城県警泉署に出していないことが、13日までに分かった。
 同クリニックでは、元職員の准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=仙台市泉区七北田新道=の在職中、1999年7月から点滴後の急死が続発しているが、搬送先での死亡もあるものの、同月以降の「変死」の届けはゼロ。早い段階で届けが出されていれば、検視で不審死が疑われた可能性が高く、死亡を確認した同クリニックの医師の判断が問われる。

 3人は、99年11月に亡くなった老人ホーム入所の女性(88)▽昨年7月に亡くなった会社社長の男性(71)▽同年9月に亡くなった別の老人ホーム入所の女性(85)。

 元東京都監察医の上野正彦医学博士によると、点滴は病状を回復させるために行うので、点滴後に容体が急変して死亡するのは明らかな変死。医師は変死と判断した場合は医師法21条により、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。

 3人の死因はそれぞれ、同クリニックの医師によって「脳こうそく」「急性心不全」「呼吸不全」とされていた。
 
2001.1.14

毎日新聞




点滴で死亡、9人に

 仙台市泉区の北陵クリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤の点滴による殺人未遂事件で、昨年7月末に元職員の准看護士、守(もり)大助容疑者(29)から点滴を受けた同市青葉区の会社社長の男性(当時71歳)が急死し、不審に思った遺族がクリニックから看護記録を入手していたことが12日までに分かった。記録の任意提出を受けた宮城県警捜査本部は、抗生物質とある点滴薬に筋弛緩剤が混入していた可能性もあるとみている。同クリニックで点滴を受けて死亡した患者は、これで9人判明した。

 遺族によると、男性は昨年4月に脳こうそくで倒れ、同市宮城野区の病院に入院。6月2日に同クリニックに転院してリハビリを行っていたが、7月30日の点滴後に急死した。遺族は「不自然だったので、どんな治療をしたのかきちんと知りたくて、精算の際に記録を見せてもらい、コピーを取った」と話している。

 看護記録によると、守容疑者は7月30日の宿直。午後7時に男性の看護を引き継ぎ、抗生物質「ペントシリン」の点滴を始め、40分後に終了した。翌31日午前0時は「入眠中」の記録があるが同2時、心臓も呼吸も止まっているのを、同室患者からナースコールを受けた守容疑者が発見した。医師が呼ばれ、蘇生措置を施したが同2時25分、死亡を確認した。死因は急性心不全とされた。

 遺族によると、容体急変の連絡は、守容疑者から男性の妻(71)が受けた。男性は30日の夕食後、テレビで野球を見て元気そうだったという。

15日に診療再開 北陵クリニック

 北陵クリニックは、9日から休止していた外来診療を15日に再開する。同クリニックは、宮城県警捜査本部による全職員の聴取に協力することを理由に、9日から外来患者の受け付けをやめていた。
 
2001.1.13

毎日新聞




点滴後12人、容体が急変 うち7人が死亡

 守容疑者が勤務していた1999年2月〜昨年12月、北陵クリニックでは、逮捕容疑となった昨年10月の女児(11)ら、少なくとも12人が点滴を受けた後に容体が急変し、うち7人が死亡したことがこれまでに確認されている。

 このほか昨年11月には、仙台市内の老人ホームに入所していた男性(76)が危篤状態になってから同クリニックに搬送され、点滴を受けて十数時間後に死亡している。

   点滴後に容体が急変した患者(判明分)
         点滴の時期 患  者  状  況  
  1999年7月 女性(85) 死亡
   11月 女性(88) 退院の朝、点滴後に急変、死亡
2000年2月 女性(89) 死亡
     2月 女性(94) 死亡
   2月 子供    点滴後に急変、その後回復
   5月 子供    点滴後に急変、その後回復
   8月 子供    点滴後に急変、その後回復
   9月 男児(5) ぜんそくで入院当日、点滴後に急変、死亡
   9月 女性(85) 入院当日、点滴後に死亡
   10月 女児(11) 腹痛で入院当日、点滴後に急変、意識不明
           =逮捕容疑
   11月 男児    点滴後に急変、軽症
   11月 男性(76) 点滴後に死亡
           ※搬送前の老人ホームで既に意識不明
   11月 女性(90) 死亡
 仙台市泉区の北陵クリニックで小学6年の女児(11)が、元職員で准看護士の守(もり)大助容疑者(29)から筋弛緩(しかん)剤の点滴を受けたとされる殺人未遂事件で、昨年11月に同クリニックで点滴を受けて一時体調が悪化した未就学の男児=軽症=の血液から宮城県警捜査本部が検出した薬剤の成分は、11日までに利尿剤と判明した。

