シャープがソニーと液晶工場を共同運営、操業と調達の安定で思惑一致
[東京 26日 ロイター] シャープ(6753.T: 株価, ニュース, レポート)とソニー(6758.T: 株価, ニュース, レポート)は26日、シャープが堺市で建設中のテレビ用液晶パネル工場を両社の共同出資会社で運営する方向で合意したと発表した。
液晶テレビ市場で激しく競争する両社だが、シャープは最新鋭の堺工場の安定操業、ソニーは基幹部品のパネルの安定調達で両社の思惑が一致した。
両社は今年9月末までに、共同出資会社への契約締結に向けて交渉を続ける。新会社の資本金は未定だが、出資比率はシャープが66%、ソニーが34%とする。シャープは昨年7月末、堺市に約3800億円を投じて最新鋭の液晶パネル工場を建設すると発表。ソニーが工場の運営会社に資本参加することによる両社の負担額は未定としている。ソニーの投資額には工場用地の取得費用は含まれず、シャープとソニーは、パネル工場と、液晶パネルにバックライトを加えた液晶モジュールの工場への投資を分担する。出資比率を考慮すればソニーの投資額は1000億円規模とみられる。
シャープの片山幹雄社長とソニーの中鉢良治社長は26日夜、都内で記者会見した。片山社長は、ソニーの出資受け入れについて、ソニーが液晶テレビで世界トップクラスであることを挙げ「一緒に運営すれば工場の安定操業になる。心強いパートナーと考えた」と説明した。片山社長によるとソニーからの出資は、シャープの負担軽減の狙いもあるという。シャープが強みとする液晶パネルを、液晶テレビ市場で競合するソニーへ供給することについて、片山社長は「同じ土俵で戦うのは厳しいが、(シャープの)アクオスを今まで以上に高性能化して勝負したい」と強調した。
ソニーは2004年4月、韓国サムスン電子(005930.KS: 株価, 企業情報, レポート)と液晶パネル生産の合弁会社「S─LCD」(韓国忠清南道)を設立。同合弁会社を中心に、サムスン本体や台湾メーカーから液晶パネルを調達してきた。中鉢社長は会見で「液晶テレビ事業の発展では、液晶パネルの安定調達は最重要課題の1つ。S─LCD以外の基幹供給源を検討してきたが、世界で最も先進的な液晶パネルメーカーであるシャープを戦略パートナーに選んだ」と語った。堺工場からは出荷量の多い画面サイズ40型を中心にパネルを調達するという。
<出資比率に応じてパネル調達>
2009年度に稼動予定の堺工場は「第10世代」と呼ぶガラス基板を使用。計画では月産7万2000枚のガラス基板を投入する。42型の液晶テレビ換算で年間1300万台の生産規模となるが、このうちシャープが3分の2、ソニーが3分の1を共同出資会社から引き取る。
シャープは昨年12月、東芝(6502.T: 株価, ニュース, レポート) との間で、液晶パネルとテレビ用半導体を相互供給する提携を発表。シャープは、堺工場や既存の亀山工場(三重県亀山市)から東芝向けにパネルを供給する。堺工場ではソニー以外の出資者ついて「募る考えはない」(片山社長)としている。
<ソニー、08年度は液晶テレビを最大2000万台>
ソニーは、2008年度における液晶テレビの市場規模を1億台と見込み、このうち「15%から20%の市場シェアを目指したい」(中鉢社長)としている。ソニーは2007年度に液晶テレビの販売台数を1000万台と見込んでいるが、08年度は1500万台から2000万台への拡大を狙う。販売台数の伸びに伴い、ソニーは、08年度にも亀山工場からも液晶パネルを調達する方向だが、中鉢社長は亀山工場からの調達についてコメントしなかった。
液晶生産の現パートナーであるサムスンとの関係について、中鉢社長は「S─LCDの共同運営は変更ない」とした。サムスンから第10世代パネルの共同生産の提案があった場合に「コスト競争力があれば検討に価する」(中鉢社長)と述べ、提携拡大の可能性は排除しなかった。ただ、「第10世代をシャープと始めようとしている」と語り、当面はシャープとの提携に注力する考えを強調した。
(ロイター日本語ニュース、浜田 健太郎記者、平田 紀之記者)
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