日看協、「やっと250円」

 日本看護協会(日看協、久常節子会長)は2月28日に会見を開き、2008年度の診療報酬改定について「7対1看護の堅持、退院日当日の訪問看護など本会の要望が実る」との意見を発表した。12年ぶりに引き上げられた「訪問看護基本療養費」について、久常会長は「やっと250円、ほんの気持ち程度だが少し色を付けていただいた。しかし、決して満足しているわけではない」と述べ、訪問看護の充実や在宅医療の体制整備などに向けて引き続き取り組んでいく意向を示した。

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 久常会長は今回の診療報酬改定を振り返り、「新聞報道などで『勤務医の負担軽減に1,500億円』という見出しが目立ったが、その陰で訪問看護の問題が改善した」と評価した。

 しかし、在宅医療を支える訪問看護ステーションの経営基盤が依然として不安定であることを指摘した。
 「これからの高齢者医療、在宅医療を強化していくためには訪問看護の充実が必要であり、(今回の改定に)決して満足しているわけではない」と述べ、2009年度の介護報酬改定を視野に入れながら、国民が安心して医療を受けられる条件整備に引き続き取り組んでいく意向を示した。

 今回の改定について日看協が発表した意見は、(1)在宅移行支援と訪問看護の充実、(2)7対1入院基本料の基準の見直し、(3)産科医療と小児医療、(4)専門性の高い看護師の評価、(5)質の評価の取り組み――の5項目。
 
 このうち、「訪問看護の充実」について古橋美智子副会長は「訪問看護は今までナースたちの“持ち出し”でなされていたが、少し改善された。しかし、訪問看護ステーションの健全な経営を磐石にするところまでいっていない」として、訪問看護の役割に対するさらなる評価を求めた。
 訪問看護基本療養費は今回の改定で250円引き上げられ、1日5,300円から5,550円となった(週3日の場合)。

 一方、75歳以上の後期高齢者などの退院支援を評価する「在宅移行支援」について、古橋副会長は「75歳未満のがんの患者さんや、機材を付けたまま在宅に移行する小児などの在宅移行支援は据え置かれた。この点で課題を残した」と述べ、75歳未満に対する退院調整を評価するよう新たに要望していく構えを見せた。

■ 5対1を目標に
 前回の改定で創設された「7対1入院基本料」の見直しについて、古橋副会長は次のように評価した。
 「改定後、さまざまな報道がなされたが、私たちは『7対1が否定されてはいけない』と考えていた。今後、看護職員の配置こそ医療の質を保つ重要な事柄であるという視点に立ち、この7対1が堅持されて発展的にとらえられることや、7対1の点数が維持されることを重要視していた。幸い、この点は保たれた」

 その上で、古橋副会長は今回の改定で7対1入院基本料の算定要件に導入される「看護必要度」に触れた。
 「看護界でも是非論がある。看護師の業務量が増えるのではないか、この項目が重症度を反映するのかという議論もある。しかし、この(看護必要度という)ツールを診療報酬算定のためだけに使うのではなく、現場の業務量を判断し、看護配置や応援体制を考えるデータとして、あるいは看護職員の教育などに生かされることも重要と考えている」
 古橋副会長はこのように述べ、看護必要度は入院基本料の算定要件にとどまるだけでなく、看護師が働きやすい職場をつくる上で必要な「看護管理の指標」の1つとして活用する必要性を強調した。

 その上で、看護職員の手厚い配置に対するさらなる評価を求めた。
 「働く環境を整備する点で人の配置は重要だ。これが日本では非常に立ち遅れているために医師の立ち去りや看護職員の離職などを招いている。したがって、7対1が最高の天井とは思っていない。今後、急性期医療、回復期、慢性期と病院の機能が分化していけば、看護職員の配置は6対1、5対1を目標にすべきだ」


更新:2008/02/29 16:30     キャリアブレイン

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08/01/25配信

高次脳機能障害に向き合う 医師・ノンフィクションライター山田規畝子

医師の山田規畝子さんは、脳卒中に伴う高次脳機能障害により外科医としての道を絶たれました。しかし医師として[自分にしかできない仕事]も見えてきたようです。