 同クリニックは女児の容体急変後、筋弛緩剤の管理を厳重にしており、捜査本部は守容疑者が入手しづらくなった筋弛緩剤の代わりに使用したとの疑いを強めている。

 同クリニックは女児の容体急変後、法医学医に相談した結果、筋弛緩剤が投与された可能性を疑い、筋弛緩剤の保管場所を薬局から別の場所に移した。しかしそのほかの薬剤の管理は従来通りで、守容疑者はナースセンターにある鍵を使って、薬局に立ち入りできる状態だった。

 利尿剤は尿の量を増やす薬で、余分な水分や塩分を体内から排出し、血圧を下げる効果がある。ほかの薬剤と併用することで、立ちくらみや吐き気などを引き起こすケースがある。
 仙台市泉区の北陵クリニックで起きた筋弛緩剤による殺人未遂事件で、逮捕された守大助容疑者が宮城県警捜査本部の11日までの調べに対し、「半田(郁子)副院長は応急処置に慣れていないから、困らせようと思った」と供述していることが分かった。給料など待遇面の不満を、患者の容体急変という特異な形で、クリニックの実質的な運営者である副院長にぶつけようとしたとみられる。

 同クリニックは、1991年11月、半田副院長が理事長として設立した医療法人が開業した。目的は、半田副院長の夫でクリニックの非常勤医師、半田康延・東北大教授が権威の、FES(機能的電気刺激治療法)と呼ばれる先端治療技術を提供するためだった。

 FESは、委縮した筋肉を電気で刺激して再建を目指す治療法で、98年からは県や地元企業などでつくる財団法人から「地域結集型共同研究事業」として補助金を受けている。筋弛緩剤はFESで全身麻酔をする際に使っていた。

 元職員によると、「保険が適用されれば『世界で初めて』をうたい文句に、多くの患者を集める目算だった」が、医療財政のひっ迫でFESは現在まで保険適用が受けられず、自由診療が続いている。このため利用者は少なく、クリニックで半田教授と面談したことのある患者は「約200万円はかかるといわれて断念した」という。

 調べでは、守容疑者はFESにクリニックの将来性を感じ、待遇改善を期待して転職した。ところが、FESの停滞で経営が伸び悩み、給料が20万円足らずと転職前の職場とほとんど変わらなかったため、不満を募らせていたという。
 
2001.1.12

毎日新聞




点滴後急変の子供6人 血液から鎮静剤成分も

 仙台市泉区の北陵クリニックで小学6年の女児(11)が、元職員で准看護士の守(もり)大助容疑者(29)から筋弛緩(しかん)剤の点滴を受けたとされる殺人未遂事件で、同クリニックで点滴後に容体が急変した子供が、この女児を含めて6人に上ることが10日、分かった。うち5歳の男児は死亡している。また、守容疑者から点滴を受けて容体が急変し、血液などから筋弛緩剤の成分が検出された患者は他に2人おり、うち1人は死亡していることが確認された。宮城県警の捜査本部は殺人罪の適用を視野に捜査を進めている。

 関係者によると、6人の子供は、昨年2、5、8、9、10、11月に容体が急変し、同クリニックから同市内の総合病院に転送された。あまりに頻繁で、9月に運ばれた男児(5)が死亡したため、総合病院は10月の女児と11月の未就学の男児の血液を保存。その後の県警の鑑定で、女児から筋弛緩剤の成分、男児から鎮静剤とみられる成分が検出された。

