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企画特集:「竹島」

【波頭を越えて 竹島リポート 第2部】(2)居住環境整備や住民登録

2007.5.16 08:00

鬱陵島では通学路にも竹島の写真が掲げられている。「独島はわが領土」の標語も日常生活に溶け込んでいる

領有権確保狙い“実績”刻む

 標高約98メートルと168メートルの2つの島と、いくつもの岩礁で成る竹島(韓国名・独島)の総面積は約23万平方メートル。東京・日比谷公園ほどの大きさだ。平地は海岸付近のごく一部で、飲料水の確保も難しい。そこに、韓国では約2000人が戸籍上の住民登録をし、なんと1組の夫婦が「居住」している。

 韓国で竹島を管轄する慶尚北道の議会は昨年10月、議員55人が船で竹島へはるばる渡り、イスや演壇なども持ち込んで「青空議会」を開催。「独島居住民間人支援に関する条例」を可決、制定した。これにより、住民登録して1カ月以上生活した人には月70万ウォン(約9万円)の支援金が支給され、世帯構成が2人以上なら、1人超過ごとに30万ウォンが追加支給される。今年1月末には、現在唯一竹島に住む金成道さん(67)夫妻に、初めて100万ウォン(約12万8000円)が支給された。

 金さんは先月、「慶尚北道鬱陵郡独島里」(韓国での竹島の行政区)の里長にも就任した。つまり、国の全面的な支援を受けた「独島の防人」。竹島に観光船が接岸すれば、観光客に請われて共に記念写真に納まる「有名人」でもある。

 韓国は、1952年に「李承晩(りしょうばん)ライン」を宣言して竹島の領有権を主張すると翌53年、民間の「独島義勇守備隊」が上陸し、国旗掲揚台を設置。54年には政府が武力占拠を決定し、無人灯台を建設した。点灯式は内外へ大々的に宣伝し、竹島を描いた3種類の切手も発行した。韓国による「実効支配のアピール」が、いよいよ世界へ向けて始まったのだ。

 65年には、鬱陵(うつりょう)島の崔鍾徳さん(故人)が、国が竹島に建てた漁民宿舎へ住み込んで漁労活動を始めた。後を継ぐような形で91年から居住を始めたのが、金さん夫妻だ。

 夫妻は96年、台風で家が壊れ鬱陵島へ避難したが、昨年2月末に再び竹島へ。2人の自宅には一般電話回線がひかれ、衛星放送アンテナも設置され、32インチの液晶テレビがプレゼントされた。3階建ての自宅には、自家発電機や海水を淡水化する装置なども整備されている。携帯電話の基地局も設置された。

 それでも飲料水は極めて貴重で、「洗髪は雨水で2週間に1回」という過酷な生活だ。タコ漁などで生計を立てている金さんは、地元紙の取材にこう答えている。

 「ここでの生活を続けるつもりだ。誰も文句を言わないし、わずらわしいことがない」

 鬱陵郡は今年、竹島に10世帯程度が暮らせる「多世帯村」計画を進めている。竹島の「居住環境」は、国を挙げて着々と整備されている。

 韓国が竹島に接岸施設を完成させたのは97年11月。現在は鬱陵警察署に所属する「独島警備隊」(約40人)が警備し、島内には監視所、宿泊施設のほか通信設備、レーダー、ヘリポートなども備えられている。昨年からはヘリの発着も可能な3000トン級の最新鋭警備艦「太平洋7号」が周辺海域を警戒している。

 韓国政府は昨年5月、竹島に対する初めての利用基本計画を発表した。5年間で総額約42億円を投入し、周辺の環境保全や資源調査、施設拡充など「持続可能な利用」を本格的に進めるという。

 人が住みやすいとは言い難い島に巨費を投じて居住環境を整備し、警察を常駐させ、観光客をどんどん誘致する狙いは、国際法上の「実効的支配」の“実績”を刻み続け、領有権を国際社会にアピールすることだ。鄭胤烈・鬱陵郡守は竹島の「多世帯村」計画を「実質的な領有権確保のため」と明確に答えている。

 だが、日本が領有権を主張している以上は、国際法上の「実効的支配」とは認められない。それを承知の上で、韓国は将来の“有事”に備えている。韓国が拒否し続けている国際司法裁判所への付託をせざるを得ない状況になった場合に備え、いかに「有効」な実効支配を行うか−が、今盛んに議論されているのだ。(竹島問題取材班)

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