日本−ボスニア・ヘルツェゴビナ戦を観戦に訪れたオシム前監督。左は息子のアマル前千葉監督=国立競技場で(カメラ・沢田将人)
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鋭い眼光は、以前と変わることはなかった。昨年11月16日、急性脳梗塞に倒れたイビチャ・オシム前監督が30日、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦観戦のため、国立を訪れた。
倒れて以来、75日ぶり。午後7時6分、ワゴン車で競技場入りした前監督は黒いコートを羽織り、グレーのスーツにネクタイ、マフラーを着用。発病時には約120キロだったが、リハビリの効果か、ほおはスッキリとしていた。右手に銀色のステッキを握り、両サイドをアシマ夫人、長男・アマル氏、同伴の看護師に付き添われながらも、車イスを使わず、一歩一歩確かめるように、ゆっくりとした足取りだった。
この日はガラス張りで暖房完備の特別席で観戦。転院以来の初の外出に、前監督は試合中は上機嫌で、ボスニア語でしゃべり通しだったという。
ハーフタイムには日本サッカー協会会長の川淵キャプテンと高円宮妃殿下が前監督のもとへ。「妃殿下をお迎えするのなら10時間でも立っています」とジョークも。またハーフタイムには「私は治療を続けておりますが、これまでご支援していただいたすべてのみなさまに改めて感謝いたします。どんな結果であれ、良いサッカーが勝利者となりますように。両国代表が南アフリカで、再び対戦できるように期待しています」と大型ビジョンでメッセージを発表。2度、右手を振る元気な姿が映されると、サポーターは総立ちで拍手。ゴール裏のサポーターは「頑張れオシム 俺達は待っている」と書き込んだ日の丸を掲げ、エールを送った。
試合後はボスニア・コドロ監督らと約3分間、談笑して国立を後にした。左手などに軽いまひが残っているが、病院では可動域を広げるため、サッカーボールを使い、インサイドキックなどのリハビリを続け、当初の診断より1カ月早い回復を見せているという。順調なら、2月下旬にも退院する。「元気な姿を見せられてよかった」と、川淵キャプテンも前監督の驚異的な回復を素直に喜んでいた。
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