 ほかに筋弛緩剤の成分が検出された2人のうちの1人は、亡くなった90歳の女性とみられる。

 この事件では、守容疑者が同クリニックに在職中、点滴を受けた約20人の患者の容体が急変し、うち10人前後が死亡している。捜査本部は、死者のうち筋弛緩剤の成分が検出された確実なケースについて、さらに調べている。
 医療を担う「准看護士の犯罪」が不気味な影を広げる。仙台市泉区の「北陵クリニック」で小学6年の女児(11)に筋弛緩(しかん)剤を投与して逮捕された准看護士、守(もり)大助容疑者(29)は、女児以外の患者にも筋弛緩剤を投与したことをほのめかし、事件は前例のない無差別殺人に発展する様相をみせている。守容疑者は「病院の待遇や副院長に不満があった」などと供述しているものの、決定的な動機ではないとの見方も強い。「いのち」を守るはずの現場で何が起きたのか、病院は犯行を防げなかったのか。背景を探った。
 守容疑者は仙台市内の准看護学院の卒業アルバムに救急救命士になる夢を記していた。命を助ける仕事を一度は志した青年が「悪意の点滴」に手を染めるまでの心の軌跡を、周囲の人の記憶からたどることは難しい。

 守容疑者は、両親と妹の4人家族。仙台市近郊の町で育った。当時を知る実家の近くの男性(63)は「父親は警察官で人格者という感じの人。大助ははきはきした、いい青年だった」と振り返る。

 足が速く、高校は創立2年目の体育科に推薦入学で進み、陸上部に所属、中・短距離の選手として活躍したが、ひざを故障。このとき、手術のために入院した病院での職員の姿が、医療従事者を志すきっかけとなった。高校時代の担任は「進路指導の際、『おれも、けがをしている人間に手を差し伸べるような人になりたい。看護学校に行きたい』と言っていた。本当に普通の子で、『モリダイ』の愛称で呼ばれていた。何があいつを変えたのか」と首をひねる。

 准看護学院に通うかたわら、夕方からは仙台市内の病院の救急外来で働いた。学院の教務主任は「49人の同期のうち、男性は2人だけ。成績は『中の下』だったようだが、明るくてきぱきしていて責任感があったという記録が残っている」と話す。「ギャンブルもやらず、酒もほとんど飲めない。背の高いスポーツマンで女の子に人気があった」(以前の職場の同僚)と、悪い評判は聞こえない。

 ただ、目を引くのが、5カ所目となる北陵クリニックまで職場を転々としていることだ。最初の職場は「救命救急士になるために東京の専門学校に行きたい」との理由で退職したが、実際にはその月から市内の美容外科で働いていた。その後は「給料に納得がいかないから」などと県内の病院を渡り歩く。「待遇への不満」を常に抱えていた一面は浮かぶ。

 宮城県警の取り調べに、守容疑者は当初「待遇への不満」を漏らしたが、逮捕から時がたつにつれて「病院と副院長夫妻を困らせたかった」などとやや具体的な供述を始めている。その背景として浮かび上がるのが、北陵クリニックが「世界初」を売り物に提供していたFESと呼ばれる高度な治療技術をめぐる守容疑者の「期待と失望」だ。

 FESとは、電気で筋肉を刺激して手や足の運動機能を再建しようとする「機能的電気刺激治療法」のこと。県と地元企業などでつくる財団法人「宮城産業振興機構」が地域の産業振興の呼び水にしようと、旧科学技術庁の特殊法人から補助金を受けてクリニック側に協力を依頼。同クリニックは一室を研究室として提供し、その権威である東北大教授(副院長の夫)を非常勤医師に据えていた。

 調べでは、守容疑者はこの構想に期待して同クリニックを転職先に選び、待遇面での改善を期待していたフシがある。ところが給料は20万円足らずで、前の職場とほとんど変わらなかった。そういった不満の矛先が、事実上病院を切り盛りしている副院長と夫に向けられた可能性も指摘されている。しかし、捜査幹部は「どれも(不特定多数の)殺人まで犯すに足る理由ではない」ともみており、動機解明にはまだ時間がかかりそうだ。
 「私もあの病院で診察を受けたが、大丈夫か」。事件発覚以来、捜査本部の置かれた宮城県警泉署には健康を気遣う電話が相次いでいるという。生命を守るべき病院が逆にそれを脅かす場になっていたことに最も衝撃を受けたのが、北陵クリニックを利用していた患者やその家族たちだ。

 仙台市内に住む主婦(62)は一昨年11月、同クリニックに入院していた母親(88)を退院の朝、亡くした。「肺炎にかかり、入所していた特養ホームから大事を取って入院した。症状はずっと落ち着いていた。それが、退院の朝、私が不在で付添婦さんがいたときに、点滴を受けた途端、急に顔色が悪くなって、植物状態になった。あのままでもかわいそうなので、最期は私が人工呼吸器を外すことに同意しました」。主婦はそう振り返る。主治医は「お年寄りだから急変することはある」と話し、死因は脳こうそくと診断されたという。

