元オウム真理教上祐史浩さんが運営する「ひかりの輪」の方々と、mixiで出会いました。しばらく彼らとコンタクトをとったのち、記者は彼らに身分を明かしたのですが、それ以来、彼らの態度がそれまでとは少し違ったものになりました。
まず、記者からのメッセージやメール、電話などに対して返事がくるペースが非常に遅くなりました。もちろん、返事が遅れる原因のほとんどは彼らの多忙さにあると思います。しかし、待たされる身としては、何のリアクションもないのはつらいものです。 それに相手が相手だけに少々不気味さも感じました。そこで、記者は、2007年末、都内に用事ができた日を利用して、実際に彼らの総本部があるという東京・世田谷の南烏山まで伺ってみることにしました。すぐに取材にはこぎつけられなくても、せめてアポイントメントだけでも取れればと思ったからです。 同じことを機械的に繰り返すのみ さて、都内に出向いた記者が総本部のあるマンションの前に到着すると、マンションの前には迫力のある大柄な人間が10数名ほどたむろしており、異様な雰囲気が漂っていました。 マンション前の詰所(撮影:齋藤正之) 「こんにちは、この集まりは何なのですか?」 すると向こうもこのような場所に現れる記者を不審に思ったのか、逆に身分を尋ねてきました。そこで記者は名刺を渡して彼らに身分を明かします。 それを見て納得した彼らの話によると、「自分たちは公安の職員と警備の警察官で今は公安による、ひかりの輪の施設への立ち入り検査の真っ最中」とのことでした。 アポイントメントを取りに来ただけならマンション内に入っても大丈夫とのことだったので、早速マンションの1階にある「ひかりの輪」総本部のドアの前まで行きました。 虹をあしらった「ひかりの輪」のロゴマークがつけられた総本部のドアはわずかに開いておりましたが、一応、インターホンを押して玄関口で待ちます。しばらく待っていると、中から背の高い、剃髪(ていはつ)でやせた眼鏡をかけた男性が出てきました。 「はじめまして、私はオーマイニュースで市民記者をしております齋藤と申します。本日は取材のアポイントメントを取るためにお伺いしました」 すると、男性は強張(こわば)った表情を浮かべ、強い口調で「立ち入り検査中ですので!」と言い、ジェスチャーで、扉の前から退くように促してきました。あきらめきれない記者は、「本日はアポイントメントを取りに来ただけなので、せめて名刺だけでも受け取っていただけないでしょうか?」と頼み込みましたが、「立ち入り検査中ですので出ていってください!」と同じことを機械的に繰り返すのみでした。 カルトの人間だったらこう行動するであろうという、イメージそのままの行動に少しあきれてしまいましたが、駄目と言われたら引き下がるしかありません。 立ち入り検査が終わるまで待とうと思い、仕方なくマンションの外に出ました。 まさか、ストックホルムシンドローム? 手持ちぶさたになったので、あらためて周囲を見渡すと、団体の入っているマンション前のゴミ捨て場らしき場所に、大量の廃バイクや廃自転車、ベニヤ板や鉄パイプなどの粗大ゴミが積み重ねられており、マンション前のアパートの敷地内には、中身が入った衣装ケースが大量に並んでいました。 南烏山GSハイム(撮影:齋藤正之) 思わず帰りたくなりましたが、気を取り直し、待つだけではもったいないと、あたりで待機している公安の職員の方に質問をしていることにしました。 「これらは押収した品物ですか?」 GSハイムの前にある、山のように積まれたさまざまな物品の入った衣装箱を指さしつつ、尋ねてみます。すると、尋ねられた若い公安職員は、やけに激高した調子でこちらに食ってかかって来ました。 「なぜ、押収する必要があるの? 彼らは何も悪いことはしていない! 取材するならもう少し勉強してから来た方がいいよ!」 その、あまりに居丈高で、かつ「ひかりの輪」への同情的な調子に、記者の頭には思わず「ストックホルムシンドローム」という言葉が浮かびました。 その後、立ち入り検査が終わり、再度、マンション内に入り、インターホンを鳴らすと、中に人がいるにも関わらず誰も出てきませんでした。これが、果たして不幸な事件に対し、深い反省の念を抱いている団体の取る行動なのでしょうか? 記者の疑念はますます深まるばかりです。 ぬぐいきれない不安 それ以降も、記者は「ひかりの輪」に対して何度かアプローチしました。すると、広報の広末さんという方が対応に当たってくれるようになりました。彼は、今まで接触した人たちとは異なり、忙しい中でも経過説明くらいはしてくれます。 しかし、そのメールは、あまり人間的なにおいを感じない味気ないものです。そういったことから、記者はどうしても彼らがまた不幸な事件を繰り返すのではないかという不安をぬぐいきれないのです。 もちろん、事件を起こした団体の流れをくむ団体に所属していることによる偏見や、マスコミによる監視に常に晒(さら)されている彼らの状況にも同情すべき点はあります。しかし、自ら団体への所属を選択した以上、彼らには、事件に対する責任を何としても取るのだという覚悟が必要なのではないでしょうか? そして、非常に残念なことですが、今のところ、彼らからそれを感じたことはありません。 帰郷を呼びかける横断幕(撮影:齋藤正之)
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