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現在位置:asahi.com>社説 社説2008年02月29日(金曜日)付 防衛省の混迷―首相が最高指揮官だこれはまたなんとしたことだろう。事実を解明しなければならない側も、深刻な疑いをもたれている。 イージス艦の衝突事故に対する防衛省の対応は、事故を起こした海上自衛隊だけでなく、危機管理の指揮をとるはずの石破防衛相や、防衛相のもとで自衛隊の部隊をチェックする官僚組織の失態続きで混乱が収まらない。 事故当日に海上自衛隊は、事故直前の当直士官である航海長をヘリコプターで防衛省に呼んで事情を聴いていた。今回の事故では、自衛隊は「被疑者」である。捜査にあたる海上保安庁に当然すべき事前連絡をしなかったのは問題だ。 その事情聴取には石破氏が直接乗り出していたのに、当初その事実は伏せられた。防衛相には聴取した内容を、なぜか後で報告したことにしていたのだ。 大臣室での事情聴取に立ち会っていた増田好平事務次官は、「(聴取が)適切かどうかの認識もなかった」と述べている。そのうえ、自分は記録を取っていないので大臣室での聴取内容は「覚えていない」と平然と言った。 迷走する防衛省の説明を聞いていると、この役所が周到に組織的に情報を隠そうとしているのかどうかは、疑わしい。もっと悪いことに、だれも全体像を把握できず、バラバラに対応しているだけなのではないかと思えてくる。 海上自衛隊の隠蔽(いんぺい)体質への不信感、組織を把握しきれないまま突出する防衛相、そういう防衛相を支えきれない幹部のもろさ――。さまざまな要因が重なり、防衛省はいま混乱の極みにある。 こうなると、防衛省のだれを信じて事実解明を任せたらよいのか分からなくなる。きちんとした原因解明と事後処理を指揮できない石破氏に、このまま仕事を任せていいのかどうか、私たちは疑問に思う。 もはや福田首相が乗り出して、今後の対応の筋道を示すべき段階だ。日本の安全保障を託している組織が、自ら起こした事故に対応できずに機能不全に陥っているのは恐るべきことである。 なのに、首相の記者団に対する発言を聞くと、まるでひとごとのようだ。「もっとよく気を回して海上保安庁と連絡をとるとか、いうようなことができていれば良かったんですけどね」と、防衛省に対応をまかせたままだ。事態を直視すれば、「気を回す」かどうかのレベルではないだろう。首相には深刻さへの認識が明らかに欠けている。 政府がまずやるべきことは、事故だけでなく事故後の防衛省、自衛隊の対応も含めて情報を洗いざらい明らかにすることだ。その上で、速やかに防衛相を更迭し、関係者にも早急に責任をとらせなくてはならない。それをいつまでにやるのか、国民に説明することだ。 自衛隊の最高指揮官は言うまでもなく首相である。その事実を忘れないでもらいたい。 道路民主党案―次は与党側が動く番だガソリンにかかる税率や道路特定財源をめぐって、民主党が対案を発表した。法律案ではなく、要綱などの形で考え方を整理したものだが、これでようやく民主党の主張がはっきりした。 道路をめぐる与野党対立では、与党側から「つなぎ」法案という奇策まで飛び出した。その騒ぎを収拾したときの衆参両院議長のあっせんで、修正に向けて与野党が努力することになっている。 対案が出てきたのだから、与野党は政府案と併せてテーブルに載せ、国民が納得できる修正案をつくるための交渉を早く始めるべきだ。 民主党が示した案の骨格はこうだ。 道路特定財源を廃止し、福祉や教育など何にでも使える一般財源にする。1リットルあたり25円というガソリンの暫定税率は廃止する。どの道路をつくるかを決める権限と財源を、国土交通省の官僚や自民党の族議員から地方自治体に移す。 納得できる点が多い。国交省の道路建設計画を追認する「隠れみの」になっていると批判される国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)の見直しを打ち出すなど、これまで抜け落ちていた論点を取り上げたことも評価したい。 ただ、暫定税率の廃止には私たちは異論がある。国の借金が膨れあがるなかで、財政に年間2兆6000億円もの穴をあけるのが適当だろうか。 修正協議のポイントははっきりしている。道路にしか使えない特定財源の仕組みを続けるか、一般財源とするか。暫定税率をどうするか。「10年で59兆円」という政府の道路整備計画を見直すか。この3点である。 ここで福田首相に提案がある。まず与党の側から、この10年計画を抜本的に見直すと宣言してはどうだろう。 これまでの国会審議で、この計画のでたらめぶりが次々と明らかにされた。政府は59兆円の積算根拠をろくろく説明できないままだ。計画を作る際、最新の05年交通量調査ではなく、交通量が多かった99年調査を資料に使っていた問題でも、納得できる説明はない。 このまま「59兆円」に固執するようでは修正協議はおぼつかない。首相が計画の見直しを表明したうえで、どの道路をどんなペースで造るのか、与野党でたとえば1年かけて計画をつくり直すのだ。 政府・与党がまず譲ることで、民主党など野党が修正協議に応じるきっかけになる。年度末まであと1カ月のうちに、一般財源化や暫定税率という本丸の対立点を打開する協議を急げばいい。 暫定税率の問題では、税率を維持したままで、環境税に組み替えるといった案も与野党で出ている。これも修正協議でのたたき台になるかもしれない。 首相はこれまで、民主党に「対案があるなら示してほしい」とたびたび迫ってきた。これに民主党が応じてきたのだから、次に「一歩」を踏み出すべきは政府・与党の方である。 PR情報 |
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