 その母親が入所していた特養ホームは、同クリニックが嘱託医を務める。同クリニックに入院した入所者のうち、この母親ら女性5人が亡くなっていた。主婦は「守容疑者が点滴したかどうかは今の段階では分からない。でも、筋弛緩剤の管理がずさんだったのにはあきれた。不信感があります」と無念そうに話す。

 クリニックの半田郁子副院長らは記者会見で、筋弛緩剤の保管場所に施錠をしていなかったことを明らかにした上で、「3人以上の医師がいる場合は薬剤師を置く」「置かない場合は保健所に届け出る」という医療法の規定についても、「2年前にリストラでやめてもらった。事務長代理が代行しているが、責任者はいない状態だ」と違反状態が続いていたことを認めた。また、昨年10月末に女児の容態が急変し、守容疑者による筋弛緩剤混入の可能性を考え始めた後も、本人から聴取することはせず、12月4日に勧奨退職の形で辞めさせるまで、守容疑者の点滴は続いた。

 クリニックの近くに住む会社員(46)は「信じられない。殺人者に手を貸しているようなものだ。なぜ、本人に問いたださなかったのか。ぜんそくの子供がいて、ほかの病院に通わせているが、北陵に通わせなくて本当によかった」と憤りを込めて話した。また守容疑者から点滴を受けた後、意識不明の重体が続いている女児(11)が通う小学校の教頭(53)は「12月23日に見舞いに行ったとき、手を握って『頑張るんだぞ』と声をかけたら、眼球をこちらに動かした。かわいそうで言葉が継げなかった。事故だと思っていたが、事件なんて。こういう病院があること自体、恐ろしいし、許せない」と語気を強めた。
 仙台市泉区の北陵クリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤の点滴による殺人未遂事件は、クリニックが宮城県警へ自主的に届け出たのではなく、情報を入手した県警がクリニックに問い合わせたため発覚したことが10日、明らかになった。クリニック側は、元職員の准看護士、守(もり)大助容疑者(29)が逮捕された翌7日の会見で、県警から照会があったことには一切触れず、法医学医から筋弛緩剤投与の可能性を指摘されたため県警に届け出た、と発表していた。

 県警によると、昨年12月1日、「点滴を受けた女児(11)が、医学上考えられない容体の悪化で意識不明になっている病院があり、副院長が悩んでいる」との連絡が、法医学医からあった。法医学医は、自分の判断で連絡したという。

 同日、指摘された同クリニックの半田郁子副院長に県警が確認を取ったところ、女児の不審な容体悪化に悩み、この法医学医に相談していたことを認め、同日付で届け出た。女児の容体急変から約1カ月過ぎていた。

 しかし、7日の会見で、県警に届け出た経緯を問われた半田副院長は、「1カ月ぐらい(女児の容体が急変した)原因を探したけれど分からず、麻酔科や法医学の先生とも相談し、届けることにしました」と、専門家のアドバイスを入れた自主的な届け出のように答えた。さらに、二階堂昇院長には守容疑者逮捕の6日まで容体急変の事実を知らせなかったことも明かし、事実を内々に処理しようとした印象も与えた。

 女児が重体になった後、同クリニックはずさんだった筋弛緩剤の管理を厳重にするなど内部で対策をとったが、薬事法で適正な管理がなされなかった場合に義務づけられている保健所への届け出も行っていない。この間、点滴の直後に容体が急変した患者が3人出て、そのうち1人が死亡した。
 
2001.1.11

毎日新聞




複数患者から筋弛緩剤 保存血液から検出

 仙台市泉区の北陵クリニックで小学6年の女児(11)が、元職員で准看護士の守(もり)大助容疑者(29)=同区七北田新道=から筋弛緩(しかん)剤の点滴を受けた殺人未遂事件で、守容疑者から点滴を受けて容体が急変した他の複数の患者の血液などから筋弛緩剤の成分が検出されていたことが、宮城県警泉署の捜査本部の調べで10日、分かった。

