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企画特集:「竹島」

【波頭を越えて 竹島リポート 第3部】(2)守られぬルール

2007.9.18 08:00

「暫定水域」続く不毛な摩擦

 「いっそ竹島を韓国に渡してでもEEZ(排他的経済水域)の境界線を早く画定してほしい。韓国の漁師の無法ぶりはもう我慢できない」

 日本海に日韓両政府が設けた暫定水域でカニ漁をしている漁業者が、こう声を荒らげた。

 暫定水域とは、竹島の領有権問題が解決しEEZが画定するまでの、まさに「暫定的」なもので、漁業について両国の民間漁業者団体が協議しながら共同利用している。ところが韓国の漁業者は取り決めを無視、勝手に操業しているのだ。

 しかも、暫定水域内でカニの好漁場となっているのは日本に近い「隠岐北方」と「浜田沖」の2カ所。万が一、竹島が韓国領になったとしても、2つの漁場は日本のEEZとなるはず。冒頭の漁業者の言葉は、こうした事情によるものだ。

 隠岐北方の水域は日本が11〜12月、韓国が1〜3月20日まで漁ができる「交代使用水域」。ところが昨年11月、隠岐北方で韓国側の漁具が仕掛けられているのが見つかった。日本側の抗議の末、漁具が韓国側によって撤去されたのは12月中旬になってから。結局、日本側は隠岐北方の海域での操業はできなかった。

 「2000年に交代水域が規定されてから韓国が守ったことは一度もない。あまりにもひどい。漁業者の怒りもよくわかる」と協議の日本側事務局を務める社団法人「大日本水産会」の事業部次長、小林憲は語気を強める。

 もうひとつのカニの好漁場「浜田沖」にいたっては、何のルールも規定されておらず、韓国の漁船が漁場を独占している。

 今月12、13の両日、暫定水域内でのズワイガニ漁などについて話し合う「日韓民間漁業者団体間協議」が福岡で開催された。

 違反時の操業自粛を一向に受け入れない韓国側に対し日本は、違法な漁具は日本側で撤去できることを認めるよう要望してきた。ところが韓国側は「ルールは今後、きちんと守る」と主張し、難色を示す。

 「ルールを守れれば、漁具の撤去などは必要ないのだから、もしものときの取り決めとして、日本側による撤去を受けいれることは何ら問題ではないのではないか」

 これまでの協議で、このようなやりとりが続けられてきた。しかし、今シーズン前の最後の会議となる福岡の協議でも結局、日本の主張は受け入れられなかった。

 「暫定水域は漁業の問題であって、竹島問題とは別。しかし、韓国側は竹島問題を感情的に持ち出して話をすり替えてしまう」と、島根県かにかご漁業組合長の西野正人は怒りを隠せない。

 そもそも、なぜ民間同士での協議が続けられているのか。

 政府間では日韓漁業協定に基づき、両政府代表が交渉のテーブルにつく「日韓漁業共同委員会」が毎年年末に開催され、画定したEEZ内での操業について話し合っている。当然、暫定水域についても協議をすることにはなっている。

 ところが、交渉の現場に立ち会っている水産庁資源管理部国際課課長補佐の新村耕太は「韓国側は一貫して『政府間協議で具体的な措置を検討することは困難。民間漁業者団体間で協議すべきだ』との主張を続けている」と話す。

 韓国海洋水産部と漁業者との力関係については、こんな証言もある。

 「韓国の海洋水産部の担当者は『ひとつでも日本に譲歩すると首が飛ぶ。来年、私はこの会議にいないかもしれない』などと言う。こんな相手とは交渉できませんよ」。この問題は韓国の官僚にとって“アンタッチャブル”なのだ。

 韓国側は暫定水域のことを「中間水域」と呼ぶ。日本との間にある水域という認識でしかないのだ。

 小林は言う。「われわれとしては、資源管理をきちんと行い、水産資源を増やしたい。そうすることが、ひいては韓国の漁業者の利益にもつながっていくのだから」

 漁業問題だけではない。海底資源開発や国防上の課題。日本固有の領土、竹島が韓国によって実効支配されている限り、不毛な摩擦は絶えないだろう。(文中敬称略)

【用語解説】暫定水域

 竹島問題によって日韓のEEZの線引きが難しいため、1999年に発効した新日韓漁業協定に盛り込まれた。竹島周辺に設けられ、両国の漁船が出入りして操業できる。同水域内で取り締まれるのは自国の漁船だけとなっている。漁船数など資源管理は、日韓の水産当局でつくる共同委員会の協議で決めることになっている。

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