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企画特集:「竹島」

【波頭を越えて 竹島リポート 第3部】(3)「竹島の日」の衝撃

2007.9.19 08:00

韓国の猛抗議と動かぬ日本

 「1965年独島密約説」−。今年3月に発売された韓国の総合雑誌『月刊中央』4月号には、そんな見出しの20ページにわたる特集が掲載された。

 内容は、日韓基本条約調印前、訪韓した自民党の宇野宗佑議員と韓国の丁一権首相との間で、日韓双方が竹島(韓国名・独島)の領有権の主張を棚上げすることで合意した−。韓国マスコミが竹島をめぐる日韓の交渉過程を客観的に紹介するのは極めて異例で、韓国では社団法人「独島研究保存会」が早急な事実調査を政府に求めるなど反響は大きかった。

 1965(昭和40)年に実現した日韓国交正常化の交渉過程で、竹島問題を双方が棚上げすることで合意していたことは、日本では知られている。が、韓国の一般市民には「ありえない話」だった。韓国政府が「独島は韓国領土であり、日韓に領土問題は存在しない」との立場をとってきた“成果”でもある。

 その韓国に、国際社会が注目するほどの“過剰反応”をさせたのが、島根県によって平成17年3月に制定された「竹島の日」条例だ。竹島問題に詳しい拓殖大教授の下條正男は「条例の結果、韓国に竹島の領土問題の存在を認めさせることになった。日本政府は『地方自治体が勝手に決めた』と無視したが、韓国へ与えた衝撃とその反応は、歴史的にも大きな意義がある」と評価する。

 8月末に発足した安倍改造内閣で、2度目の外相に就任した町村信孝は、「竹島の日」条例制定時も外相だった。だが、就任後の定例記者会見で竹島問題について質問されると、「何か竹島でありましたか?」とけげんな顔をした。

 ある島根県議は「条例制定当時、外務省から一連の騒動を報道する記事がファクスで送られてきた」と明かし、「お前らのせいでこうなった、とでも言いたげだった」と振り返る。政府は韓国の猛抗議に、「地方自治体の条例には政府として口出しできない」と、国と無関係であることを強調した。

 先の会見で町村は「日韓首脳間の交流が途切れ、日韓関係全体が非常に非友好的な雰囲気に急激に変わっていったのでよく覚えている」と語り、島根県が30年以上にわたり毎年政府に要望している「政府内に竹島問題を所管する組織の設置」について聞かれると、「今初めて知った」と答えた。

 これについて衆院議員の鈴木宗男は「新閣僚の就任時のメッセージは外交上の意味も大きい」と指摘したうえで、「一切やる気がみられない。これでは下も動かない」と評した。それを裏付けるように、竹島問題を担当する外務省アジア大洋州局北東アジア課長の山田重夫に取材を申し込むと、「応じられない」と拒否された。

 島根県で「竹島の日」条例が制定される約1年前の平成16年5月、地元では「県土・竹島を守る会」が設立された。事務局長を務める梶谷萬里子は「領土問題に取り組む」と少しでも発言などがある議員には片っ端から手紙を送り、東京まで会いに行って協力を頼んだ。その熱意にほだされた一人が鈴木宗男で、17年7月以降、何度も質問主意書(書面による国会質問)を提出して政府答弁を引き出し、梶谷へ転送している。

 鈴木は「北方領土は内閣府に北方対策本部があり、広報冊子が毎年発行されているが、竹島には何もないのに驚いた」という。同様の取り組みの必要性を質問主意書でただすと、「担当省庁で検討すべきと考える」と返ってきた。「まともに取り組んでいないから答えようがないんだ」と批判した。

 なぜ竹島問題は進展しないのか。元外交官の佐藤優は「第一義的に外交官の責任だ。だが、竹島問題に取り組む職員を外相が評価し、出世につながるなら頑張るが、そうでないなら何もしないという体質が、近年外務省には染みついている」と指摘。島根県が政府に要望する担当組織の設置や啓発冊子作製の持つ意味をこう語った。

 「日本が政府として動き出したとなれば、韓国には大きな衝撃を与えられる。韓国が大統領選を控えている今は、反日ナショナリズムにきちんと反論しておくべきチャンスだ」(文中敬称略)

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