 クリニック側が保存していた急変患者の血液や点滴液を鑑定して分かった。クリニック側は女児の急変後、守容疑者による点滴を疑うようになり、守容疑者が投与した後に急変があった場合は、血液や点滴液を保存するようにしていたという。

 また、北陵クリニックの医師は、同区にある特別養護老人ホーム(入所者50人)の嘱託医を勤めているが、守容疑者が在籍した1999年2月〜昨年12月に同クリニックに入院した同ホームの入所者のうち、85〜94歳の女性5人=いずれも同市在住=が死亡していたことが分かった。中には退院当日に点滴注射をした直後、容体が急変して死亡した女性もいた。

 捜査本部は、死亡と守容疑者の関連を慎重に調べている。同ホーム事務局長によると、守容疑者は「注射がうまい」と入所者らに人気があったという。
 5人のうち同区の女性(当時88歳)の家族によると、この女性は同クリニックを退院する予定だった99年11月、点滴注射を打った直後に容体が急変し、そのまま亡くなった。死因は脳こうそくとされたという。

 同ホームの事務局長は守容疑者について「しっかりしたいい人だと聞いていただけに、驚いた」と困惑している。
 守容疑者から昨年10月に筋弛緩剤入りの点滴を受けて意識不明の重体となった小学6年の女児が通う仙台市泉区の小学校で10日、3学期の始業式が行われた。学校側は、当初予定していた入院中の女児の激励の呼びかけを「児童たちに動揺を与える可能性がある」として取りやめた。

 教頭は「事件の推移を見るとともに、女児の家族や児童たちの様子を見て、今後の児童たちへの対応を考えていきたい」と話している。
 仙台市泉区の「北陵クリニック」(二階堂昇院長)の元職員で准看護士の守大助容疑者(29)=同区七北田新道=が昨年10月、入院中の小学6年の女児(11)の点滴に筋弛緩(しかん)剤を投与、殺害しようとした殺人未遂事件で、守容疑者は宮城県警捜査本部の調べに対し「病院、半田郁子副院長、副院長の夫の東北大教授を困らせたかった」と、三者に対する不満を動機として供述していることが9日、分かった。捜査本部は、供述した不満と筋弛緩剤の投与を直結できないものの、半田副院長が診察した後、守容疑者が点滴をして容体が急変した患者が複数いることから関連を調べている。

 同クリニックは世界で初めて、電気で筋肉を刺激する方法でリハビリを行う機能的電気刺激(FES)を導入していた。半田副院長は同クリニック運営の中心人物で、FESについての患者に対する説明は、クリニックの非常勤医師でFESの権威の夫が行っていた。

 捜査本部や関係者によると、守容疑者は、最先端技術を導入した同クリニックが「将来的に大型病院になり、給与も上がる」との話を当時勤務していた同市内の病院で聞き、1999年2月、同クリニックに自ら望んで転職した。しかし、実際に支払われる給与は前病院と比べてそれほどアップせず、それまでの病院ではなかった夜勤が付くようになるなどしたため、不満を募らせていたという。

 また、昨年9月、80代女性が点滴後に容体が急変、呼吸不全を起こして死亡していることもわかった。同月には幼稚園男児(5)も同様の経緯で死亡していることが判明している。捜査本部では、これらの点滴に守容疑者が関与していたかどうか慎重に捜査を進めている。

 80代女性が入所していた施設によると、クリニックに通い始めたのは昨年夏ごろ。主治医は半田副院長で、同9月に入院した。付き添いの施設関係者は、半田副院長から「(症状が)落ち着いてきましたね」と言われたため施設に戻ったところ、女性の容体が急変したとの知らせを受け、間もなく死亡したという。

 一方、男児は持病のぜんそくが悪化。母親が担当医から「入院が必要」と告げられ、入院準備のためにいったん自宅に戻った際に容体が急変。同クリニックから搬送した先の病院で呼吸不全のため死亡した。半田副院長は7日の会見で、男児に点滴したのは「守容疑者だったように記憶している」と述べている。

 また、守容疑者から点滴を受けた後に死亡した10人のうち、数人の肉体組織が院内に残っていることが分かった。いずれも容体が急変、呼吸不全を起こして死亡しており、捜査本部は筋弛緩剤を投与されたかどうか組織の分析を進める。
 
