企画特集:「竹島」
【波頭を越えて 竹島リポート 第2部】(4)韓国 事実より戦略
教科書に「日本の歴史歪曲」
「日本は6段階の『独島侵奪シナリオ』を用意しており、現在はその第2段階。間もなく第3段階に入る可能性がある」
「独島教育」のため設立された「独島アカデミー」は先月、日本の竹島(韓国名・独島)問題への対応をこう分析した。「日本は問題の紛争化を望んでいる」とし、その計画は、(1)名分蓄積のための継続的な領有権主張(2)問題を本格化するための条件整備(3)国連総会への上程推進(4)軍事危機を起こし、国連安保理の介入を誘導(5)国際司法裁判所への提訴(6)敗訴国が判決を不服とし、軍事紛争に発展−の6段階に分けられるという。
「第3段階」へ進みつつあるという根拠は「日本国内の右傾化と国連での地位向上」で、これが十分になれば「ただちに問題を国連総会に上程する可能性が高い」とする。対策としては、研究の推進と日本の武力挑発に常に備えることに加え、尖閣諸島問題では中国を、北方領土問題では日本を支持して、「領有論理の一貫性を維持すべきだ」−とした。
アカデミーを受講しているのは全国40の大学の学生400人余り。研究成果はマスコミに必ず取り上げられるほか、一般公開の講演会などで広く公表されている。
日韓の「竹島=独島」研究については、面白い数字がある。1945年から2002年までの論文数を比較すると、日本の171編に対し、韓国は約3倍の577編。しかも韓国は量的に右肩上がりの傾向だが、日本は60年代と96年に一時的に増加した後、減少に転じている−という。
慶尚北道慶一市にある私立総合大「慶一大」(学生約6000人)は昨年、韓国の大学で初めて「独島論講座」を正規科目として開設。週2時間で2単位の基礎科目で、昨年は45人、今年は48人が受講している。
担当する不動産地籍学科長の李範寛教授(50)は、土地の価値などを分析する地籍学の観点から「独島問題」の解決策を見いだそうと2年前、米国のロースクールへ留学。「独島問題を必ず解決する」と誓って帰国し、講座を開設した。「学会でも、領土問題を扱い始めたのは私が初めてだ」と胸を張った。
李教授のねらいは、従来の歴史的経緯や国際法からではなく、地籍学的な分析から領有権主張の新たな論拠を見いだすことだ。竹島へは頻繁に調査に入り、「公示地価(韓国政府は、竹島の土地の地価公示を行っている)はもっと高くすべきだ」などとの提言も行っている。
今年3月には、学内に資料展示のほか研究、出版も担う「独島・間島教育センター」も開設。取材を申し入れたが、「日本人には刺激的過ぎる」と入れてくれなかった。
韓国の中学、高校では2010年から、「社会」から国史と世界史を分離して「歴史」科目を新設。高校の選択科目には「東アジア史」を新設するなど、歴史教育に重点を置く。12年からは、高校2、3年生の「東アジア史」の教科書で、「独島問題」や「日本の侵略戦争美化」が独立単元として扱われる予定だ。
日本の領有権主張は、「歴史の歪曲(わいきょく)」と教科書に書かれている。中学2年生の世界史の教科書では「日本の歴史の歪曲」と題して、「1965年以降、独島(竹島)問題や教科書問題など一連の事件に対し、その原因を究明して、何を歪曲しているのか、またなぜ歴史歪曲をしようとするのかなど、調べなければならないだろう」と記載している。
こうした教育は、どのようなイメージを植えつけるのか。玄大松・東大東洋文化研究所准教授がソウルで行った調査では、日本が竹島の領有権を主張する理由は「漁業資源などが重要」(50%)、「軍事的に重要」(18%)に「領土拡張の野心」(17%)が続き、「日本領土と思うから」はわずか4%。さらに、韓国が日本に懸案事項を譲歩する場合、最後まであきらめないのは「植民地支配への謝罪」「従軍慰安婦への謝罪と賠償」「独島」のうちどれか−を尋ねたところ、「独島」が52%とトップだった。(竹島問題取材班)