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日本の地盤沈下は続くのか

2008年02月29日

 世界における日本経済の存在感の希薄化が、強い危機感、諦観(ていかん)とともに語られている。いわゆるジャパンパッシング論である。たしかに、サブプライム危機が表面化して以降、株価は他国に先んじて大幅に下落した。外国人投資家の円資産売却も続いている。少子高齢化に伴う経済成長率の低下や、それを補うべき構造改革の遅れ、グローバル経済化の利益を損なう規制など、日本経済の先行きに対する悲観論の高まりが、その背景にあるという。

 しかしだからといって、独り日本経済だけが地盤沈下し続けるのだろうか。サブプライム危機に直面している欧米諸国と現在の日本を比べてみるがよい。低金利や住宅バブルに浮かれた欧米の家計は膨大な負債を抱え、その清算を迫られている。金融機関の巨額損失は、信用不安とクレジット・クランチをもたらしている。そして、これまでの債務に依存した経済成長が終わろうとしている。一方日本は、過剰債務の整理はすでに終わり、金融機関の財務体質も改善されて、海外金融機関の資本不足を埋め合わせることができるまでになっている。

 海外では、先進国も新興国も、インフレ圧力の高まりに直面している。原油高・資源高の製品価格への転嫁や賃金の上昇、生産性上昇率の鈍化などがその背景にある。一方日本は、一部で製品価格の上昇が見られるものの、賃金抑制や景気中立的なマクロ経済政策により、インフレはきわめて落ち着いている。産業・企業の国際競争力も高まっている。

 思い起こせば、1970年代末に起きた第2次石油ショックの後、日本は企業や労働者の適切な対応によってインフレを早期に抑え、省エネ努力により原油高の影響を緩和し産業競争力を高めることで、80年代には欧米をしのぐ経済成長を実現させた。今回も、同様の逆転劇が起きないとは限らない。(山人)

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