2001.1.10

毎日新聞




別の薬品混入か 先月、男児が一時体調不良に

 仙台市泉区の北陵クリニック(二階堂昇院長)に入院中の小学6年の女児(11)が筋弛緩(しかん)剤の混入された点滴を受け意識不明となった事件で、殺人未遂容疑で逮捕された元同クリニック准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=同区七北田新道=が使用したのは、骨格筋に作用する臭化ベクロニウムを主成分とする筋弛緩剤であることが9日、宮城県警捜査本部の調べで分かった。この筋弛緩剤は即効性があり、他の薬に比べ少量で効果が出るのが特徴だ。また、女児の事件のあった約1カ月後にも、同クリニックで点滴を受けた就学前の男児の体調が一時悪くなっていた。すぐに回復したが、捜査本部は守容疑者が別の薬物を混入した可能性もあるとみて調べている。

 筋弛緩剤は女児に使用した点滴の残りから検出された。捜査本部は検出を受けて強制捜査に踏み切った。

 同クリニックには3種類の筋弛緩剤が置かれているが、使用された筋弛緩剤は子供の場合0・5ミリグラムで効果が出る。投与されると全身の筋肉が緩み、約2分で呼吸ができなくなる。効き目に個人差はあるが、30分から1時間持続するという。人工呼吸器をつけていない場合は使用しないように、との注意書きがある。他の筋弛緩剤は効果は10分ほどでなくなるという。

 男児の事件は同クリニックの半田郁子副院長が女児の事件を県警に届け出た昨年12月1日後に起こった。

 調べでは、容体の急変した男児を検査したところ、筋弛緩剤とは別の薬物の使用をうかがわせる結果が出たという。

 同クリニックは県警のアドバイスを受け筋弛緩剤の保管場所を通常の薬局にある棚から他の場所に移していた。そのため捜査本部は他の薬物が使用されたとみて追及している。

 また、守容疑者は調べに対し、同クリニックでの待遇面での不満などを供述しているが、捜査本部は別の動機があるとみている。「我々の想像を超えたものかもしれない」と話す捜査員もおり、捜査本部はさらに調べを進めていく。

 一方、捜査本部は守容疑者の自宅から、看護状況などを記した大学ノートを押収していたことも9日、分かった。動機や筋弛緩剤使用など事件に結びつく内容があるかどうか分析している。

 ノートは6日に行われた自宅の家宅捜索で発見された。日常の生活や考えを記入した日記ではなく、仕事のことがびっしり書いてあったという。毎日つけている「日記」ではないが、記述は細かいという。
 仙台市泉区の「北陵クリニック」(二階堂昇院長)の元准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=同区七北田新道=が入院中の小学6年の女児(11)の点滴に筋弛緩(しかん)剤を投与、殺害しようとした殺人未遂事件で、同市は9日、同クリニックの半田郁子副院長から事情を聴いた。同市は今後、立ち入り調査や職員からの事情聴取を進め、同クリニックの安全管理に問題がなかったか調べるとともに、指導や処分を検討する。

 事情聴取は同区役所で午前8時から約40分間行われ、同区保健福祉センターの大熊恒郎所長らが半田副院長からクリニックの運営や管理の状況を聴いた。

 大熊所長によると、同クリニックでは、診察時間内にいなければならない病院管理者の二階堂院長が、週2回程度しか勤務していなかった。また、薬剤師がおらず、毒物指定された筋弛緩剤の保管場所に鍵をかけていなかったなど、医療法上の不備が明らかになった。
 仙台市泉区の北陵クリニック(二階堂昇院長)に入院中の小学6年生の女児(11)が筋弛緩(しかん)剤の混入した点滴を受け意識不明になった事件で、殺人未遂容疑で逮捕された元同クリニック准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=同区七北田新道=は、同クリニックに在籍した1999年2月から昨年12月初めの間、患者約20人に点滴を行い、半数の約10人が死亡していたことが、8日、宮城県警捜査本部の調べで分かった。捜査本部は患者の死亡が病状の悪化によるものか、点滴との因果関係があるのかどうか、慎重に捜査を進めている。

 捜査本部によると、守容疑者は調べに対し淡々と応じ、時には冗舌になることもあるという。反省の様子も見せているが動機については、はっきりした供述はしていない、という。

