驚くオシム氏の回復力
サッカー日本代表の前監督だったイビチャ・オシム氏(66)の回復力には驚く。昨年11月16日に脳梗塞(こうそく)で倒れ生命の危機さえささやかれたが、2カ月後のいまでは手足のまひは残るものの、杖なしでも自力歩行が少しできるまでになった。30日には、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦(国立)観戦の話まで出ているという。
「外国人の監督の多くはカネだけ。それもプロとして当然だが、オシムは日本の文化を理解し、日本のサッカーをどう作れるか、日本人に向いた指導を探求してきた人」。そう語るのは元日本代表で68年メキシコ五輪銅メダルの一員だった松本育夫氏。指導者としても長いキャリアの持ち主で、現在はJ2鳥栖のGMだ。
松本氏も42歳のとき死者14人を出した静岡・つま恋研修所のガス爆発事故に遇った。全身40%の火傷を負い、生死の境をさまよいながら「サッカーができなくなる。足だけは切らないで」と医師に懇願した。サッカーは自分の人生そのもの。その生き方を、同い年のオシム氏にだぶらせる。
「人生、まだまだやることがいっぱいあり、病気を克服して、これから自分の人生を作るという目的をもった強さ、生き方が早い回復につながっているようだ」。親善試合の相手ボスニアはオシム氏の母国で、観戦は自身の希望でもあるという。寒さ厳しい折、観戦して本当に大丈夫なのか、とも思う。
当日の天候や体調の問題にもよるが、ガラス張りで、暖かく観戦できるように特別室が準備されるそうだ。「オシムにとってはファンの前に姿を見せることが、一番のリハビリになるはず」。同じように死の淵をのぞいた松本氏の言葉だけに、強い説得力を感じる。
(サンケイスポーツ・今村忠)