 また、女児に行われた点滴の残りから「臭化ベクロニウム」を主成分とする筋弛緩剤が検出された。女児と守容疑者につながりはまったくなく、捜査本部は特定の人物を狙った事件とはみていない。

 捜査本部は、同クリニックに在籍した約1年10カ月間に、守容疑者が点滴を行った約20人のうち、約10人が点滴後に容体が悪化し、転院するなどして死亡したことを把握している。多くは高齢者だが、昨年9月に幼稚園の男児が点滴後に呼吸不全に陥り亡くなったケースも含まれている。捜査本部はこれらのケース一つ一つについて、押収したカルテなどから、筋弛緩剤が使用されたかなど死因と点滴との因果関係を調べている。

 同クリニックに備えられた筋弛緩剤は3種類で、調べでは3種類とも量が減っていることが分かっている。
 仙台市泉区の北陵クリニック(二階堂昇院長)に入院していた小学6年生の女児(11)が筋弛緩(しかん)剤の入った点滴を受け意識不明になった事件で殺人未遂容疑で逮捕された元同クリニック准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=同区七北田新道=は、周囲から「まじめで仕事熱心な好青年」とみられていた。一方、女児の家族は「(あの子は)戻らない」と憤った。

 守容疑者は宮城県鹿島台町の出身で、父親は同県警の警察官。足が速く、県南部の県立高校体育科に進学した。陸上部に入部したが1年と2年の時にひざをけがして約1カ月間入院。医師や看護婦からよく面倒をみてもらったことで医療の道を志した、という。

 仙台市医師会付属准看護学院(同市青葉区)に進み准看護士に。1992年から仙台市や同県塩釜市の病院4カ所を経て、99年2月から北陵クリニックに勤務した。

 患者らからの評判は良く、昨年11月に手術を受けた福島県内の男性会社員(57)は「点滴の際、『1時間は我慢して下さいね』と言われた。優しかった。隣の病室にいた4歳の男の子に慕われていて、よく遊んであげていた」と語る。

 以前勤務していた病院も「まじめで向上心があった」「患者の処置の仕方をリポートにまとめ、スタッフに配布するなど勉強家」と口をそろえる。

 だが、ある病院の関係者によると、上司の前では熱心だったが、裏では「こんなに働いてこの給料じゃ合わない」などと愚痴をよくこぼしていたという。

 一方、女児の両親はつきっきりで看病している。看病のため母親は職を辞めた。

 自宅の留守を預かる祖母はインターホン越しに「今の気持ちは言葉になりません。申し訳ありません」と声を震わせた。容疑者への思いについて問いかけると、「(あの子は)戻らないんですっ」とおえつを漏らした。

 女児の通う小学校の教頭によると、女児は10月31日午後に「おなかが痛い」と訴え、保健室で診察を受けた。熱がなかったため下校した。午後5時ごろ再び、腹痛を訴えて北陵クリニックに入院し、点滴直後に容体が急変した、という。

 級友は千羽ヅルを折り、一人一人の声を吹き込んだテープとともに病院に届けた。教頭は「子供の命を守るための場所が、命を奪う場所だったなんて。容疑者には強い憤りを感じる」と目に涙を浮かべた。10日の始業式で、校長が全校児童に事件を説明することにしている。
 
2001.1.9

毎日新聞




「他の患者も」ほのめかす 守容疑者、逮捕容疑認める

 仙台市泉区の北陵クリニック(二階堂昇院長)に入院中の小学6年生の女児(11)が筋弛緩(しかん)剤の混入した点滴を受けて意識不明となっている事件で、殺人未遂容疑で逮捕された元同クリニック准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=同区七北田新道=は宮城県警の捜査本部の調べに対し、他の患者に対する筋弛緩剤の使用もほのめかす供述を始めた。逮捕容疑についても認めている。捜査本部は7日、守容疑者を仙台地検に送検した。

 捜査本部は守容疑者在職中、同クリニックの入院患者10人前後が点滴後に容体が急変、呼吸不全に陥り死亡したとみており、守容疑者との関連を追及していく。また、守容疑者が同クリニックに対する不満を口にしていたこともつかんでおり、動機について調べを進めている。
 
2001.1.8

毎日新聞




女児に筋弛緩剤点滴 元准看護士を逮捕 仙台の病院

 仙台市泉区の病院に入院していた女児を昨年10月、薬物を混入した点滴で殺そうとしたとして、宮城県警捜査1課と泉署は6日、元同病院准看護士、守(もり)大助容疑者(29)=同区七北田新道=を殺人未遂の疑いで逮捕、同病院を家宅捜索した。女児は現在も意識不明の状態で、同課は捜査本部を設置し、動機などを追及している。この病院では過去に、守容疑者による点滴後、患者が急死したケースが複数ある。

 調べでは、守容疑者は昨年10月31日午後6時50分ごろ、当時勤めていた同区高森の北陵クリニック(二階堂昇院長)で、腹痛で入院中の同区内の小学6年生の女児(11)に、筋弛緩(しかん)剤を混入した点滴を行い、殺そうとした疑い。女児は低酸素性脳症とみられ、転院後の今も意識不明の状態が続いている。

 捜査本部によると、女児は同日、入院したばかりで、それまで守容疑者と面識はなかった。守容疑者は点滴後、自ら担当の医師に「(女児の)容体がおかしい」と連絡した。点滴を行うこと自体は医師から命じられていた。

 筋弛緩剤は手足の痛みやこわばりを和らげるために、通常は静脈注射により使用されるが、呼吸困難に陥るため、人工呼吸器を付ける。捜査本部は、守容疑者が点滴に筋弛緩剤を入れるように医師から指示を受けておらず、人工呼吸器も使っていないことから、殺意があったとみている。

 守容疑者は1992年に准看護士となり、同市内の病院数カ所に勤めた後、99年2月から同クリニックに勤務、昨年12月初めに退職している。同クリニックは病床19の民間病院。
 宮城県警に逮捕された守大助容疑者(29)が女児に投与した筋弛緩(しかん)剤は、誤投与で患者が死亡するなど医療現場でのトラブルが目立っている。

 筋肉弛緩剤は神経から出された化学物質「アセチルコリン」が筋肉に届くのを防ぐ薬剤で、手術で使われる。数種類あり、種類によって効き目の現れる時間と投与量はまちまちだが、効果の強いものでは4〜10ミリグラムを投与すると20分で筋肉が動かなくなる。

 筋弛緩剤で呼吸筋が動かなくなると、死亡する。しかし、人工呼吸器を装着していれば死亡することはなく、時間の経過とともに分解されて体外に排出される。

 昨年11月には富山県の高岡市民病院(藤田秀春院長)で医師のパソコン操作ミスで筋弛緩剤を注射された同県小杉町の男性患者(48)が8日後に死亡した。同病院はコンピューターネットワークで治療薬を指示するオーダリングシステムを1997年から採用していたが、同システムを使って医師が誤って筋弛緩剤の投与を指示していた。同県警は業務上過失致死の疑いで病院関係者から事情を聴いている。

 また、98年6月には大阪府泉大津市立病院で、当直の内科医(当時28歳)が末期がんの男性患者(81歳)に誤って、筋弛緩剤を点滴で投与したため、男性患者が約50分後に呼吸困難に陥って死亡した。内科医は他の大学病院から派遣されており、筋弛緩剤には鎮静効果があると思いこんで誤投与していたという。

 196年4月には、京都府京北町の国保京北病院の病院長(当時58歳)が末期がんの男性患者(当時48歳)に点滴で筋弛緩剤を投与して「安楽死」させたケースがある。院長は「医師の信念でやった」と主張。京都府警は殺人容疑で院長を書類送検したが、京都地検は筋弛緩剤の薬効が出る前に男性患者は進行性のがんで死亡したと判断して不起訴処分にした。
 
2001.1.7

毎日新聞




【 参考・読み物 】

----- 事件当初 -----
スポニチアネックス
  “筋弛緩剤点滴”被害者は計20人

私が現場で見たこと聞いたこと
  筋弛緩剤注入事件(1/14/01)

WEEKLY POST.COM
  週刊ポスト/2001.1.26

毎日新聞
  ・筋弛緩剤点滴(2001年1月)


----- 冤罪? -----
僕はやってない!仙台筋弛緩剤点滴混入事件守大助勾留日記

Web Iwakami
  仙台筋弛緩剤混入事件

河北新報社
  検証 筋弛緩剤点滴事件1〜

たむ・たむ(多夢・太夢)ページ
  筋弛緩剤事件

ザ・スクープ
  9月21日放送


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